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Redmond 生活:続・紙コップ格言

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さて引き続き米国本社にてインターンシップ中の当方なのだが、今回は、前回に引き続き紙コップ格言の話である。ところで、前回の結びに書いた通り、先週までは春の訪れを感じていたのであるが、週末から嫌がらせのように天候が悪化している。ほぼ暴風雨なのである。これでは桜も散ってしまうだろう。おまけに今週から夏時間に変わり、朝が明るくない。やっぱり冬のワシントン州は、まったくもって楽しくないのである。

cup_8.jpgLive as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever.
明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ。

マハトマ ガンジー。言わずと知れたインド独立の父である。絵はまあ似てなくもないのだが、どちらかといえばオロナミン C である。ところでどの世代あたりまで大村崑を知っているものなのだろうか。

一見、二律背反な文章のように見えるがもちろん違う。「生きる」ということは活動することである。「明日死ぬかのように生きる」ということは今日できることは今日しておこうということである。少し深読みすると、今日の経験は今日しかできないのだから臆することなく動こうということだろう。一方、「学ぶ」ということは知識を蓄積することでありそれに限度はない。「永遠に生きるかのように学ぶ」ということは年齢に関係なく日々学び精進していこうということである。つまりは、一生を通じて、日々多くの経験をし、そこから学びを得て成長していこう、という話を、日々の心がけに落とすことで、民衆が行動を起こしやすくしているわけだ。さすがである。先ほどオロナミン C などと揶揄したことを深く反省している。

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Success is often achieved by those who don't know that failure is inevitable.
成功とは多くの場合、失敗が不可避であることを知らない人々によって成就される。

ココ シャネル。Chanel の創始者である。今回はコップの数が多いので、次も続けて紹介してしまおう。

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Failure isn't a necessary evil. In fact, it isn't evil at all. It is a necessary consequence of doing something new.
失敗は必要悪ではない。実際、まったくもって悪いことではない。何か新しいことを始めるうえでは、当然の成り行きである。

エドウィン キャットマル。ピクサー アニメーション スタジオの社長である。これは " Creativity, Inc." というタイトルの書籍の中での Quote だ。

この二つも一見逆のことを言っているようだが、そうではない。両者とも、「失敗は不可避」であることを大前提に話を進めている。失敗はどうせ必然なのだから、だったらそれを恐れない者が成功する、ということだ。何かと戦うなら、そこには必ず勝者と敗者が存在する。何か新しいことを始めるなら、それが今まで誰も成功してこなかった原因を乗り越えなければならない。失敗が不可避と思っていいぐらい、断然成功よりも確率が高くて当たり前なのである。この二人は、そんな数々の失敗を繰り返しながら、やがてやってきた成功をつかみ取ったのだろう。

そうなのだ。身の丈未満のことをしていれば失敗は少なかろうが、それでは何の成功もたらさないのである。誰がやったって同じ結果になること、例えば 1+1 の計算結果が 2 になったからといって、それを成功とは言えないし、そんな仕事は早晩 IT に取って代わられていくことになる。

現にマーケティングの世界でも、オンライン広告市場ではすでに金融市場と同様の自動 Bidding システムによって広告枠が取引されているし、プロモーション活動もマーケティング オートメーションによって自動化されつつある。実は当方が今設計しているプロジェクトもまさにそうなのだが、ターゲティングも Machine Learning によってより精緻化、自動化されていくのだ。こうなってくると、マーケターの価値は、それらを活用した、競争に勝つための新しいアーキテクチャーの設計に置かれるようになる。それには、より多くのチャレンジを通じて新しい道を見つけていくほかない。誰も歩んでいない道である以上、その過程における失敗は必然である。二度と同じ失敗を繰り返さないよう学習すればいいだけのことであり、その後もたらされる大きな価値から比べれば、些事に過ぎないのである。

著名人の Quote はここまで。残りはマイクロソフト オリジナルのようである。

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The only place knowing comes before learning is in a dictionary.
「学ぶ」より「知る」が先に来るのは、辞書の中だけである

英語の辞書だと K が L より先だってことだ、なるほど。発言の主が書かれていないので、マイクロソフトのチームが考えたのだろう。しかし、いかにもアメリカ人が好きそうなウィットなので、他に誰か言っていそうなもんだと思い調べてみた。やっぱりあった。

The only place success comes before work is in the dictionary.
「働く」より「成功する」が先に来るのは、辞書の中だけである。

ヴィンス ロンバルディという、かなり昔のアメフトのコーチによる発言なのだそうだ。まあ、こっちのほうが因果関係がクリアなので、文章としてはよりわかりやすい。

しかし、紙コップが言わんとすることにはもちろん大賛成である。価値ある知識は、学びの結果としてもたらされる。情報としての形式知は、経験を通じて個々の暗黙知に変換され知識となるからだ。単なる情報としての形式知の価値は、現代においては限りなくゼロに近くなってきている。つまりここでも、数多くのチャレンジによるほとんどの失敗と数少ない成功の体験を通じて学び、暗黙知を獲得することが、成長のための最善策なのである。

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Yesterday was a beta for tomorrow.
昨日という日は、明日のためのベータである。

うむ。ベータなんだから失敗してもいいんだよ、明日もっといいもの作ろう、ということか。これも発言主の記載なしだが、元ネタがありそうだと思い調べてみた。しかし先ほどとは逆に、それらしいものがありすぎてよくわからない。

そういえば、カーペンターズの曲 "Only Yesterday" の歌詞にも "Tomorrow maybe even brighter than today" というのがあった。曲の締め一歩前の大事な歌詞である。カーペンターズは時代を超えた名曲をたくさん生み出しているので、聞いたことがない人はぜひ聞いてみるべきである。単なるオールドファッションな、退屈なアメリカン ポップスではない。バラードにギターソロを初めて持ち込むなど先駆的な試みも多数ある。妹のカレンの天性の歌声に特徴づけられたバンドであるが、実は作曲や編曲を担当している兄のリチャードが天才なのである。そして、どうも話が膨らまないので、これでおしまいである。

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10 We code
20 We ship
30 We learn
40 GOTO 10

ううむ、文章じゃない。これの元ネタは論語なのだろうか。「子曰く、吾十五にして学に志す」というやつだ。だったらアジア系の人にしてもよさそうなものだが、謎の栗まんじゅうである。ひょっとしたらこういう言い回しが西洋文化のどこかにもあるのかもしれない。いずれにせよ、10代でコーディングをし、20代で製品として出荷し、30代で学び、40代で初心に返るということのようだ。行番号つき、行末に記号なし、GOTO 文ということは、BASIC 構文だろう。10代で PC-9801F に標準搭載の N88-BASIC でコーディングをし、20代で CRM や分析系のアプリを開発したところまではいいが、20代後半で Developer を引退してしまった当方は、この路線からはとうに脱落している。

しかし、40代にして初心に返ることが「できる」ことの大切さは身につまされている。特にこの業界、変化が激しいがゆえに、これまでの経験がむしろイノベーションの阻害要因となることすらある。その一方、目の前の問題を解決するには経験が役立つことが多いのは事実なので、つい目の前の問題に汲々としてしまい、初心に返ることが難しくなるのだ。

初心に返るためには、ある程度現在を学びきっていなければならない。努力を続けた者が初心に返るから強いのであって、流されるまま初心に返ったら、それはもうただの初心者なのである。様々なチャレンジを繰り返し、その結果として何が得られたのか、何が得られなかったのかを学習、それを長期的に積み上げていかないと、視野が広がらない。40代になって初心者はさすがにまずいので、当方も心しておこう。

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これで最後の紙コップなのだが、格言が一つたりとも書いていない。アイコンがいっぱいちりばめられているのだが、半分ぐらいはなんだかよくわからないのである。

ちなみに真ん中上に写っているアイコンの中の絵だが、"Ninja Cat" という。Windows 10 Launch のときに登場したのだが、Windows の開発チームのメンバーが勝手に作ったものを面白がってステッカーにして、社員だけでノート PC の背面に貼っていたそうなのだが、それを見た外部の人がほしがり、今や Microsoft Store などで販売しているものである。

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この特に服を着ているわけでもない猫を忍者と呼ぶための要素は、長く赤いハチマキぐらいしかないはずなのだが、そんなものをつけている忍者は、忍者赤影か、大江戸操作網の流れ星おりんぐらいであろう。せめて背中に刀ぐらいは背負ってほしかったのである。そもそもなぜユニコーンなのか、そしてなぜユニコーンが鼻から火を噴いているのかも分からない。そもそも忍者が馬に乗る時点で違和感満載だし、なんだかめちゃくちゃである。まあ、本人もまさかこんなことになると思って作ったわけではないだろうから、仕方ない。許してやろう。

それはともかく、たぶん一昔前ならこのステッカーは許されなかったはずだ。そもそもロゴやブランドの利用規定上も引っかかりそうだし、こんなわけのわからないものを販売しようという話にはならなかっただろう。このあたりも、ここ数年の会社の変化の表れなのだと思われる。楽しくやろうぜ、というのは、前向きにチャレンジを続けるうえでの一つの大切な要素なのである。

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ちなみに、Building 9 のキッチンにはこんなスタバの機械が置いてある。たいてい普通のコーヒーとデカフェ、ココアが選べる。いつもついついここでコーヒーを入れてしまうので、最近カフェイン過多である。夏時間に変わったことで日本との Call の時間も 1 時間遅くなるし、もうちょっと体には注意せねばなるまい。

@hirokome on Twitter

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