IPO幻想の消滅と、社会企業家という考え方
日経BPの記事『上場、もはや「目標にあらず」』によると、2006年に年間187社あった新規株式公開(IPO)が激減し、4~5月は各1社にまで減っているそうです。
かつて、ほんの数年前までは、『いつかはIPO!』が大きな目標であったこともありました。
しかし、記事にもある...
『上場したら外資やファンドに狙われる』
『上場はもう魅力ないなあ。現場をよう知らん人が株主になったらかなわんし』
という声を聞くと、このIPO幻想が消えて現実が見えるようになってきたとともに、世の中の流れが着実に変わってきていることを感じます。
上場に伴う様々なコストに対して、それによって得られるメリットが見合わないことが大きな理由です。
実際、オルタナティブ・ブロガーで会社を経営されている方々でも、「IPOしてもメリットがないし、...」と、あえて上場を行わないとおっしゃる方もおられます。
現在、四半期毎の業績が対前年度で数%変わっただけで企業の株価は大きく上下しますし、その結果に投資家や経営者は一喜一憂しています。
そのため、四半期の期末に営業を強化して売上を立てようとしたり、支払いをやり繰りしようとしたり、四半期毎配当をしたり、と、企業は大変な努力をしています。
しかし、このような世の中の流れの変化を見ていると、将来的には上場という考え方自体がなくなり、「以前は、『四半期オペレーション』ということをやっていた時期もあった」「え、何、それ?」と、昔話として語られる日が来るかもしれません。
ちょうど現在、「ほんの十数年前までは、『土地の価格は永遠に上がり続ける』と全員が信じていて、我先に不動産を買っていた」「へー、そんな訳、ないのにね」と語られるように、です。
時代がちょっと変わっただけで、それまで常識だったことが非常識になる、ということですね。
いずれにしても、四半期オペレーションの経営モデルを、見直そうという動きがあるということは、少なくとも言えそうです。
田坂広志さんが代表の「社会企業家フォーラム」では、社会企業家を次のように定義しています。
「社会企業家」とは、
社会貢献と社会変革の志と使命感を持ち、
様々な社会的立場から、そして
様々な職業的分野において、
現在の事業の革新と
新たな事業の創造に取り組み、
新しい社会の実現をめざす人々です。
また、松下幸之助さんは、
企業は本業を通じて社会貢献をする。
利益とは社会に貢献したことの証しである。
多くの利益を与えられたということは、その利益を使ってさらなる社会貢献をせよとの世の声だ。
と語りました。
この日本人にとっては古く、かつ、新しくもある考え方、未来の企業のあり方を示しているといえるのではないでしょうか?