ミラーレス一眼市場で起こりつつある「イノベーションのジレンマ」
クレイトン・クリステンセンが唱えた、「イノベーションのジレンマ」という理論があります。同名の「イノベーションのジレンマ」という本に理論がまとまっています。Wikipediaによると、下記のように書かれています。
---(以下、Wikipediaから引用)---
優れた特色を持つ商品を売る巨大企業が、その特色を改良する事のみに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かず、その商品より劣るが新たな特色を持つ商品を売り出し始めた新興企業の前に力を失う理由を説明したマーケティングの理論
---(以上、Wikipediaから引用)---
この「イノベーションのジレンマ」が、まさに起こるかもしれない市場があります。それはデジタル一眼市場です。
デジタル一眼の市場シェアは、長らくキヤノンとニコンが二大勢力でした。
キヤノンの成功は、1980年代、ミノルタ(現ソニー)のαシリーズを契機に生まれたオートフォーカスの流れに対応するために、1987年にそれまで大成功していた従来のFDレンズ資産を脱して、全く新しいシリーズとして世に出されたキヤノンのEOSシリーズがベースとなっています。このEOSシリーズは世界的にも大成功しました。
そのようにキヤノンとニコンが一大勢力となっているデジタル一眼市場ですが、最近変動が起きつつあります。
こちらにありますように、販売額シェアでは、ミラーレス一眼がデジタル一眼レフを徐々に食っているのです。
このミラーレス一眼、現時点ではパナソニックのLUMIXシリーズ、ソニーのNEXシリーズ、オリンパスのPENシリーズが代表的な機種です。
カメラの大きさは従来型デジタル一眼レフの半分程度で、当初は「気軽に写真を撮りたいという」女性を中心に人気が出ました。
しかし最近、状況が変わってきました。
例えば、アサヒカメラ2011年12月号の特集「互いの最強機能で頂上対決!ミラーレス vs. 一眼レフ」にもあるように、ミラーレス一眼でも、画質、応答速度などの点で、プロフェッショナル用のデジタル一眼レフと同等の性能を出しているケースがあります。
デジタル一眼レフの中でも特に重いプロフェッショナル用と比較すると、ミラーレス一眼は重さ1/3程度。しかしカメラ内部にミラーの可動部やガラスの固まりであるプリズムを置く必要がなくなるため、設計に無理がなく、かつ高い性能が出せるようです。
もちろん、プロフェッショナル用カメラで何よりも求められるのは、画質・応答速度だけでなく、耐久性です。この耐久性については、恐らくミラーレス一眼はまだ未知数です。
このように従来のデジタル一眼レフを置き換える可能性を秘めた、ミラーレス一眼。
現在、主なカメラメーカーはミラーレス一眼を市場に出していますが、キヤノンだけはまだ市場に製品を出していません。
いつ出すのか?
デジカメWatchの記事「インタビュー:ミラーレスの「今」と「これから」【キヤノン編】~常務取締役 イメージコミュニケーション事業本部長 眞榮田雅也氏に訊く 」によると、2012年には何らかの形でキヤノンからの回答が出るようです。
実は私、一時期は写真家になろうと真剣に思っていた程、写真をやっていました。写真展も数回行っています。→こんな作品を撮ります
写真機材は学生時代からキヤノンを愛用しています。1980年代・90年代前半は旧F-1、新F-1、90年代後半はEOS-1n RS、そして2000年代からデジタル一眼レフもEOSを使っています。
ということでキヤノン、特にEOSシリーズには、特別に愛着を持っています。
思い起こせば、1985年にミノルタがαシリーズで話題を独占したオートフォーカス市場に対して、キヤノンがEOSシリーズで回答を出したのは2年後の1987年。
キヤノンファンの一人としても、キヤノンがいかに「イノベーションのジレンマ」を克服するのか、今回も期待したいところです。
ミラーレス一眼を買うのは、キヤノンの答えが出るまでしばらくお預け状態になりそうです。