日本人がYes/Noを明確に言うことで、実は欧米人は結構傷ついている、という話+そんな欧米人と、円滑に仕事するには?
日本人が欧米人に持つ印象は、こんな感じなのではないでしょうか?
「YesとNoを、はっきりと、ストレートに言う」
こう思っているので、ある程度英語を話せるようになると、私達もYes/Noをはっきり言うことが多いと思います。
かく言う私もそうで、英語で仕事をし始めた頃はあえて自分の人格を変えて、必要以上にYesとNoを明確に言うように意識していました。
しかし、仕事を通じて親しい海外の友人が増えたり、海外からの長期出張で日本に来ている同僚と仕事をする機会が増えて、毎日のように色々と話しているうちに、気がついたことがあります。
欧米人でYesやNoをはっきりとストレートに言う人は、意外と少ないのです。
多くの欧米人は、仮にその意見に反対であっても、
「なるほど、あなたがそう考えるのはよく分る。私だったら、それをさらにこうすると思う」
とか、
「悪くないね。さらにこのようにできたら、もっとよくなると思う」
というような言い方で、相手の立場を尊重した言い方をします。
中には「xxxxについて、どうなんだ? Yes or No?」と言ってくる人もいますが、極めて少数派です。
実際、そういうことを言った人間に対して、多くの欧米人が「あいつは何だ?Yes or Noという質問自体、バカげている」と怒っていたりします。でも、その発言をした本人には、気を遣ってストレートに言わないようですが。
外国人同士でこのような会話をしていること自体、日本人にとって意外に思えます。
つまり、実は相手に対してすごく気を遣っているのですよね。
その点は、日本人も欧米人も、大きな違いはありません。
考えてみたら、相手を尊重するというのは、人間社会では普遍的に必要なことですね。
では日本人と欧米人の大きな違いは何かというと、欧米人は何らかの意見に対して、自分は「Yes」か、「No」か、それとも「分らない」のか、考えを割としっかり持っているということです。
ただ、その考えを表現する方法は、必ずしもストレートな言い方ではなく、日本人同様相手の立場に気を遣って話しています。
「相手の人格」と「相手の意見」を分けている、と考えれば、分りやすいのではないでしょうか?
つまり、「相手の人格」は常に尊重する一方で、「相手の意見」については「Yes」、「No」、あるいは「分らない」を明確にしている、ということです。
一方で、日本人の場合、私は「相手の人格」と「相手の意見」を明確に分けずに考える傾向があるような気がします。
例えば、「あいつの言うことだから、賛成だ」とか、「あいつの言うことだったら、反対だ」ということが多いのではないでしょうか?
日本の国会でも、ライバルの党が出す法案や意見は常に否定する、という場面が多く見られます。同じ理由かもしれません。
もちろん、欧米人にもそういう傾向があるでしょうが、「場の空気」ではなく、弁証法を議論の基本にする社会では、その度合いは少ないように感じます。
どちらがよい、悪い、ということではなく、文化的背景の違いで、そのような違いが生じている、ということです。
このように考えていたら、先日、ある外資系企業社長のご講演を伺う機会があり、さらに新しい発見がありました。
日本人が「Yes/No」をはっきり言いすぎることで、欧米人は結構傷ついていることが多い、という話です。
例えば、欧米人が日本に対して、「日本でxxxxxxxのようにしたらいいんじゃないか?」という提案をしたとします。
その提案が適切ではない場合、多くの場合、私達は「それはだめ。理由はxxxxxxxだ。日本市場では有効ではない」と言ったりします。
実は、彼らが日本に何らかの提案する場合、とても気を遣って提案していることが多いのですが、それを完全に否定されることで、彼らは人格も否定されたように感じてしまい、結構傷ついているようなのですよね。
もしその提案が適切でない場合、こんな感じで返すといいのではないでしょうか?
「提案をしていただき、ありがとう。その提案は、我々が持っていなかった新しい視点だ。一方で日本ではxxxxxという現実がある。だから、その提案をさらに発展させてxxxxxxxとすれば、さらに効果的だと思うが、いかがだろうか?」
ポイントは
1.まず、相手の人格を尊重し、提案してくれたことに感謝する
2.こちらの現実を、事実として伝える(自分の意見でもOK)
3.相手の意見を否定するのではなく、発展・進化させる
特に3.は、弁証法でいうところの「正反合」です。
新しい提案をすることで、彼らもその意見を取り入れて、日本の現実を反映した、より優れたプランを作れることになり、自分の評価にも繋がります。Win-Winですね。
相手の人格と、相手の意見を、分けて考えること
相手の人格は常に最大限尊重しつつ、意見ははっきり持つこと
文化的背景の違いによる考え方の違いと、文化が違っても普遍的で変わらない点を理解し、実践していきたいものです。