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地震時の避難方法の常識に対する新たな説

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日本のテレビで学校の地震訓練風景を放映していたが、先生の指導で生徒が机の下に潜っていた。これが間違いかもしれない、ということを以下の記事で知った。が、その後の読者からのコメントで、この説には賛否両論あることが判明。私は専門家ではないので判断は控えるが、以下のコップ氏の理論は、地震に脆弱な発展途上国の建物により有効で、日本のような耐震構造のしっかりした建物では今までの方法の方が有効かもしれない、という印象だ。今までの常識を疑うという意味で注目したいと思うが、読者のお叱りの通り、命に関わることなので「参考意見」としてお読み頂きたい。

「命の三角空間」― ダグ・コップ氏(原文の翻訳にはConyac社のご協力をいただいた。誌面を借りてお礼申し上げる。)

私は、世界で最も経験豊富と言われるアメリカの国際救助チーム”ARTI”の救助隊長・災害マネージャーです。ここで紹介する方法により、より多くの命が震災から救われることを期待します。

私は、崩壊した875の建物の中に入り込み、60か国からの救助チームと一緒に作業し、複数の国で救助チームを組成してきました。災害軽減のための専門家として国連でも2年間勤務しておりました。私は1985年以降、世界中のあらゆる大きな災害に取り組んでまいりました。

私が震災の建物に初めて入ったのは、1985年のメキシコシティーの学校でした。どの子どもも机の下にいました。どの子も、骨の厚さにまで押しつぶされていました。生徒たちは机の隣に横たわっていれば生き残ることができたはずなのに、なぜそうしなかったのか不思議に思いました。当時の私は、子供たちが何かの下に隠れるようにと先生から教えられていたことを知りませんでした。

単純に言うと、ビルが崩壊した場合、天井の重さによって屋内の家具や物が押しつぶされます。しかし、その際に家具や物の脇に、空間を形成することになります。これが私の言う、「命の三角空間」です。物が大きいほど、また強固であるほど、押しつぶされても元の形を保つ可能性が高くなります。元の形を保つ可能性が高いほど、この空間は大きくなり、この空間にいる人間が怪我をしない可能性が高くなります。崩壊したビルをテレビで見る機会があったら、この形成された「三角形」の数を数えてみてください。いたるところに見つけられるはずです。三角形は崩壊したビル内で最も目にしやすい形です。

具体的な地震時の安全確保のためのヒントをここでご紹介しましょう。

1)建物が崩壊した場合、ほとんどの「身をかがめて隠れた」人たちは圧死します。机や車の下に隠れた人たちは、押し潰されます。
2)猫や犬の死体、または赤ちゃんの遺体は、体を丸めた状態で発見されます。体を丸めた状態は、本能的な生き残りのため、または安全確保のための姿勢です。地震発生時には、小さな空間でも生き残れるように、体を丸めるべきです。地震発生時には、少なかれ圧縮されても空間を形成するような物、例えばソファーや大型のしっかりした家具などの隣にすぐに移動しなさい。
3)木造立ての建築物は、地震発生時に屋内に居た場合、最も安全な建物です。木は柔軟性があり、地震の力に応じて動きます。もし、木造の建築物が崩壊しても、大きな生き残りの空間が形成されます。また、木造建築物がつぶれても、上から落ちてくる重量は軽く、また分散しています。レンガ建ての建物は、レンガがばらばらに崩れます。レンガは多くの怪我人を出しますが、コンクリート板よりは圧死する人数が減ります。
4) 就寝時に地震が発生した場合は、そのままベッドの脇に転がり落ちなさい。ベッドの周辺には安全のための空間が形成されます。地震が発生した場合に、ホテルでの生存者が多いのは、各部屋のドアの裏側に、地震発生時には、ベッドの脇に横になるようにという注意書きを貼り付けているからです。
5)地震が発生した場合に、ベッドから起き上がったり、窓から避難することができない場合は、ソファーまたは大きな椅子の脇に、丸くなった姿勢で横になりなさい。
6) ビルが崩壊した場合に、玄関に居た人は、ほぼ間違いなく圧死します。それは玄関のドアの下に立っている間に、鴨居と枠が前後に倒れた場合は、その上から落ちてくる天井によって押し潰されるからです。もし、ドア枠が横に倒れた場合は、玄関ドアがあなたの体を真二つにします。どちらの場合も、死は免れません。
7)決して階段に行かないでください。階段には異なる「振動モーメント」(建物の主要部分からくるベルベルの揺れ)があります。階段と建物の残骸が、階段が壊れるまで連続してお互いにぶつかり合います。落ちる前に階段にいた人々は、階段踏み板によって切り刻まれて恐ろしいほど損傷を受けます。たとえ建物が崩壊しないとしても、階段から離れていてください。階段は一番損害を受け易い建築部分です。たとえ階段が地震によって崩壊しないとしても、逃げ惑う人々によって負荷がかかりすぎると、後で崩壊してしまうかもしれません。残った建物が損害を受けなくても、階段は安全性のために常に検査しなければなりません。
8)屋内で建物の外壁の傍に寄るか、できたら屋外に出る。屋内の場合、建物の外に近いほど安全です。屋内で建物の外側から遠い場所に居るほど、非難ルートの確保が難しくなります。
9)車内の人間は、地震で頭上の道路が崩れて車上に落ちてきた場合に押し潰されます。サンフランシスコの高速道路でコンクリートの道が落下した時は、まさにこの状態でした。サンフランシスコ地震での被害者は、車内にいた人たちで、彼らは全員死亡しました。車から出て、車の隣に座るか横になっていれば、全員が助かったと思います。押し潰された車は、倒れた柱に直接潰されたもの以外は、車の隣に1メートルほどの高さの空間を形成していました。
10) 崩壊した新聞社やその他多量の紙のあるオフィスの中を這って検証し、紙は押しつぶされないことがわかった。積み重ねられた紙の周囲に大きな空間があった。

1996年に我々はある映画を制作した。ここで私のサバイバル法が正しいことが証明された。トルコ連邦政府、イスタンブール市、イスタンブール大学、ケース・プロダクションズ、ARTIがこの実地的・科学的実験の映画制作に協力した。学校と家屋に20体のマネキンを内部に配置して建物を破壊した。10体のマネキンはいわゆる「duck and cover」(50~80年代にアメリカで推奨されたしゃがむ防御術。)を、そして残りの10体のマネキンには私の「命の三角空間」サバイバル法を用いた。地震による倒壊シミュレーションの後、我々は瓦礫をかきわけ建物のなかに入り、実験結果の記録を撮影した。

建物の崩壊で生存する実践方法を記録したこのフィルムは、しゃがんで(duck and cover)身を守った人たちの生存の可能性は0%だった。「命の三角空間」という私の推奨方法を取った人々は、おそらく100%の生存率となる結果だった。このフィルムはトルコだけでなく他のヨーロッパ諸国やアメリカ、カナダ、南米でテレビ放映された。

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コメント

「命の三角空間」("Triangle of Life")については批判も多く、下記のように地震情報ページにおいても [DO NOT get in the "triangle of life"]と名指しで批判されています。

http://www.earthquakecountry.info/dropcoverholdon/#notrecommended

批判の詳細についてはwikipedia "Triangle of Life"の項
http://en.wikipedia.org/wiki/Triangle_of_Life

や、「専門家によるダグ・コップの「命の三角形」への批判」(日本語訳)などを参照してください。
http://blog.ironsand.net/2011/rejoinder-to-doug-copp

また、コップ氏が問題視しているビルや学校などの大規模構造物の崩壊は、東日本大震災で震度6~7といった強烈な揺れが観測された地域でも発生しておらず、前提条件からして無理があると思われます。
もちろん、耐震基準が定められていない国などでは問題になる場合もあるかと思いますし、耐震基準の想定を超える規模の揺れが今後発生する可能性も無いわけではありません。

ただ、かなり強烈な批判を受けている主張について、一方の見解のみを取り上げ

「地震時の避難方法の常識はまったく間違いだった!」

と主張する姿勢には、正直なところ同意できません。
安全情報を発信する際には、その内容が他者の生命を左右するものであることを自覚し、慎重になるべきだと思います。特に今回の場合は検索すればすぐに批判的な意見がヒットするわけですし。

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