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日本流とグローバル統合

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今泉さん高橋さんが、日本IBMを事例にして「日本流へのアレンジ」について書かれています。

私の長年のテーマでもありますし、なんとなくお誘いをいただいているような気も致しましたので、私もこの話題について書かせていただきます。

グローバル統合の動きとローカライゼーションのバランス、という観点で見てみたいのですが、これはかなり重たいテーマです。

まずグローバル統合から。

世界全体がフラット化している現在、特に全世界でオペレーションを展開している企業にとっては、グローバル統合は急務だと思います。

今年6月6日と7日にインドのバンガロールで開催したIBMの株主総会の資料で、今後のIBMのグローバル化戦略について詳しく紹介されています。

非常に単純化すると、現在のIBMのグローバル化戦略は、下記の二つの目標に集約できます。

■グローバルでオペレーションを統合し、重複する作業をなくすようにグローバルのプロセスを作った上で、意思決定のレベルを出来る限り現地のビジネス責任者まで下げる。

■組織をグローバルに機能単位で統合することで、生産性とスキルを向上する。

例えばグローバル・サプライチェーン統合。購買活動に絞って考えてみると、現地法人の各部門が個別に購買活動を行っていると、全社的な視点でコストが最適化されません。分散された発注をまとめて大きなボリュームにすることで価格交渉力も出ますし発注先も大きな仕事を確保でき、さらに部門単位の個別交渉よりも高品質の発注先を確保できます。

また、人事・営業管理・不動産・コミュニケーション・マーケティング等のサポート部門もグローバルで統合することで生産性とプロフェッショナルとしての品質向上を図っています。現地法人には、今までと同様に各部門の人材を配置した上で、全世界の現地法人に横串をさして横断的な組織を作っています。この仕組みは"Centers of Excellence"と呼ばれています。

グローバルにビジネスを展開している企業のオペレーションが世界レベルで全体最適化されることは、フラット化した社会で競争に勝ち抜くためには今や必須ですので、この動きはますます強まっていくと思います。

 

次に、ローカライズ。

ブログの上で改めて言うことでもありませんが、ここから先は私個人の考えです。

「お客様の問題を解決する」ことが企業の存在理由です。オペレーションやプロセスをグローバル統合するのもお客様のご要望に応えるためですので、この辺りを混同して、日本で通用しないグローバルのモノをそのまま日本に持ってきては本末転倒です。

まさに今泉さんがおっしゃっている

  • 「①日本市場に合わせて作り直す ②目をつぶって翻訳で済ませる どっちを選ぶか」

というご指摘はポイントですね。

グローバル企業の現地法人としてこの辺りは常に悩みどころです。ここで重要なのは、高橋さんがご指摘の通り、グローバル戦略の中に日本の戦略を反映することです。

私は、世界の中でも最も洗練されたお客様がいて、かつ世界の中で最も進んだ技術も持ち合わせている日本の中にあって、日本IBMはIBMグローバルの活動に貢献することで世界全体の発展に寄与しうると信じています。

このため必要なのは、これも高橋さんがまさにおっしゃっているように、

  • 「強い信念と高い信頼」
  • 「私の言うことをすることがお前のために一番いいんだと素直に伝えること」
  • 「言語力と文化理解」

ですね。

私の経験ですが、ある分野の製品マーケティングを担当していた際、日本のお客様のご要望を満たすために米国のソフトウェア会社とのアライアンスが必要になりました。日本独自にアライアンスを組むとボリューム・メリットを活かせず契約も不利な条件になります。そこでグローバルのアライアンス責任者と密接に協業し、お互いの情報をシェアしてグローバルと日本で並行して交渉を続け、グローバル・アライアンス契約に持っていきました。日本独自で契約するよりも時間は少々かかりましたが、お客様のご要望に応えつつ、IBMのミドルウェアやサーバーをサポートするなど有利な条件で契約することができ、グローバルでもIBMとこの会社は非常に密接な協業体制を構築できました。

「フラット化する世界」は、個人のグローバル化も語っています。今後、我々各個人がグローバル・コミュニティの中に積極的に参画し、世界の多様な文化を理解しつつ日本文化に対する深い洞察を持ち、かつ様々な文化的背景を持つ人達とWin-Winのフレームワークを構築しコミュニケーションできる能力を身に付ける必要がある、と思います。

これは日本IBMだけでなく、失われた10年から立ち直り、フラット化した世界市場に再挑戦している日本全体に求められていることではないでしょうか?

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