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何故、ヒット商品の寡占化が進んでいるのか?

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日経ビジネス 2006/12/11号で、「ヒット連打の新法則」という特集が掲載されています。

この記事によると、2006年ヒット商品ランキング上位50中、松下電器産業が5商品、キリンビール、シャープ、任天堂の3社が3商品を送り込んでいます。いわば、ヒット商品の寡占化です。

この記事ではヒット商品を生む企業に共通する要因を分析していますが、私自身は、ヒット商品を生むための組織作りを行っていることが、共通要因なのではないか、と感じました。

■■資生堂の「TSUBAKI」の場合。

「ブランドごとに研究開発から販売までを1人で全面的に管理するブランドマネージャーという役職を前田社長が新設」し、「同時に事業企画部という部署を新設」しました。事業企画部は「ブランドの枠を超えて全社最適を判断する。そのため、全社的な投資判断からブランドごとに割り当てられた予算を再分配する検眼まで与えられて」います。

これにより、定番商品の座を狙うために、発売から7ヵ月後に10億円以上と見られるキャンペーン費を投じて大攻勢をかけることができました。

■■松下電器産業の「フィルターお掃除ロボットエアコン」や、「ヒートポンプ式ななめドラム洗濯乾燥機」の場合。

両方とも成熟市場の代表格である白物家電ですが、前者はエアコンに掃除機の技術を、後者は洗濯機にエアコンの技術を、それぞれ組み込んでいます。

従来、事業部製の縦割り組織のため、事業部をまたぐ商品開発は非常に難しく、このような商品を開発するのは難しかったそうです。しかし、2001年の中村邦夫会長が進めた改革の結果、AVのパナソニック・ブランド、白物家電のナショナル・ブランドそれぞれでマーケティング本部制を作りました。この結果、各本部で横断的に商品開発を統括する体制が生まれ、これらの商品誕生に結び付いたそうです。

■■キリンビールの発泡酒「円熟」、ビール「一番搾り無濾過(生)」、及び第3のビール「のどこし(生)」の場合。

2001年、アサヒビールに首位を奪われ会社の危機を感じていた荒蒔会長は、「うまいものを作れ」「市場の要求に100%応えるだけの体制を組め」というたった2つの指示を出しました。

前者は当然のこととして、後者は「品切れを起こさない」ということに尽きます。

このため、流通の仕組みを徹底的に見直しました。問屋などに"押し込む"ノルマ営業は止め、正しく消費者ニーズをつかめるように、売り場の実数を本社で集約し、各部門で共有できる体制に移行しました。顧客の販売動向を反映したPOSデータをもとに、本社が立てた需要予測にのっとって工場は全体最適を考えた生産体制を敷き、物流は配送計画を作るようになりました。

 

それぞれに共通しているのは、開発部門、営業部門、又は単一事業部だけの努力でヒット商品を生んでいるのではなく、全社最適化を通じてヒット商品を生んでいる、という点です。

言い換えると、「縦割りの弊害」を克服し、「全社最適」を達成することで、顧客ニーズに応えているのです。

イノベーションを生むために必要な要因は、「オープンであること」「コラボレーションを進めること」「統合すること」「グローバルな取り組みを進めること」と言われています。これらの観点を持って、これらの事例を学んでみると面白いのではないでしょうか?

プロジェクトX等では、「全社方針に反対し、ある事業部の有志でこっそり開発していた技術がやっと陽の目を見て、大輪を咲かせ....」というようなロマンを感じさせる話がありましたが、フラット化が進む現代、ますますこのようプロジェクトの進め方は難しくなってきているのかもしれませんね。

むしろフラット化された現代、こっそり開発するのではなく、社内外に積極的にオープンにし、協力を集める方法がマッチしていると思います。

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