ドラッカーは、これから半年~1年間の我が国の電力計画の考え方についても、教えてくれていた
林總著「ドラッカーと会計の話をしよう」を読了しました。
この本は、ドラマ仕立てで、詳しく会計を知っている人でも陥りがちな落とし穴について、分かりやすく学ぶことができます。
なぜドラッカーで会計なのか?
実は経営学者のドラッカーは、最先端の管理会計学者でもあります。本書では、そのドラッカーの言葉が随所に引用されています。
また、ドラッカーは、社会生態学者、法学、経済学、政治学、美術についても超一流の学者でした。まさに現代のレオナルド・ダ・ビンチ。
特に興味を惹いたのは下記でした。
---(以下、p.117から引用)---
第一に、業績の90%が業績上位の10%からもたらされるのに対し、コストの90%は業績を生まない90%から発生する。業績とコストは関係がない。(中略)
第二に、資源と活動のほとんどは、業績にほとんど貢献しない90%の作業に使われる。
---(以上、引用)---
---(以下、p.122から引用)---
損益計算書を見ても、お金がどのように使われたのか、何も書かれていない。
---(以上、引用)---
---(以下、p.139から引用)---
一律的なコスト削減計画では、うまくいっても効果は小さい。
第一に、コスト管理は、最大のコストに集中しなければならない。5万ドルのコストを1割削減するのに要する労力は、500万ドルのコストを1割削減する労力とほとんど同じである。(中略)
第二に、コストはその種類によって管理しなければならない。(中略)
第三に、コスト削減の最も効果的な方法は、活動そのものをやめることである。
---(以上、引用)---
ちょうど震災後にこの本を読んだこともあって、「コスト削減 = 節電・電力削減」と読み替えてみました。
現在の計画停電は、「一律的なコスト削減計画」に近い考え方だと思います。(停電除外地域があったり、医療機関等を除外することは検討はされていますが、これらはあくまで一律削減方針があった上での例外扱いです)
そこで、上記の引用箇所で、
「コスト = 電力」
「業績 = 個人生活レベルと、日本の経済活動」
「損益計算書 = 電力使用状況」
と読み替えると、我が国が、現在の限られた電力供給量で、人々の生活レベルと日本全体の経済活動を維持するために、どのように考えるべきなのか、ヒントが提示されていると思います。
ポイントは、供給者側だけの視点で電力コントロールをするのではなく、需要者側の視点(=顧客の視点)も入れることなのでしょう。
損益計算書から無駄なコストを見つけられないのと同様、電力使用状況をいくら詳細に分析しても、日本全体の視点で、電力用途の優先順位を付けることはできません。
今後の我が国の電力計画を決定するには、電力会社と政府だけの議論ではなく、電力消費者側も加わることが必要なのでしょう。
なお、著者の林總さんは、「餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか? 」などのベストセラーを書かれた方で、物語仕立ての会計の本を多く書いておられます。
この本も、とてもシンプルながら、奥深いストーリー。1時間で読むことができます。お勧めです。