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プラットフォームとは何だろう

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「プラットフォーム」という言葉から、何を思い浮かべますか?

最近「デジタル変革のためのプラットフォームを構築する」「我が社はプラットフォーマーを目指すのだ」といった言葉を耳にします。私自身、プラットフォームという言葉が昔から好きで、以前は担当するチームの名前にも付けていたほどですが、人によって違う意味を持つ単語でもあります。このプラットフォームについて少しまとめてみました。私自身のバイアスが、かなりかかっています :-)

まず、ここで除外するプラットフォームがあります。プラットフォームと聞いて多くの方に一番身近なものは、いわゆる駅の1番ホームや2番ホームのあれ、でしょうか(この場合「プラットホーム」の方が良いのかも)。物理的な土台については対象外とします。また、Wikipediaでは、プラットフォームは、一般的なコンピューター・プログラムがその上で動作するOSやハードウェアを指すようです。これまたここでは考えないようにします。

私が思い浮かべるプラットフォームとは、「ネットワーク経由でアクセスするITサービスが動作する環境(サービスのプラットフォーム)」です。

私が前職であるIBMに入社したのが1990年、ちょうど、Tim Berners Lee卿がWorld Wide Webを発明した頃です。入社してしばらくした頃、とあるプロジェクトで初期のWebブラウザであるMosaicを触って、びっくりしたのを今でも覚えています。その衝撃は大きく、その後本日に至るまで、XML, Semantic Web, Web Services, SOA, Web 2.0, Cloudと、サービス提供プラットフォーム (Service Delivery Platform)とその上で提供されるサービスに関する技術を追いかけています。ですから、私が考えるプラットフォームはその延長にあるものです。

サービス提供プラットフォームの概念は、Web以前からありました。人工知能 (Artificial Intelligence)という言葉を生み出したことで有名なJohn McCarthy教授は、1961年にMIT100周年記念式典のスピーチで、当時注目を集めていたタイムシェアリングシステムについて触れ、

「私が主張した種類のコンピュータが将来現実となるならば、電話が公共設備となったようにコンピューティングが公共設備となる日が来るかもしれない...コンピュータ・ユーティリティは新たな重要な産業基盤となるかもしれない。」(Wikipedia 「ユーティリティコンピューティング」より引用)


と発言しています。ユーティリティコンピューティングは、サービスが物理的に提供される場所に関知せず、欲しい時に欲しい分だけ消費することを可能にするものであり、プラットフォームの特徴の一つだと言えます。

長い間、私にとってプラットフォームは、以下のような要素を持つ技術用語でした(これとかあれとか)。

  • JavaプログラムであれSOAPであれREST形式であれ、標準化されたWebサービスをネットワーク経由で提供するための基盤
  • プロビジョニング、モニタリング、セキュリティなどの管理機能を持つもの
  • 社内向けであれ社外向けであれ、スケーラビリティを有する機構

クラウド技術を例に取ると、Platform as a Service (PaaS)の環境がそれに当たります。PaaSのオープンソース実装であるCloud Foundryは、上で述べた技術要素を含むプラットフォームです。以前担当していたBluemixは、Cloud Foundryをベースに、人工知能のサービスAPIであるWatsonなど100を大きく超えるサービスを提供するPaaSです。また、IoTの文脈でよく引き合いに出されるGE社のプラットフォームPredixも、Cloud Foundryベースです (実は最近になって知りました)。

以前は、仕事そのものが、サービスをどのように定義するか、どのように組み合わせるか、プラットフォームをどうやってセキュアにするか、といったものだったので、プラットフォームの技術を中心に考えていれば良かったのですが、製造業に転職してみると、どのようにプラットフォームで本業のビジネスに貢献するのか、どうやって長期間運用していく(生き残る)のか、を考えなくてはなりません。そもそも近年は、プラットフォームが指す概念そのものが、技術要素だけではなくビジネスモデルと不可分な存在になっています。

早稲田大学ビジネススクール教授の根来龍之氏の著書「新しい基本戦略 プラットフォームの教科書」は、最新のプラットフォームを学ぶ上でとても良い本です。この中で、プラットフォームは、以下のように定義されています。

「他プレーヤー(企業、消費者など)が提供する製品・サービス・情報と一体になって初めて価値を持つ製品・サービス」

プラットフォームあるいはその提供者ではなく、他プレイヤーがいることが価値を持つのです。この意味でのプラットフォーム、あるいはそのビジネスモデルまで含めたプラットフォーム型ビジネスの例としてよく言及されるのが、FacebookやUberやAirbnbです。以下のような特徴があります。

  • ある業態やビジネスの運営機能がプラットフォーム上で実現されている。Uberでは、タクシーを呼び、目的地まで行き、代金を払う、というタクシー業務の機能が提供されています。
  • サービスの提供者と利用者がコンテンツを作成し、それを媒体にサービスの授受を行っている。プラットフォーム提供者、サービス提供者、サービス利用者が明確に分かれており、プラットフォーム提供者はサービスを提供していない (Uberはタクシーを持ってないない)。

いわゆるシャリングエコノミーを支えるプラットフォームですね。上の例では、その規模は大きいにしても、参加者の役割の数が、タクシーの運転手と乗客、客室の提供先と宿泊客というように比較的少ないと言えます。複数の異なる役割の参加者からなるビジネスプロセスやバリューチェーンをプラットフォーム上で共有するという形態もあります。

例えば、サプライチェーンを実現するプラットフォームでは、生産者、物流業者、税関、保険会社、利用者など、複数の参加者からなるエコシステムが形成されます。透明性が高く、必ずしも信頼できない参加者間での取引記録が改ざんされにくいブロックチェーン技術をベースにしたプラットフォームが注目されているのはこのようなエリアでしょう。

複数の異なる役割の参加者が集うプラットフォームでは、いかにして参加者全員に益があるエコシステムを確立するかが鍵になります。ここでも単なる技術ではなく、ビジネスモデルやプラットフォームが提供するサービスの価値を考慮する必要があります。プラットフォームとエコシステムという観点については、ハーバードビジネスレビューの2016年10月号「特集:プラットフォームの覇者は誰か」が参考になります。

データそのものをプラットフォーム上で収集、加工、分析などのサービス提供を行う、というシナリオでは、プラットフォーム提供者、サービス提供者、サービス利用者に加えて、データ提供者からなるエコシステムが構成されます。IoTプラットフォームと呼ばれることもあります。大量にあるけれど価値があるかどうかわからない生データが、複数のサービスを組み合わせることで、高い価値となっていくとしたら、これもわくわくしますね。

以上、プラットフォームについてまとめてみました。プラットフォームは単なる技術用語ではなく、ビジネスのあり方や戦略と融合したものとなっています。プラットフォームは、使われて、かつ、収益を得られるものであってナンボのものであると思います (あるいは、Googleが広告でプラットフォームを維持しているように大きなビジネスモデルの中に位置づけられている)。

成功するプラットフォーマーになるのは容易いことではないですが、まずは小さなところから始められるといいかなと思っています。

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