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マーケターとしてベンダーとして、一貫してデータの世界で生きてきた筆者による、思考と情報整理のためのメモ。

Redmond 生活:Microsoft Campus 探訪① BUILDING 9

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さて引き続き米国本社にてインターンシップ中の当方なのだが、今回は Microsoft Corporation の Redmond 本社、通称「Campus」の紹介である。とても一度では紹介しきれないので、何回かに分けるつもりだ。まずは、当方が勤務している BUIDING 9 を含む一角の話をしよう。

この Redmond 本社には Campus の名のとおり、広大な緑あふれる土地に建物が点在している。本社住所は 1 Microsoft Way, Redmond, WA なのであるが、アメリカの住所表記は、通常番地+通りの名前で構成されるので、つまりどこかに Microsoft Way なるものが存在しているはずである。実はこれ、まずオフィスに用がある人しか通らないであろう、156th Ave NE を北上し NE 31st St の角を右折してから NE 36th ST に差し掛かるまでのごく短い道の名前なのである。当方の BUILDING 9はこの Microsoft Way に入って最初の角を右折したところにあるためか、Google Map だとまさに Microsoft Corporation としてピン打ちされてしまうような、代表的な場所なのである。もちろん、ここに社長室があったりとかそういうことはない。

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そしてマイクロソフトがこの地に移転した当初から存在するのがこの一角である。このあたりの建物はみな、特徴的なX型の、地下駐車場付き 2 階建てになっている。これは、できるだけ多くの部屋の窓から外の緑が見えるようにするための工夫らしい。このビルが建てられた当時はまだ IT 産業自体が黎明期であり、今でこそこちらでは珍しくもないのだろうが、一人一部屋の個室を自分の好きなようにレイアウトできることが話題を呼んだ時代であった。従業員にやさしい自由な会社、というわけだ。

当時のニュース映像を見たことがあるが、バランスボールに座って仕事をしたり、スケボーで敷地内を移動したりといった様子が流れていた。アイテムに時代を感じるのを除けば、今でいう G 社などに関する映像と同じようなニュアンスでのほめたたえ具合である。旧体制を破壊する新進気鋭の若者たち、ダメなあちら側とデキるこちら側、という二元論的フレームだ。当時の旧体制である I 社と新しい Microsoft という構図が、今は旧体制である Microsoft と新しい G 社にかわっている、だけのことである。世の中そう単純じゃないはずだが、人は本質的に、思考を深め可能性を広げることよりも、自分の立ち位置を確保して安心することを優先するのである。いけない、いきなり本題から外れていきそうなのでここでやめておこう。

最初に開発された地域「East Campus」

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よく見るとあれ?と思う箇所が 1 つある。さてなんでしょう?

さて、現在この一角を含むエリアは「East Campus」と呼ばれ、BUILDING 1~44 までが収容されている。ビルだけでなく、サッカー場や野球場、テニスコートなどがあり、また緑の合間を縫ってトレッキングコースも整備されている。さらに、対岸のシアトル ダウンタウン地域を含むピュージェット湾エリアを巡回する社員専用のバス「Connector」の 2 つの発着場のうちの 1 つもこのエリアにある。

Connector 紹介ビデオ

キャンパス内なら Connector は呼べば来るしどこでも連れて行ってくれるのだが、キャンパス外に関しては発着場所とルートが決まっている。決まっているといっても、車社会なので多くの人は自分の車で通っているが、オフィスへの入り口に近い便利な場所の駐車場は競争が激しいので、会議などでのビル間の移動にはあえて Connector を使って自分の車を動かさない人も結構いる。

East の他には、NE40th という通りを挟んで北にある「North Campus」、Highway 520 を挟んで西にある「West Campus」、さらにその北にある「Redwest」エリアがあって、これら 4 つのエリアを総称して Redmond Campus と呼んでいる。West Campus には「Commons」と呼ばれる、Company Store を含む様々なショップやレストランなどが入った地域があるのだが、これはまた別の回に紹介しよう。

なお、Redmond Campus 以外にも本社機構がいくつかの地域に分散しており、当方のアパートがある Bellevue にも、中心街の Lincoln Square というビルなどにいくつかオフィスがある。こちらの夜時間に日本と電話会議をする機会が多いのだが、アパートのネットワーク帯域がいまいちな時(こちらの一般のネットワーク環境は日本よりかなり劣るのだ)にはそこで仕事をすることもある。なお Lincoln Square は、このあたりでは一番多きなショッピングセンターである Bellevue Square や、出張でよく利用する Westin や Hyatt Hotel とも接続されており、また台湾料理の鼎泰豊などのレストランも入っているため、非常によく利用するビルの 1 つである。

Campus 最初のビル群

Microsoft がこの地に本社機構を移したときに建てられた最も古い BUILDING 1~4 は、錦鯉が泳ぐ池の周りをぐるっと囲むようにダイヤモンド型に配置されており、隣接するビル同士が、屋根付きの渡り廊下で接続されている。ほかのビルよりも奥地にあり、緑にも囲まれているので、非常に穏やかで落ち着いた雰囲気である。建物自体は古いのでいろいろ不便なのかもしれないが、ここの空気はとても清浄な感じがしてよい。今は冬で寒いが、それでも晴れた日はとても気持ちいいのである。

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マイナスイオンな感じの中庭なのである

BUILDING 5 と 6 は、4 の隣に、次のダイヤモンドを構成していくかのように配置されている。そして、Highway 520 側に向かって噴水のあるやや大きめの中庭を挟み、当方の入る BUILDING 9 および 8、10 が配置されている。

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この 3 つのビルは X が 2 つ直接連結された「キ」形で建てられており、その X の連結部分が受付入り口になっている。ビル同士が渡り廊下でつながっているのは古いビル群と同じだ。X 型のビルはここまでで、それ以降のものも、もちろん採光には気を使った作りになってはいるが、H 型や非対称形が多い。実はX型のビル、中に入ってみるとわかるのだが非常に迷いやすく、それ以降のビルには採用されなかったのだろう。

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当方の部屋付近には「Channel 9」人形があり、入り口から向かう分には間違えない

X の辺にはすべて個人ブースが配置されており、かつ外に面していない内側には会議室などが並んでいるため、廊下は血管のように X の先までぐるっと回っている。廊下の交差する部分には部屋番号と向きが記された看板があるのだが、2 次元なので指せる向きにどうしても制約がありわかりづらい。指示通りに歩いて行っても、それが最短距離だとは限らないのだ。一度角を曲がると別のコースを案内されるような場合もある。2 年ここで働いている同僚も時々さまようぐらいなのである。

BUILDING 7 の謎

最初のほうの地図を見て気づかれた方もいるかもしれないが、実は Campus には「BUILDING 7」が存在していない。もちろん皆も認識していて、ジョークのネタにされている。たとえば面倒なお願い事をされたときに、ごめん今日は BUILDING 7 で遅くまでミーティングなんだ、と断るとか。あるいは新入社員をからかうのに会議の場所を BUILDING 7 にして通知を送るとか。実は BUILDING 7 はとある場所に存在していて、そこにスティーブ バルマー(前の CEO)が住んでいる、という話も聞いたことがある。結局のところ誰もよく理由は知らないし、そもそもジョークのネタなのでそれ以上追求するような無粋なこともしないという感じのようである。

現在 BUILDING 5 と 6 の隣、つまり BUILDING 7 があってもよさそうなところには BUILDING 37 があるのだが、これを BUILDING 7 として建設しようとしたところ、みんなから反対にあったとのこと。おそらく、急速に会社が大きくなっていく過程で、BUILDING 7 以降の建設計画が同時に進む中で、何らかの理由で BUILDING 7 に相当する建物の計画のみが中止されたのだろうという話なのだが、真相は明かされていないのである。

すごくレベルが上がった Café 9

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さて、当方が入居する BUILDING 9 には、X の連結の中心部分、ビルの受付とは反対側に「Café 9」という食堂がある。10年以上前の食堂はどこも一様にひどかったのだが、当時に比べるともう段違いにマシになっている。当時は、全部似たようなケチャップ味とか、名に頼んでも具がだいたい同じとか、そういうことが結構あった。ビザも、パンみたいな厚手の生地に黄色い「とけるチーズ」とピーマンやソーセージの輪切りが乗ったような、いまどきお目にかかれないひどいものだったのである。イタリア人の同僚はそれを嘆いていたが、かといってほかに食べるものもないのでと結局そのピザを注文しており、同じ理由で激マズ寿司ロールを食べた当方と慰めあったものである。ところが今はどれをとっても、普通にうまいの。最近はシリコンバレー系企業の食堂が話題になることも多く、きっと反省して頑張ったのだろう。無料ではないが、個人的にはむしろそのほうがいいと思う。無料だと調子に乗っていろいろ頼んでますます太ってしまいそうだ。必ずしも会社でご飯食べたいとも限らないし。

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寿司もあるがまだ試してはいない。日替わりでフォーなんかも出てくる

メニューには、和、洋、中、エスニック、いろいろある。それぞれいくつかのカウンターに分かれている、出店(でみせ)形式である。アメリカらしくハンバーガー カウンターもあるが、パティも牛だけでなく、鳥、羊、魚もあるし、標準メニュー以外に自分で好きにくみあわせるカスタマイズも可能である。注文すると、鉄板で肉を焼いて作ってくれる、いわゆるグルメバーガー系なのである。なお、ビュッフェ形式以外のカウンターでは、タッチ インターフェースの KIOSK 端末がおいてあり、そこでメニューや構成を選んでいく。最後に DINE IN か TAKE OUT かを選びクレジット カードをスワイプすると、番号付きのレシートが出てくる。あとは掲示板にある自分の番号が黄色から緑に代わるのを待つだけ。なお、できあがったら大声で番号を呼んでくれるので、画面をじっと眺めている必要はない。

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オニオンかポテトのフライもサイドにつけられるが、ここはがまんなのである

当方はバーガーよりもピザをよくたのむのだが、ここにはナポリ風の石窯があり、その場で焼いてくれる。プリセットのメニューもあるが、自分で台、ソース、チーズ、トッピングをいろいろ選べる。

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出店の名前もそのまんま「NAPOLI」

一番高い基本メニューに、ナポリソースとモッツアレラ、生バジル、きのこ、サラミをのせるカスタマイズで 6.5 ドル、800円弱といったところか。その場で窯焼きということを考えるとリーズナブルである。チップもいらないし。ほかには、ジェノベーゼソースをベースに生ハムなんていう組み合わせなんていうのもなかなかうまい。

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光の加減でいまいちウマそうに見えないが結構いける。自分でオイル追加もできる

いわゆるシアトル スタイルのカフェコーナーもある。看板には特に何も書いていないのだが、カップにロゴがあったのでどうやらスタバのようである。サンドウィッチやホットドッグなどもあるので、軽く済ませたい場合はこちらで十分。裏側にはお菓子やナッツ、サラダなどもおいてあり一緒に買えるようになっている。

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実はオフィスエリアにも「キッチン」と呼ばれる場所があり、そこには豆から挽いてくれるスタバのカップベンダーや、冷蔵ケースに入った缶ジュースがある。全部無料で利用できるので、当方もコーヒーはほとんどここで調達しているのだ。缶ジュースのほうは、果汁 100% のフルーツジュースやコーラ、スプライトをはじめ、チェリーコークやドクターペッパー、それら以上になんだかわからないジュースまでいろいろあるのだが、これに手を出したらおしまいなので抑えている。考えを巡らせているとどうしても体がブドウ糖を欲する感覚が高まるのだが、ここは我慢である。ただでさえここ 1 年ほど体重が急増して困っているので、これは超えてはならない一線なのである。ここでお菓子が手に入るようだと、それは非常にもろい決意になった可能性が否定できないが、ここには飲み物しか置いていなくて本当に助かったのである。

とりあえず今回はこんなところだ。次回は Commons のある West Campus を紹介したい。

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