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Redmond 生活:紙コップ格言

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さて引き続き米国本社にてインターンシップ中の当方なのだが、今回はオフィスのキッチンに備え付けの「紙コップ」の話である。Building 9 探訪の回で紹介した通り、キッチンと呼ばれるスペースには、冷蔵庫に山盛りの毒ジュースとともに、給湯器や、ティーバッグや、スターバックスの豆をグラインドから抽出まで自動でやってくれる機械などが置いてある。そこに備え付けられている紙コップが、いままでは白地に会社のロゴが入ったシンプルなものだったのだが、このたびそれがリニューアル。多色展開で、それぞれに含蓄のある言葉と、その言葉の主の似顔絵が書いてあるのである。いわばペットボトル川柳ならぬ「紙コップ格言」だ。ここからは全部で 10 種類ある紙コップのそれを、順に紹介していこう。出前一丁の食レポから一転、きわめて哲学的に攻めてみるのだ!

cup_2.jpgI have no special talent. I am only passionately curious
私には特別な才能は有りません。ただ情熱的に好奇心旺盛なだけです。

トップバッターは、アインシュタインの言である。それにしても、似顔絵が全然似ていない。文字なしだったら絶対気づかないだろう。もうちょっと頭頂部の髪のボリュームを減らして舌でも出してくれたらわかるかもしれない。このままじゃアインシュタインというより、むしろポンデライオンである。

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そしてよく見たら GEEK T-シャツを着ているのだが、2 個目の E が 2 乗なのは、E=mc2 にかけたのだろう。GEEK は技術オタクのことを指すので、格言の示す意味とは通じるものがある。

それはそれとして、うむ。確かに Curiosity は、この業界においては不可欠な要素なのである。既存プロセス自動化のための IT 化は一巡。ようやく、IT でしか実現できない新しい価値が生みだされつつある。ここからは前例がない世界。経験に基づく ○× 判定は役に立たなくなっていく。先陣を切って世界を切り開きたいなら、不確かな中長期目標に向かって、あらゆる手を尽くしながらも、ブレずに論理的に進んみ突破していくための「集中力」が大事なのだ。

そのような集中力はたいていの場合、その物に対する思いや好奇心から生まれてくるのである。なぜなら、ごく当たり前に、人は嫌いなものには集中できないし、嫌いな仕事は「がまん」してこなすしかない。好きなものには自然と集中できるし、好きな仕事では苦痛など感じずに「がんばる」ことができるはずだ。

がまんは我が国の戦後の伝統的な美徳の一つだが、イノベーションの阻害要因である。単なるがまんは、無論つらく大変なことだが、しかし一番安易な道だ。みんながそうだから、やれと言われたから、仕方ないと諦めればいい。ビジョンに向けて試行錯誤を繰り返すのとは価値が違うのだ。「がまん」することと「がんばる」ことは同義ではないことを、我々はもっと理解すべきなのである。

cup_5.jpgIf you're not prepared to be wrong, you'll never come up with anything original.
間違えることを恐れていては、独創的なものを思いつくことはできない。

ケン ロビンソンの言葉である。イギリス人で Sir の称号を持つ、能力開発系分野の現役著名人で、TED カンファレンスでの彼の "Do schools kill creativity?" はとても有名なセッションだ。この Quote はそのセッションの中で語られたものである。しかし、イギリスの教育ですら子供の創造性をなくしているというならば、日本はそもそもお話にならない気がしてくる。

我々日本人が、相対的に、間違いを恐れる傾向にあるのはよく言われる話である。まさに教育のせいかもしれない。そして元株屋である当方は、これは、我々が総じてリスクの本質を受け入れられていないことに起因すると考えている。

株式投資経験がある方なら、「ボラティリティ」という単語を聞いたことがあるだろう。これは、特定銘柄の時価の振れ幅のことを指す。「高ボラティリティ銘柄」とは短期的に価格の上下の振れ幅が激しいく、ゆえに「ハイリスクハイリターン」であると言われる。話が長くなるので詳細は端折るが、つまり、金融市場における「リスク」と「リターン」は単なる裏表に過ぎず、同じものを指しているのである。よって、「ローリスクハイリターン」投資などという都合のいいものは存在しない。仮にそのようなものが存在した場合、金はそちらに流れ、価格が高くなり、結局収益率が下がるからである。そしてこれは、最も非情でシステマチックな金融市場で顕著に現れはするものの、すべての分野で通じる大原則でもある。

すなわち、高い価値を得ようとすれば、その分のリスクを踏む以外に選択肢はないのだ。我々がすべきことは「リスクを回避する」のではなく「リスクをとる」ことなのである。さらには、リスクが現実化したときにどう対処すべきかを事前に決めておき、それ以上の損失拡大を防ぐことである。

よって、間違いの損失を最小化して独創性を高めるのが、個人がとるべき基本戦略である。一見大きく見えるリスクも、分解してポートフォリオ化し小さなチャレンジをスピーディに繰り返せば、損失の最小化と軌道修正が容易だろう。分解できないリスクは、マイルストーンと撤退戦略を先に決めておく。つまり、日常的にリスク テイクの意識を持つことがとても重要なのである。

cup_6.jpgYou can't use up creativity. The more you use, the more you have.
創造性を使い切ることはできない。使えば使うほど、豊かになるからだ。

マヤ アンジェロウの言葉である。恥ずかしながら存じ上げなかったが、アメリカの作家であり、マーティン ルーサー キング ジュニアとともに公民権運動に参加した活動家でもあるとのことである。生い立ちはかなり厳しい環境だったようだが、その逆境を乗り越えて多彩な才能を発揮した。2014 年に亡くなった際には、追悼記念切手が発行されるぐらい、多くの尊敬を集めた人物である。

恵まれない環境から上り詰めたマヤは、きっといろんなチャレンジを繰り返してきたのだろう。そんなマヤが、創意工夫を繰り返せば、どんどんその能力が高まるというのである。この言葉は非常に重い。

それをどんなふうに成し遂げてきたか、マヤの他の言葉を見るとよくわかる。以下 BuzzFeed に掲載の記事からの一部抜粋である。

If you don't like something, change it. If you can't change it, change your attitude about it.
気に入らないことがあるのなら、変えればいい。もしそれを変えられないのなら、それに対するあなたの態度のほうを変えればいい。

You may not control all the events that happen to you, but you can decide not to be reduced by them.
あなたの身に起こることすべてをコントロールすることはできないかもしれないが、その出来事に自分が屈服しないことを決意することはできる。

この 2 つは一見すると相反することを言っていそうだが、決してそうではない。スティーブン コヴィーの 7 つの習慣にも見られるように、これらは自己コントロールを成し遂げるための、重要な視点なのである。決してあきらめているわけでも、流されているわけでもない。ほとんどのケースでは、コントロール可能なのは唯一自分自身のみなのであり、それをもって、こちらから周囲に対して影響を与え、最終的に自分の目的を達成するという、インサイドアウトのアプローチなのである。この視点を維持できる人は、常に前向きに物事に取り組み、変化を楽しみ、かつブレることがない。逆に、この視点を持てない人は、問題を自分以外のもののせいにし、常に後ろ向きで目前の問題のみにこだわり、手段が目的化するためにブレまくるのだ。

自分をコントロールすることができれば、常に前向きに物事に取り組むことができ、創造性の発揮を継続できるようになり、その能力がどんどん成長していく、ということなのである。

さて、ここまで 3 コップ分しか進んでいないのだが、今回はここまでにしておく。意識高い系ネタはとても疲れるのである。

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当方のオフィスの窓から見える Redmond Campus の桜の木々は、ここにきて満開を迎えている。どうやら例年より早く気温も上がってきたようだし、いよいよ春の到来である。冬のシアトル近郊特有の、陰鬱とした空模様も減ってくるのではないだろうか。毎週末ずっと雨で部屋に閉じこもりがちだったので、そろそろ公園なり森なりワイナリーなりに出動しよう。

@hirokome on Twitter

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