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赤いnano、ピンクのデルタ航空、ピンクのキャンベルスープの共通点

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アップルが発表した赤いiPOD nano
発表されて3週間が経過し、通勤途中でも見かけるようになりました。遠目にもクールなデザインですね。

通常のnanoと同じ価格ですが、売上のうち1台あたり10ドルが「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」(世界基金)に寄付されるそうです。

また、ブッシュ大統領が「10月は米国乳がん意識向上月間だ」と言って始まったピンクリボン活動のことが日経BPの記事「ピンク一色に染まる米国企業のなぜ」で紹介されています。

ピンク色のキャンベルスープとか、ピンク色のデルタ航空、ピンク色のレンズ付フィルム、等、新鮮で美しいデザインで、見ているだけでも楽しめます。

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このようなマーケティング手法はCause-Related Marketingと呼ばれるそうです。日本では「コーズマーケティング」と呼ばれています。

恥ずかしながら初めて聞く言葉なので、調べてみました。

これは、企業が自社の財・サービスの販売を通じて、社会的大義(=Cause,コーズ)を同じくするNPO等市民活動団体の資金調達を支援するマーケティングです。詳しくはこちらに説明があります。

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商品の差別化が難しい現代、コーズマーケティングは消費者に「その商品を選択する大きな理由」を提供することで、企業は売上を拡大し、その収益の一部は慈善活動に提供され、消費者も社会貢献という満足を得られます。三方一両得です。

このように慈善活動で企業側が収益を上げることについては、日本では例えば「慈善活動で利益を計上するとは何事だ」といったように、違和感を感じる面もあるかもしれません。

しかし、記事を見る限り、米国では慈善事業に対する実質的な見返りがあることを評価している慈善団体も多いようです。非常に現実的ですね。

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現時点では日本ではまだそれ程一般化していませんが、将来的に「コーズマーケティング」が世の中一般に普及してくると、慈善活動団体は大企業から大きな活動資金を日常的に得られるようになるかもしれません。

逆に「コーズマーケティング」を行っていない企業にとっては、そのことが逆に「その商品を選択しない大きな理由」を消費者に提供することになりかねません。

ただ、現在様々な分野に普及しているポイントカードシステムやマイレッジ・プログラムのように、あまりに多くの企業が同じことをやると、逆に企業の収益を圧迫する可能性もあります。

信念が問われるのは、このような状況になった時でも、続けるかどうか、ということかもしれません。差別化の手段と考えてはいけないということなのでしょうね。

個人的には、コーズマーケティングがごく当り前のことになる世の中は、なかなか素敵だなぁ、と思います。

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