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正攻法の企業再生と、現場がビックリする実行力

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2012/02/29の日本経済新聞の記事「ニッポンの企業力 サバイバル(4)再生に奇策なし」で、日本企業の企業再生事例がいくつか紹介されています。

最初に紹介されているのは日本航空です。

---(以下、引用)---

V字回復を呼び込んだ再建策の柱は(1)国内外の不採算路線の廃止(2)燃費効率の悪い「ジャンボ」全40機の退役(3)3割の人員削減と賃金カット――。.....

(中略)

部会の主力はカネボウやダイエーの再生に関わった旧産業再生機構のメンバー。企業再生のプロたちは1カ月で日航の患部を見つけ出した。しかし権限や出融資機能を持たない部会は、債権カットに反発する銀行団の合意を取り付けられず、報告書は前原の机の引き出しにしまわれた。

(中略)

厳密に言うと、日航再生のアイデアを出したのは部会でもない。09年9月に日航に乗り込んだ田作らは、30代、40代の中堅社員に集中的にインタビューした。守秘を確約すると、警戒していた中堅社員たちが、せきを切ったように語り始めたという。「ジャンボを捨てれば収益は改善する」「政治家に押しつけられた不採算路線を切りたい」

---(以上、引用)---

 

記事ではその次に日産が紹介されています。

---(以下、引用)---

日産自動車社長のカルロス・ゴーン(57)も現場から解を引き出した。1999年、仏ルノーから日産に乗り込んだゴーンは部課長を集めてアイデアを吸い上げて「日産リバイバルプラン」をつくった。

(中略)

だがゴーンが経営者として真のすごみを見せたのは、7期ぶりの減益になった07年の株主総会だ。ここでゴーンは自らの代名詞だったコミットメント経営を「修正する」と言い出した。

リーマン・ショック前にもかかわらず、先進国で販売台数を伸ばす短期志向をやめ、新興国で種をまく戦略に切り替えた。成果は出ている。中国などでシェアを伸ばした日産は12年3月期、最終利益で国内自動車業界の首位に立つ見通しだ。

ゴーンが軌道修正できたのはなぜか。カギを握るのが「多国籍軍」と呼ばれる日産の経営陣だ。仏、英、米、日。会議では異なる価値観を持つ役員が議論を戦わせる。トップが「裸の王様」になりにくい環境だ。

---(以上、引用)---

両社に共通するのは、現場レベルが「当たり前」と考えている正攻法の判断をし、それを徹底的に実行した、ということです。

しかし実際にそのような状況で社内から「当たり前」の正攻法の提案をしても、しがらみが大きく、その「当たり前」がなかなか決断したり実行できないことが多いように思います。

記事は次のように続きます。

---(以下、引用)---

.....佃秀昭(48)は、93年に食品大手RJRナビスコから転じて米IBMを立て直したルイス・ガースナー(69)を例に引き「大きな非連続が必要なときは、しがらみなく前例を否定できる外部人材をトップに登用した方がよい」と指摘する。

---(以上、引用)---

確かに、稲森さんも、ゴーンさんも、そしてガースナーも外部から来たトップです。

私も20年前のIBM企業再生をリアルタイムで経験しました。

ガースナーが来るまでなかなか変わらなかったIBM社内が、その後、当たり前のことを徹底的にやる、という社内変革を内部で経験できたことは、私にとって財産だと思います。

一方で、DIAMOND ONLUNEの記事「JAL再生"奮闘"記」で、稲森さんが乗り込まれた日本航空社内の様子が、実際に奮闘しておられる役員の方の発言として掲載されています。

---(以下、引用)---

びっくりしたのは、予測に対して実績が上ぶれしても叱られたことです。以前ならば、予測よりも実績が多いのだから、良かったじゃないかと思いますが、稲盛は予測を外したことに対して叱ります。精度が悪い、しっかり予測を立てろ、と。それは厳しい。ラッキーだったねとか、良かったねとは、絶対に言いません。

---(以上、引用)---

企業再生では、処方箋や戦略は「当たり前」の正攻法であっても、日々のオペレーションレベルでは現場が「今までの感覚からすると『びっくり』した」と言うような実行力が必要なのかもしれませんね。



 

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