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ロシアの天才ピアニスト、コブリン

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ロシアの天才ピアニスト、アレキサンダー・コブリンをご存知の方は、まだ少ないかもしれません。

先週、浜離宮・朝日ホールで行ったコブリンのリサイタルをビデオで録画していたのですが、この週末にじっくり見る機会がありました。

私がコブリンを初めて知ったのは数年前、浜松の音楽コンクールの様子を追いかけたNHKの特集でした。当時20代前半のコブリンも出場していましたが、年齢に似合わないその円熟した表現力ある演奏に感動したことを憶えています。(参考までに、彼のプロフィールが写真付で東音のサイトに掲載されています)

今回の曲目は、ショパン・前奏曲でした。病気の療養のために、当時交際していた女流作家ジョルジュ・サンドのマジョルカ島にある家に滞在している最中に作った作品集です。それまでパリのサロンに集まる上流階級向けの音楽を作っていたショパンが、自分自身のために作った作品集でもあります。

まさにコブリンならではの素晴らしい表現力で、死に直面したショパンの心の軋みが伝わってくる演奏でした。

クラッシックに詳しい私の妻の話によると、実は彼の演奏は必ずしも作品に忠実に弾いている訳ではないそうです。特に欧州では、クラッシックは作者の意図をいかに忠実に再現するか、が求められています。

先の浜松の音楽コンクールでも、コブリンは出場者の中ではるかに抜きん出た実力を披露したにも関わらず、2位に終わりました。1位は該当者なしでした。

ショパン・コンクール等、世の中の様々なコンクールも、作品の解釈に対するオリジナリティよりも、作品そのもののオリジナリティに対する表現力が求められているようです。

私はコブリンの演奏を聴いて、彼の演奏はクラッシックではなく、むしろ即興性が高いジャズに近いのではないかと感じました。もちろん、コブリンはもの凄い練習量を重ねている筈で、その場で即興で演奏していることはないと思います。しかし、オリジナル作品を忠実に再現するのではなく、自分自身の解釈で大胆に組み替えて演奏する、という意味では、クラッシックよりもジャズに近いような気がします。

そのように彼のピアノを聴いていると、少し猫背気味にピアノを弾いている彼の姿が、私が大好きなジャズ・ピアニストであるビル・エバンスに重なって見えました。

まだ弱冠26歳。将来が楽しみなピアニストです。

ロシアでこのようなピアニストが出てきたというのは、非常に興味深いですね。ベルリンの壁が崩壊せず、ソ連がそのまま残っていたら、恐らくコブリンのような人は出てこなかったと思います。(....と、最後は無理やりフラット化の話にこじつけています)

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