仕事を楽しく未来を明るく:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS)

仕事を楽しく未来を明るく

ビジネスを創る変える人たちと。ブックレビューと生活雑感をシェアしたい

IT市場に関連して事業開発をする人向けに、アイデア出しや戦略検討において役に立ちそうな参考図書を紹介する。

選んだのは昨今の潮流を考えさせてくれる情報が詰まっており、ブレストや議論のネタとして面白いと思われた、事例ベースのビジネス書だ。ノウハウ紹介を中心としたいわゆるノウハウ本はアイデアの探索や構想に直接利かないのでここでは選んでいない。

お勧めは社内でこうした本を課題図書にした勉強会を開くこと。本を情報源とし、「先生がいない」状況で自ら問いを発し、自らアウトプットする勉強会ができれば、探索力や構想力の鍛錬に効果的だ。

とりあえず各本について、勉強会を想定し、問いの一例を挙げてみた。レベルは3段階の難易度を示しており、☆★★(易)、☆☆★(中)、☆☆☆(難)とした。

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小倉昌男 経営学
小倉昌男(著)

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小倉昌男氏は「クロネコヤマトの宅急便」を創業された方。既に亡くなられているが、ヤマト運輸の経営者としてこれを書かれた。かなり古い話になるがその宅急便が生まれたのは1976年。1976年はアップルコンピュータが創業した年でもあり、IT産業が産声を上げた頃といえる。

小倉氏は宅急便を始めたとき、周りの役員は反対したが、配送より集荷に力を入れた。集荷は営業だからだ。酒屋やコンビニを集荷の拠点網として作り上げようとした。それでも悲しいかな初日の集荷数は2個だったという。

ポイントはこの当時、運送サービスという形の無いサービスをパッケージ化してスケールを追求しようとしたことだ。つまりサービスのモデル化を図ったという点で画期的だ。この当時はまだビジネスモデルという言葉は無かったが、宅急便はその原点とも言える事例だろう。

とにかく小倉氏がまとめた「商品開発要綱」は感動的だ。これはビジネスをモデル化する要件を非常にシンプルにまとめている。小倉氏がいわゆるたたき上げの経営者には無い洗練された表現者の一面を持ち合わせていることを強く感じる。

ビジネスモデルを開発しようとしている人には、本書が温故知新の出会いになるだろう。

【問い】 サービスをモデル化するというのは 市場にとってどんな意味があるのか。 経営にとってどんな意味があるのか (レベル☆★★)

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フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略
クリス・アンダーソン(著)、小林弘人(監修)、高橋則明(翻訳)

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この真っ青な表紙に目を奪われた方も多いだろう。3年ほど前の刊行で、書店に平積みされていたときの印象を今でもよく憶えている。

「情報はタダになりたがる」というフレーズは、その頃起き始めていた無料化をなんとか見過ごそうとしていた人には大きな一撃になった。そう、フリーは二流三流の会社が藪から棒に始める印象が強かった。フリーは傍流がやることで主流派がやることではない、というのが当時の風潮。

著者のクリス・アンダーソン氏はフリーを新しい価格理論として、あるいは新しいビジネスモデル論として提唱した。フリーを脅威として捉えるのではなく、積極的に機会として捉えるべきだと。

しかし経営的には脅威を機会としてとらえ直すというのは実に難しい。逆風を順風と思うには自らの立ち位置を変えなくてはならないからだ。多くのSI事業者がクラウドを機会と思い切れない事情とよく重なる。

本書はフリーのビジネスモデルを4パターンに分類整理している。その中には「フリーミアム」モデルや広告モデルも入っている。フリーを戦略としてとらえ直す検討をするときは、この4パターンが選択肢を増やしてくれるだろう。

【問い】 フリーのビジネスモデルの4パターンを分かりやすく描き直せないか。 4パターンに通底する要件を3つ挙げてみる (レベル☆★★)

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600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス
上阪徹(著)

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クックパッドは女性にはおなじみの方も多いだろう。料理レシピサイトだ。「600万人の・・・」とあるが、現在会員数は1000万人を超えている。またレシピ件数は120万点を超えている。

クックパッドの創業は1998年。創業した頃はお金が無く、集客が増えてもサーバー増設ができないので、検索サイトで上位ランクにならないよう工夫をしたという。これを読み、「フリー」のビジネスモデルが収益を確立するまでの経営者の葛藤がまざまざと感じられた。

私はこの点でもクックパッドが広告モデルに依存しきらずビジネスモデルを発展させてきたことに共感する。「フリーミアム」でも稼いでいるからだ。

この葛藤はフェイスブックの葛藤にも通じるものがある。広告ビジネスは消極的選択だったのだ。手っ取り早い選択肢であって長く続く選択肢ではない。フェイスブックは広告ビジネスに依存しているグーグルのようには成りたくないにちがいない。私の妄想だが、広告モデルに依存しすぎることは、経営者の良心を曇らせる原因を孕んでいると感じるからだ。━━ある意味、クックパッドのビジネスモデルはフェイスブックにとって、いずれベンチマークになるのではないか。

クックパッドは「料理を楽しみにすることで心からの笑顔を増やしたい」という理念を掲げている。フェイスブックは「人々の生活の質、とりわけ社会的生活の質をよくしたい」といった理念をもっている。両者の理念にもまた共通したものを感じるが、これらの理念を実現した暁には、もっともっとフリーミアムへのシフトが進んでいるのではないか。

【問い】 「収入のないビジネスモデル」なのに成長が強く期待される(周囲が放っておかない)ためにはどうすればいいか (レベル☆★★)

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ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる
ピーター・ドラッカー(著)、上田惇生(翻訳)

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ドラッカーは読んだことがあるだろうか。自身の将来につながる価値観や未来観を磨く上でドラッカーは最低読んでおいたほうがいい。ドラッカー氏は経済学者だが、未来学者とも社会形態学者とも呼ばれたように、非常に長期スパンでものを見ていた人。

本書は2002年刊行と既に10年前のものとなるが、決して古びていない。ネクスト・ソサエティとは文字通り、「未来社会」だ。ドラッカーは経済よりも社会を大事に考えろと警鐘している。われわれビジネスパーソンはついつい経済の動きばかりを追いかけてしまうが、社会の変化に気付かないと大きな変化を見失うという警鐘である。

例えばグーテンベルクが起こした印刷革命は産業革命につながっているという。印刷革命は1450年代に起き、産業革命は1770年代。この300年あまりの間に次々と社会革命が起きている。聖書の大量印刷、宗教戦争、国家による軍隊の組織化(印刷物が組織化を容易にしたのはいうまでもない)、文学の大衆化などがそうだ。

ドラッカーはまたIT革命を重視している。IT革命が印刷革命が社会革命を起こしたのと同じように、これから様々な社会革命を引き起こすだろうということが予感される。本書はIT産業に関わる者にとって視点を一段も二段も高く引き上げてくれるだろう。

【問い】 例えば10年後(50年後)、自分たちはどんな働き方をするようになっているか。そこではどんな強みが求められ、そこに近づくためには何から始めたらいいのか (レベル☆☆★)

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ゲーミフィケーション ― <ゲーム>がビジネスを変える
井上明人(著)

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ゲーミフィケーションとはコンピュータゲームに使われてきた様々なノウハウを実社会の活動に応用することを言う。本書を読みながら、何がゲーミフィケーションで何がゲーミフィケーションではないのかを考えるといい。きっとゲーミフィケーションの要件が浮かび上がってくるはずだ。

例えばポイント制はゲーミフィケーションか?答はNo。お金やお金に準じたインセンティブは外発的動機とされ、ゲーミフィケーションの趣旨から外れる。ゲーミフィケーションは基本的に内発的動機に働きかけて、参加者にゲームに参加するようし向けなくてはならない。

この点で、マーケッターやビジネスモデラーたちがゲーミフィケーションに大きな注目をしているのだ。

ゲーミフィケーションには、参加者をゲームに埋没させるあるいは依存させてしまうとの批判も一部にあり、どんなビジネスにも受け容れられるとは考えにくいだろう。だが、ゲーミフィケーションが市場にもたらす潜在的可能性はとても大きい。

口悪い言い方になるが「供給側にとって都合のよい消費行動を起こさせる」にはゲーミフィケーションが向いている。あるいは商品のライフサイクルを加速させる(短くさせる)上でも、ゲーミフィケーションは多いに役にたつだろう。

今後、様々な市場が消費者起点で再構築されるようになると思うのだが、ゲーミフィケーションは供給側が消費者心理を操作しうる、非常に強力な影響要因として残り続けると思う。

【問い】 ゲーミフィケーションによって○○市場の構造(ユーザー、商品)はどう変わるか。○○の例として「教育」「観光」「アウトソーシングサービス」「出版」「農業」などなんでも (レベル☆☆★)

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スペンド・シフト ― <希望>をもたらす消費
ジョン・ガーズマ(著)、マイケル・ダントニオ(著)、有賀裕子(翻訳)

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アメリカ人の消費行動がリーマンショックのあった2008年ぐらいから変化してきていると言う。著者の一人、ジョン・ガーズマ氏は、ヤング&ルビカムという大手広告代理店でチーフ・インサイト・オフィサーを務めている。電通みたいな会社の調査研究部門のトップだと思えばいい。それ故に、データオリエンテッドなアプローチは説得力がある。

スペンド・シフトとは文字通り、消費行動の変化。アメリカ人たちが節度を重んじるようになり、効率を意識するようになったという。また連帯感を気にするようになり、ローカルな消費が増えたという。また生産プロセスにも関心を払うようにもなってきた。

このことは、とくに生産財を売っている会社、B2Bの商材を売っている会社にとっても着目すべきだろう。消費者が生産プロセスに関心を持つようになってきたというのだ。日本でも少し前から部品メーカーがCMを打つようになってきている。始めは妙だと思ったものだが。最近は工場見学が流行るようになってきている。建設現場を見せるゼネコンや住宅メーカーも増えた。

【問い】 ネットが加速してきたグローバル化や効率化の動きを否定せず、「スペンド・シフト」が進むと日本などの先進国の経済活動はどんな姿になっていくか (レベル☆☆☆)

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アップル、アマゾン、グーグルの競争戦略
雨宮寛二 (著)

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アップル、アマゾン、グーグルといえば誰でも知っている超有名企業で、現代のIT産業のメーンストリームを成している企業だ。トヨタには世話になっていなくてもこの3社のいずれにも世話になっている方は多いのではないか。

IT産業のメーンストリームの構成を知るという意味でも本書はたっぷり情報を与えてくれるだろう。アップルはどんな会社?アマゾンは?などと改めて考えてみるいい機会だ。

例えばアップルはデザイン性にすぐれ体験的価値を訴求するのが上手い。

アマゾンといえばロングテール。ロングテールな商材にリーチすることや、あるいは流通革命を起こしたという点でリアル世界にリーチするという点はすごい。

グーグルはどちらかといえば技術力、データベース力に秀で、この点でアップルが右脳訴求なのと対極的で左脳訴求なイメージがある。

あるいはネットワーク外部性に関して3社はどうだろう。これには創出する立場と便乗する立場とがあると思うが、グーグルと他の2社の立場は違って見える。

この3社を分析し、また統合的な観点からIT産業を見直してみると、何が実現され、何が未実現なのかがいろいろ見えてくるはずだ。本書はIT産業の未来を描くに有益なケーススタディの書になるだろう。

ちなみにフェイスブックのようなSNS市場も安直に考えられそうだが、これから実現される市場はまだ他にも沢山残っているはずだ。SNSも一つの市場セグメントにすぎない。大事なのはセグメントを切る大きな方向性を見いだすことだ。

【問い】 IT産業には、この3社のドメインと棲み分けられる、どんな未実現のドメインが残されているか (レベル☆☆☆)

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勉強会をぜひ

参考までに勉強会の企画イメージを載せておく。勉強会を定例化できればアイデアの探索力、構想力を養う上でこの上ない。もともと企画に向いた人はそういないが、向いた人は自ら名乗り出てくる。誘い過ぎるのは禁物。集客の難しいことを憂う無かれ。自主的に企画すること、自主的に参加することがポイントだ。

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以下は留意点。

●運用上の留意点

【“批評しない”というルール】 勉強会では他者の意見に対して、かつ書籍の内容に対しても、批評的な立場を取らないよう、ルールとして徹底したい。理由の一つは、短時間の勉強会の中で正誤の検証が難しいため。もう一つは、意見を否定するより深掘りしたり発展させるほうが、生産的な雰囲気が醸成されるため。

●参加者・募集方法

参加者は自発的な動機で集まった人たちで構成するようにしたい。告知や勧誘は必要だが、参加を命令したり特別待遇したりしないようにする。「(上司から命令されたので)仕方なく参加した」「(お願いされたから)参加してあげた」「(大人しくしているので)教えて下さい」は、雰囲気にマイナスになる。・・・かなりマイナスになる。

募集するときは、できれば毎回、テーマをベースに参加者を集めたい。参加者は本来、流動的でかまわない。いつも決まった参加者で構成するよりも、毎回新しい参加者が含まれるほうが開放的な交流が進む。

勉強会の中では、組織や年功の上下関係が意識されないようにしたい。水平的な意見交換を通じて、自由な発想が刺激されるため。この勉強会が、外部研修ではなく同じ社内で行われることから、とくに要注意と思われる。

●その他

勉強会の後に懇親会を続けて行うのも効果的。勉強会でホットになるので余熱は懇親会で発散したいだろう。懇親会だけだと息抜きにしかならないが、勉強会の続きで行われることで、より発展した意見交換が進むことがある。

以上

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最近、実社会へのゲームの浸透がめざましい。ゲームがオンラインで携帯に提供されるようになったことをはじめ、SNS上でもゲームが広く楽しまれるようになった。

それだけではない。ゲームの面白さの要素が、日常生活の、例えば歩くことや、体重を量ること、あるいは選挙活動に参加するといったことなどにも、入り込んできた。この動きは「ゲーミフィケーション」と呼ばれ、参加者の関与を引き出す方法論としてビジネスの世界でも注目されるようになってきている。

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ゲーミフィケーション ― <ゲーム>がビジネスを変える
井上明人(著)、NHK出版から

著者の井上氏によれば、「ゲーミフィケーションとは、(狭義には)コンピュータ・ゲームのなかで特徴的に培われてきたノウハウを現実の社会活動に応用する行為のこと」である。ここに「狭義には」とあるように、解釈のしかた次第で昔から存在している多くのものまでゲーミフィケーションに思えてしまうので注意が必要だ。

例えばポイント制はゲーミフィケーションか? これはゲーミフィケーションではない。金銭や金銭に準じた報酬をポイントとして受け取れるしくみは、外発的動機を刺激する。主たる動機が外発的動機に終始してしまう(内発的動機に転じていかない)ものは、ゲーミフィケーションではない。──つまり、ゲーミフィケーションには外部から何らかのしくみを提供しつつも、参加者が内発的動機を刺激されて参加し続けるようになるような設計要素が必要だということだ。

こうして考えていくと、ゲーミフィケーションは、商品やサービスの利用者を増やしたり利用を継続してもらうための巧妙な、ある意味安価な仕掛けを入れる概念だということが見えてくる。この概念を拡張すれば、どんな商品・サービスにも、あるいは企業内で行われているどんな仕事にも、ゲーミフィケーションの考え方を取り入れる可能性があるのではないかと思えてくる。

ユーザーの“物語”や“体験的価値”の重要性を訴えてきたマーケターにとってゲーミフィケーションは有効な解決方法になるだろう。また見方を変えれば、組織の管理者や人事担当者にとっても、社員のインセンティブや報酬の新しい提供手段として、ゲーミフィケーションは注目されるようになるだろう。

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本書は併せて人間側の、ゲーミフィケーションの適応限界についても論点を投じてくれている。かつて社会問題としても取り上げられた“ゲーム脳”のように、ゲームに興じ続けるあまり、社会生活全般への適応が阻害されてしまう現象だ。

こうしたゲーム脳や或いはゲーム依存症の問題は、ゲーミフィケーションの設計のあるべき指針のようなものを深く考えさせてくれる。つまり利用者がサービスに夢中になり過ぎてサービスに支配されてしまったかのようになることは「果たしてゲーミフィケーションとして成功したといえるのかどうか」である。──過剰適応のリスクは利用者側にだけでなく、サービス提供側にもいずれ何らかの形でふりかかるのではないかと思うからだ。

割と古くから知られた事業リスクの一つ「過剰適応による破綻」は、これまでは原因も結果も事業者側で完結した問題としてとらえられてきたが、どうやらそうではなさそうになってきた。過剰適応の震源が市場側に存在するという点で、ゲーミフィケーションは事業のリスク管理に新しい懸念材料を持ち込もうとしているように思われる。

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今ネットの世界で起きている面白い動きの一つに「リアルとの融合」がある。いわば

リアル×ネット (リアルのネット化)

である。これはこれからの新ビジネスを考える上でとても重要なファクターになってきている。反対側から見ても、つまりリアルから見ても大きな可能性がある。しかしリアルという言葉は巷で聞き慣れすぎているので意味が上滑りしないようにしたい。リアルとは実世界(real world)のことでアナログなままの世界が広く広がっている。

ここではどんなリアルのものがネットに引き寄せられつつあるのか思いつくままに観点を示したい。一つ一つは何ら新味はないのだが、リアル起点でものを見直すと新しい可能性が見えてくるかもしれないので列挙してみた。挙げたデータは何らか傍証になるかもしれないとネットから拾ってきたものばかりなので、あくまで仮説メモとして捉えて頂ければ嬉しい。

例1.社会×ネット (社会のネット化)

リアル=実世界のまさに一例だと思うのは「社会(ソーシャル)」。上の公式に当てはめると社会×ネット。何のことはない、ご存じのとおり人と人をつなぐソーシャルネットワークがめざましく普及してきたということだ。日本でも、フェイスブックのアクティブユーザーは800万人になった。実名性だから文字通り、仮想社会ではなく実社会を築いているというのは大きい。──リンデンラボ社が築こうとした仮想社会「セカンドライフ」が盛り上がりきれなかったことや、ミクシィが匿名を許してきたのとは対照的にフェイスブックが実名を強いても会員を急拡大できたことの意味を捉え直したいところだ。

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図 日本におけるフェイスブックのアクティブ・ユーザー数の推移 (socialbakers.com から)

人は社会的動物なので、この観点で可能性を拡張してみると、人間以外の社会的動物もSNSのユーザーになる可能性を潜在的に持っている。例えば犬や猿など。ソフトバンクの「お父さん」の出てくるコマーシャルはいつ見ても面白い。

例2.場所×ネット (場所のネット化)

それから場所もリアルの立派な一例だ。具体的な現象としては、GPSがついている端末が既にかなり普及している。これは少し前のデータだが、2011年末には携帯電話におけるGPS装着率が80%を超えるだろうという予測がなされていた。

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図 携帯電話におけるGPSの装着率(世界データ) (IHS iSuppli Market Researchから)

GPSとは地球上の絶対的位置を知らせるセンサー。センサーなら他にも温度計、体重計、距離計などもあるが、GPSは特別だ。緯度・経度で表される(35.587239 , 139.728577 )という数字は、体重70kgという数字とは、意味の質が大きく違っている。数字自体が何を指しているのか明確なのだ。今後もいろんなセンサー情報が増えてくると思うが、GPS情報とセットになった情報とそうでない情報の重みは大きく違うはずだ。

例3.インフラ×ネット (インフラのネット化)

リアルの選び方をちょっと変えてみるとインフラもリアルの一つだと想起される。インフラとは水道や道路など、人間が作った生活や仕事の基盤になるものだ。実はこうしたインフラは過去の蓄積があるので、リスクも累積している。40年とか50年といった寿命があるからだ。高度成長期に作ったインフラはそろそろ強度がやばくなってきているので、更新しなければいけない。今の時期はまだ更新投資が5兆円程度で済んでいるが、10年後にはいっきに倍の10兆円ぐらいになる。

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図 今後の維持・更新費の予測「社会資本15分野」 ( (財)建設経済研究所から)

インフラはこれこそカネの塊みたいなもので、パソコンやサーバーなんかよりも遙かにカネをかけて作っている。維持するにしても、建て替えするにしても、今後投資する対象はライフサイクルに渡ってのリスクを低減することが大きな課題になる。かつそれを限られた予算でやらないといけないというジレンマもある。だから管理の仕方を変えないといけない。インフラに、管理のためのネットワークを装備するのはもはや必然の方向になるだろう。

例4.ビジネス×ネット (ビジネスのネット化)

リアルの選び方としては拡大解釈かもしれないが、ビジネス活動もリアルの例といっていい。

現状ネット化が進んでいるのは、サプライチェーンの垂直な流れにそった一部の商取引がほとんどで、基本的には供給側から商材を押し流す流路を効率化しているに過ぎない。これを消費者都合に立って描き直してみれば、それと同じ流路を遡るような絵には絶対ならない。求められるのは、端的にいえば利用シーンに沿った商材の組合せを実現することで、必然的に同業者間のコラボ、異業種間のコラボが求められる。ようは競合する商材を集約せよ、補完関係にある商材をセットにせよ、という要求だ。

事業者間のコラボは大局的にはとても有意義なことだが、実際に進めようとすると一つ一つの事業者が利害を気にしすぎてコラボがなかなか進まない。だから現状は、賢い消費者が頭の中で同業者の商材を比較対照し、異業種の商材を掛け合わせて自分の買い物を果たすようにしている。事業者間の摩擦や交渉ごとなどの代償が大きすぎると分かっているので連携して供給してくれとまでは言ってこない。

しかし事業者間コラボは潜在需要を発掘する試みとして始まってきている。なんと言っても付加価値が大きいからだ。下の調査にもあるように、 事業連携を行う動機として、「新商品開発力・製品企画力・技術開発力の向上」「販路の拡大、市場開拓能力の拡大」「売上・付加価値の拡大」などが上位に来ている。

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図 事業連携に期待する効果 ~事業連携により高付加価値化を期待している企業は多い~ (中小企業庁から)

少し話を飛躍させるが、現状は事業者側が自分らの都合で商材をコーディネートしているレベルにしか見えないが、消費者側のイニシアチブでコーディネートすることが普通になったら付加価値の厚みはさらに大きくなるのではないか。競争が事業者間から消費者間に移るからだ。良い物を作っても売れない時代は終わり、良い物しか作れない時代になる。

実世界の有限性を知覚するための「リアルのネット化」

さてさて、昨年あたりは「シェア」がキーワードになった。経済の不調や度重なる悲劇もあって、限られた資源を分かち合う精神としてシェアが台頭してきたのは言うまでもない。

だが他方でシェアをやりすぎると経済が「シュリンク」するじゃないかという心配も出てきた。私自身はシュリンクは現に起きているように避けられないし、避けるべきではないと思っている。恐らく「短期的にはシュリンクするけど長期的にはまた大きくなる」が正解じゃないだろうか。苦し紛れに幸福度のような指数を混ぜなくても、純粋に経済指数だけでもそれは言えるのではないか。

そう思う大きな理由がリアルの有限性にある。実世界では資源が限られているということや、同じ人間は一人しかいないということだ。有限であることが知覚できるためには、実世界における全ての部分を特定できることが必要で、これから起きる「リアルのネット化」がまさにそれを助けてくれるだろう。

同時にここが大切なところだが、全ての部分を特定できるようになることは、価値の組合せを飛躍的に増やすことにつながるだろう。同じ過程で当然効率化も進むが、それ以上に付加価値の厚みが増すはずだ。私たちが知っている価値の組合せより知らない価値の組合せのほうが明らかに多いからだ。これが「(経済が)長期的には大きくなる」理由だ。

再び成長するためには一度縮まないといけない。よく聞くフレーズで、ジャンプするには一度屈まないといけないという理屈と同じだ。何だか当たり前な話になってきたが、こんなことをいちいち考えてしまうのも、私たちが屈むことを恐れすぎているからだ。確かに屈む行為は実に心情に反している。周囲からの圧力で押しつぶされてしまうかもしれないからだ。恐らく屈むのは一瞬にまとめたほうがいいのだろう。──経済の舵取りは、人が良いだけの人にはできないものだとつくづく思う。

hirose

インターネットが登場して約20年になるがこの間に大きく成長した世界的企業といえば、アップル、アマゾン、そしてグーグル。3社はいずれも私たちの仕事や生活に深く関わっている。

私自身も携帯はiPhoneを使い、書籍の大半はアマゾンから購入し、検索はとりあえずグーグルからするようにしている。トヨタが無くても今の生活はできそうだが、この3社抜きの生活は考えられない。

参考までに2010年の各社の売上と利益は以下の通り。アップルは90年代に売却が課題になるほど業績を悪化させたが、創業者スティーブジョブズ氏の復帰とともに劇的な復活を遂げた。アマゾンとグーグルはいずれも90年代が創業で、創業当時は収益が不安視されていたが、めまぐるしい勢いで事業を拡大してきた。

売上 利益
アップル 5.2兆円 1.1兆円
アマゾン 2.7兆円 900億円
グーグル 2.3兆円 0.7兆円

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アップル、アマゾン、グーグルの競争戦略
雨宮寛二 (著) 、NTT出版から

本書はそんなこの3社が成長した要因を明かしてくれている。3社それぞれの経営理念と事業戦略がケーススタディとして詳しく整理されており、1冊で知ることができるので効率が良い。また3社はドメインの違う会社なので、IT業界のこれまでのメインストリームを総括する点でも大変参考になる。

著者の言葉を要約すると3社の偉業はこんな具合になろう。

  • アップルは、機能性や操作性、デザイン性に優れた製品を開発し、価格競争から一線を画した経験価値を生み出してきた。
  • アマゾンは、リアルとネットを上手く補完させながら、人々の情報の流通やアクセスに革命をもたらした。
  • グーグルは、インターネットを熟知し、高度な技術を駆使してスケーラブルな情報基盤を創造した。

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飛躍を恐れず言えば、この3社のドメインを再構成すれば、世界にとってこれからのフロンティア(未踏)のビジネス・ドメインも見えてくるのではないか、という期待を感じてしまう。本書への最大の関心もそこにある。簡単に見えてくるものではなさそうだが、3社のドメインを棲み分けるようなポジショニング分析をしてみると何かヒントが得られるのではないか。

ちなみに雨宮氏は最終章(第6章)の「戦略比較と今後の方向性」において、3社のポジショニング分析を試行しているが、残念ながら未来のドメインを感じるような答が見えてこなかった。ここで掛け合わせられた軸は、「プラットフォーム戦略(オープンvsクローズド)」と「サービス提供戦略(クラウドvs非クラウド)」。どうも技術視点に偏りすぎたか。代案もなく言うのは恐縮だが、やはりここは顧客視点に立ち、価値に結びついた軸の組合せを試して見るのが良いように思われる。

アップルに出来てグーグルやアマゾンにできないことは何か? グーグルに出来てアップルやアマゾンに出来ないことは何か? アマゾンに出来てアップルやグーグルに出来ないことは何か? ──該当するものはいくらでもありそうだが、軸の言葉に汎化して言うのは案外難しい。答が見えてくる保障はないが、軸の組合せから未来のIT業界の方向性へのヒントぐらいは見えてくるのではないか。

言いっ放しで恐縮だが、自分としてはしばらく模索が続きそうだ。本書は3社の情報もよく整理されている。勉強会の題材にできないかも考えてみたい。

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社会の中心を担う企業が、あるいは私たちの居場所である企業組織というものが、今後どんな風に姿を変えていくのかを考えてみようと勉強会を企画したところ、知人からドラッカー氏の『ネクスト・ソサエティ』を紹介された。

刊行が2002年と既に10年も前の本になるが、ドラッカー氏が亡くなる(2005年)少し前ということで、かなり後のほうの著作になる。ドラッカー氏は経営学者として有名だが、未来学者とも社会生態学者とも呼ばれ、本書にはそれが表れているように思われる。

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ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる
P・F・ドラッカー (著) 、上田惇生(翻訳)

ドラッカー氏がネクスト・ソサエティ=未来社会というテーマを扱ったのは、90年代後半に登場したニューエコノミー論へのアンチテーゼでもある。ニューエコノミー論とは、ITとグローバリゼーションの進化が持続的な経済成長をもたらすという経済学説。しかしネットバブル崩壊とともにこの学説は終息してしまった。

ドラッカー氏がニューエコノミー論を退けたのは、ITやグローバリゼーションを過小評価したからではない。経済が生まれ変わる以前に社会が変わらないといけないと考えていたからだ。本書には、「ニューエコノミーよりもネクスト・ソサエティが先」あるいは「社会のほうが大事」という思いが込められている。

このように、ドラッカー氏がIT革命をこれから長く続く時代変化の端緒と考えていたことは間違いない。本書は、IT分野に関わって仕事をし続けようという人には、長期の視野を持つという意味でお勧めしたい。

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さて私たちは往々にして「ビッグデータが新しい市場を創る」「インターネットが農業生産を変える」などと言うことが口癖になってしまっているが、これは反省が必要だ。技術がまるで経済に直結するかのような短絡的な発想をしてしまっている。間違っているとか大げさだということではなく、とても大きなものを見落としているという点で、逆に矮小化してしまっているのだ。

そう、社会の変化を前提として見ていないのだ。悲しいかなビジネスパーソンには仕事の世界しか目に入らないのが現実だ。これは戦後復興以来続いてきた、経済第一の生き方がある意味にじみ出てしまっているとも思える。

IT革命は本当は社会の変化も考慮し、もっと長期の、もっと大がかりな変化に発展するものと考えないといけない。ドラッカー氏によれば、IT革命は印刷技術の発明や産業革命に匹敵するような大きな革命だというのだ。つまり非常に長いスパンで変化を考える必要がある。

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グーテンベルクが発明した印刷技術は国民国家を生んだと言われる。印刷技術は聖書の大量印刷を可能にし、これが宗教改革や宗教戦争をもたらした。また印刷技術のおかげで大衆が文学や演劇を楽しむようになった。また社会的機関として軍隊が組織化され、戦争が大規模に行われるようにもなった。そして軍隊の常設化は国民国家の登場にもつながっていったのだ。

ちなみにグーテンベルクの印刷技術の発明から第一次産業革命まで約300年かかった。この300年の間にこうしたさまざまな社会革命が起き、これが大量生産システムを必要とする社会の出現につながった。これがジェームズワットによる「蒸気機関の実用化」に始まる産業革命につながる土壌になった。

ドラッカー氏は、IT革命は、印刷革命が引き起こした社会革命やさらにその先の産業革命の入口になったように、同じように大きな社会革命・産業革命の入口になる可能性があると言っている。「ネクスト・ソサエティ」とはまさに社会革命にあたる。

(本書から引用)ネクスト・ソサエティは知識社会である。知識が中核の資源となり、知識労働者が中核の働き手となる。知識社会としてのネクスト・ソサエティには三つの特質がある。

第一に、知識は資金よりも容易に移動するがゆえに、いかなる境界もない社会となる。

第二に、万人に教育の機会が与えられるがゆえに、上方への移動が自由な社会となる。

第三に、万人が生産手段としての知識を手に入れ、しかも万人が勝てるわけではないがゆえに、成功と失敗の並存する社会となる。

これら三つの特質のゆえに、ネクスト・ソサエティは、組織にとっても1人ひとりの人間にとっても、高度に競争的な社会となる。

もちろんIT革命だけを原因とするような一元的解釈でネクスト・ソサエティは語れない。既に起きている現実として、少子高齢化の問題も大きい。少子高齢化は、労働市場をシニア中心、知識労働者中心にした構造に大きく変えていくだろう。

そして製造業に従事する人口も、担い手が新興国に移るので大きく減らざるを得ない。──そういえばエルピーダメモリが最近経営破綻した。これは日本の輸出型基幹産業の代表格だった半導体製造が国内で続けられなくなったことを決定的に示している。

企業などの組織の短命化が進み、これも労働市場に影響を与えるだろう。ドラッカー氏によれば「30年以上存続する企業はほとんど無くなる」とのこと。とくに知識労働者の場合は労働可能年限が、経営のうまくいっている企業の寿命を上回ることになるだろう。労働市場は産業別の構成を壊して多様化の方向に進んでいくことになるのだ。

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ネクスト・ソサエティを語るには、IT革命を入口にするにしても要因を複合的に絡めて考える必要があるので、今の常識的なフレームを外してものを見る覚悟が欲しい。

ドラッカー氏は、パラレルキャリア(第二の仕事)が普通になったり、NPOが企業に代わって社会問題を解決する中心組織になると予言している。またコミュニティの存在感が希薄だった都市部が濃厚なコミュニティを形成するようになるだろうということも言っている。既にその傾向が現れ始めているのかもしれないが、私たちにそこまでの実感はまだない。

本書はいわば未来社会への予言の書として10年も前に書かれたものだが、何十年あるいは百年単位の長さで未来社会を描くのなら、ポイントになる輪郭を多く残しており、決して古びていないように思われる。

以上


<ご参考>

勉強会は3/21開催の予定。
『2022―これから10年、活躍できる人の条件』を読んで、これから10年の組織変容を展望してみませんか? レポートなどは後日こちらに報告いたします。

知人とは浅井治さん。
「浅井の本棚」にて読まれた書籍が紹介されています。

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「先の見えない時代になった」とどこでも聞くようになった。

欧州経済の危機、円高と空洞化、雇用の悪化、、、とまあ、心配なことを上げればきりがないが、そんな出来事が「先が見えない」ことの背景にある。

しかし本音でシリアスにこの時代を捉えている人は少ないだろう。多くの人は「今まで無事にやってこられたから.」という自信がどこかにある。そういう人はそれでいいと思うし、ことさら不安がっても仕方がない。確かに昨年は震災やタイの洪水被害に見舞われたが急速にリカバリーしてきている(直近の日経予想では2012年度の上場企業の利益は前期比17%減になるとのこと)。

だが新興国が一生懸命がんばっているのに、自分たちが普通の努力しかしなければ沈んでいくのは自明だ。日本にいるというだけでこの先も同じような暮らしができるとは思えない。

そもそも長期に起きる脅威はリアリティを感じづらく、それ故に抗しがたいものがある。お店に行けば海外のものを普通に目にし、それは脅威どころか有り難いとさえ思っている。だから悲劇のシナリオをぶったところで共感されず、むしろ希望の計画を立てている人がこれからのリーダーになるのだろう。

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2022―これから10年、活躍できる人の条件
神田昌典(著)、 PHPビジネス新書

本書は経営コンサルタントの神田昌典さんが、今から10年先の2022年に起きる時代変化を踏まえた、キャリア論である。軽快なタッチで書かれているので、予測のロジックや精度の検証に気を取られすぎなければよいと思う。ある程度前提を信用して読めば、時代という絶対的な時間軸で展開されるキャリア論がとても面白い。

とくにお勧めなのは、30代──会社の中核人材として今のキャリアにますます厚みを持たせていこうとしている、加速モードに入ったビジネスパーソンたち。

それから40代──今までの自分を壊し、別の行き方を模索しようとしている、転換期に入ったビジネスパーソンたちにもお勧めだ。

##

「2024年、会社はなくなる?」

第4章はこんな脅しめいたタイトルになっている。同じような予想なら他でも聞いているという人は多いと思うが、実際に起きたら相当にシリアスな事態になるだろう。

しかし会社が無くなっても居場所が本当に無くなるわけではない。神田さんは会社に代わってNPO法人が新しい居場所になっていくという。ご周知のとおり、会社(株式会社)は営利組織で、NPOはNon Profit Organization、つまり非営利組織だ。神田さんはドラッカーが『ネクスト・ソサエティ』に書いた予測を借りてそう言っている。

≪第1段階≫ ~2015年 企業組織の混乱

≪第2段階≫ 2015年~ NPO時代の夜明け

≪第3段階≫ 2020年~ NPOによる産業化

社会が営利より非営利を選ぶようになる一番の理由は、今までは社会性と収益性は矛盾すると思われてきたが、これからは社会に良いことをしなければ会社を続けることが難しくなってきているからだ。だからといって会社が無くなるわけではない。信じたくない人は会社が非営利的に運営されるようになると思ってもくれたらいい。

NPOを作るというのはいわゆる社会起業家になるということだが、出現するパターンは、企業から事業がスピンオフする形態や、新事業として始める形態が多いだろう。社会経験の無い人がいきなり起業するというよりも、バリバリの経験を持った人が起業するというイメージだ。そういう人が被災地に行ってボランティアを束ねたり、過疎地にいって農業の再生を図ったりする。

初めのうちは小さな動きだろうが、優れた人たちから会社の外に出て行き、新事業の実績を残していくうちに、後に続く人が急に増えるポイントが訪れる。それが神田さんの予想する2020年代の「NPOによる産業化」のタイミングだ。

NPOが単体ではなく複合体として存在感を増し、磁石のように人を引きつけるようになるのには理由がある。既存の会社にいても創造的な経験を積めない、人材が育たないということが誰の目にも分かってくるからだ。

##

以下は、本書に基づいて組織変容のシナリオを展開図にしてみた。

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お節介になるかもしれないがが、自らのキャリア形成を時代変化に基づいて考えてみたい人は、まず組織変容の姿を時間軸で描いてみてはどうかと思う。

「その気はあるがリーダーシップの経験が無い」という人や、「スキルに自負があるが自分がリーダーになるイメージが持てない」という人は、自分の居る組織がどう変化するかをイメージしてみるのだ。このブログをじっくり読んでくれている人は、きっと慎重なタイプで周りがどう見ているかを気にするタイプだと思うからだ。

組織の変容を描くうえでカギになるのは「強み」、つまり組織にとって大事な強みは何か?だ。

強みとは、ヒト・モノ・カネなど有形の資源だったり、情報やプロセス、文化などの無形の資源だったりする。とくに後者はお金で買えず、簡単に備えづらいという意味で、大切にしたい資源だ。3段階で変化することを想定し、現在(第1段階)ところは埋めてみたが、第2段階、第3段階はどうだろうか?

結局は同じ結果につながるのだと思うが、それが「自分の居場所が変わる」ことの答だと思うのでぜひ。

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イノベーションを奨励している会社は多いと思うが、実践することは難しい。実践するにはコンピテンシー(能力)の問題が立ちはだかる。つまり「どうすればできるようになるのか?」という問題だ。

例えばアップルがiPodを出してポータブル音楽プレーヤー市場を席巻したことは有名だが、「どうやってiPodという製品を市場に出したか」を知ってもあまり参考にならない。アップルが成し遂げたイノベーションは、アップルだからこそ成し得たものであって、アップルという主語を抜きにした分析をしても意味がないということだ。

だからイノベーションの実践論においては「どうすれば(アップルのように)できるようになるのか?」が重要な問題となる。

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イノベーションのDNA ~破壊的イノベータの5つのスキル~
クレイトン・クリステンセン(著)、ジェフリー・ダイアー(著)、ハル・グレガーセン(著)、櫻井祐子(翻訳)

本書はイノベーションを「どうすればできるようになるのか?」という疑問に答えようとした本である。イノベーションをコンピテンシーとして扱い、それを実践書として展開している。──その点において、クリステンセン氏が以前に書いた『イノベーションのジレンマ』『イノベーションへの解』とは印象が違って見える。しかし総じて、イノベーティブな会社をめざした能力開発や組織作りを託されている人には非常にヒントが多いだろう。

イノベーションの担い手が多くの場合、経営トップにではなく一般社員に期待されている日本企業にとってはとくに、本書のヒントは有益だと思われる。イノベーションのモデルもある程度限定されるこのになると思うが、逆にそのモデルも明確になる。

その線で考えれば、アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏のようにCEOの立場で終始イノベーションのリーダーシップを執ってきた事例は例外的であり、実践可能なモデルにはできない。逆に、デザイン会社のIDEOのように、イノベーションを一般社員の実践課題として組織的に定着させている事例のほうがモデルにしやすいだろう。──つまり"創業者イノベーション"ではなく"サラリーマン・イノベーション"のモデルを追求するということだ。

中でも留意しておきたいのはリスクテイクへの奨励がイノベーションに繋がるという点だ

そして実はこれが日本企業のアキレス腱になっている。著者クリステンセン氏らも序文「日本語版刊行によせて」で次のように言及している。

「日本企業は現状に異議を唱え、実験を行い、リスクをとるよう社員を奨励するにあたって特有の問題に悩まされる」と。

これは日本企業の幹部向けにクリステンセン氏たちが実際にテストした結果分かったことだそうだ。

とはいえ、日本企業がイノベーションを「実際には進めようとしていない」、というわけではない。

私見だが経営者がイノベーションを標榜している企業は多く、たいてい社員のリスクテイクを奨励している。総じて日本企業はリスクテイクに寛容ではないかという印象がある。またチャレンジしない部下に「ハッパをかける」上司が多いというのも実態で、それは病的な現象にすら見える。それなのにいったい何が問題なのか?ということである。

##

ここで、本書の内容から少し逸れさせていただく。

実は、リスクテイクを奨励していても、失敗への受け止め方に大きな差があるというのが、この病的現象の原因になっているのではないかと私は感じている。リスクテイクを奨励すること以上に、失敗をどれだけポジティブに捉えられるかという問題があるのだ。

感覚的には、リスクテイクを奨励する企業のなかでも、失敗への受け止め方の程度には3つぐらいのレベルがある印象を持っている。敢えて言うがリスクと失敗は違う。リスクには成功の可能性が残っているが、失敗は失敗でしかない。

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<レベル1>

失敗に最もポジティブなのは「失敗を奨励する」というレベル。社員によるイノベーションを進めるにはこのレベルをめざすしかない。経営は失敗のプラスをマイナスより大きいと考えている。失敗によって失うものより、顧客との新しい関係や知的資産が増えていくことのほうを高く評価する考え方だ。

世界的に有名なデザイン会社のIDEO社が「早く成功するためにしょっちゅう失敗しろ」と教えていることは、このレベルの典型的なモデルになるだろう。

<レベル2>

次にポジティブなのは「失敗を不問にする」というレベル。これは文字通りニュートラルな立場をとっている。少なくとも失敗がマイナスに評価されることはないので社員は安心して新事業などにリスクテイクできる。ただし経営は失敗したときのマイナスをできるだけ減らすことを意識しており、評価はニュートラルなものに落ちつくとしても社員は失敗のマイナスを打ち消すよう意識せざるをえない。そのため、一生懸命な姿勢を示し続けることがとても大事になってくる。

このレベルは、新事業開発の奨励を制度化した会社に多くみられ、一見聞こえのよい制度になっていたりするが、実際にチャレンジしてくる社員は少なく、あまり上手くいっていない。また一生懸命な姿勢というのは評価が難しく、本音と建て前が違ったものに見えてくるにしたがい形式主義に陥っていく。当然だがニュートラルなレベルではリスクテイクが加速されていかないのだ。

<レベル3>

最後は「失敗を忘れない」というレベル。これはリスクテイクが奨励されているが、結果が失敗だと評価が本当にマイナスになるというもの。例えばその期の賞与が減らされたりすることがある。別のプロジェクトで成功すれば評価はプラスに戻るが、失敗は一時的にでもマイナス評価される。信賞必罰な点が分かりやすいので、レベル2の「失敗を不問にする」より、かえって社員が気兼ねなくリスクテイクできる面もある。

このレベルは商社やIT系など事業開発機会に恵まれた市場にある企業に多く見られる。概してイノベーションのパフォーマンスはレベル2よりも実際は良かったりすると思われるが、経営者の意識はレベル2より低いと思われる。失敗がハンデになりつつも、環境変化の勢いに助けられてモチベーションの高い社員が果敢にリスクテイクしているという実態があると想像されるのだ。

またレベル3はおろか、<リスクを許容しない>会社も存在するだろうがこれは問題外だろう。

総じて日本には寛容の精神が溢れていても、こと失敗に関して多くの日本企業はレベル2やレベル3に留まっており、レベル1をめざすには障壁を抱えているという印象がある。

このことは、クリステンセン氏らが「日本企業は現状に異議を唱え、実験を行い、リスクをとるよう社員を奨励するにあたって特有の問題に悩まされる」と言っているように、失敗にポジティブになることを阻む問題が根深く潜んでいるように思われる。

##

さて冒頭に書いたように、本書は「どうすれば(イノベーションを)できるようになるのか?」という疑問を投げかけ、それに答えようとして書かれた本だ。

この問題を解く上で、こと日本企業においては失敗にポジティブになりきれない経営者の意識が一番のネックになると私自身は感じている。だから「失敗にポジティブになる」という命題を掲げてみたい。意識をそう簡単に変えられるとは思えないがこれは重要な命題だ。

クリステンセン氏らも言うように、「創業経験を持たない」経営者が失敗からの恩恵を体感として持っていないことが大きな原因だと思うが、こればかりはどうしようもない。

大事なことはジョハリの「盲点の窓」に気付くことだ。つまり「リスクテイクを奨励している"つもり"」であるという自意識と、傍目にはそう思われていないこととのギャップを明らかにすることが一歩になるのだと思われる。──社員が失敗にポジティブになれないことの原因が、経営者が意識していない考え方に由来するということを、経営者自身がよく知ることが肝心なのだ。

本書を読みながら、決して目新しいことではないが日本企業にとって根深い、意識上の問題に突き当たってしまった。しかし問題がピンポイントされるというのはとてもありがたい。この問題をクリアすることを念頭に置き、本書が説くイノベーションの方法論を実践することが素晴らしい変化をもたらすのではないか。

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コンサルティング・ビジネスをやりながらいつも思うことは、自分は先端を走る研究者でありかつ請求書を切る営業マンとして、バランス感覚を失わないようにしたいということだ。

世の中の変化ばかり追いかけていると、変化しない普遍的なものを見失ってしまうリスクが大きくなる。新しい情報をインプットすることとは別に、それを利用する自分自身がちゃんと感度を保っているかは、情報が多くなるほど見失いがちなこと。目の前の当たり前の仕事をいつも新鮮な気持ちで取り組めるようにしたいものだ。

これはコンサルティング・ビジネスだけではない。どんなビジネスにおいても同じように当てはまるのではないだろうか。

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エクセレントな仕事人になれ!~「抜群力」を発揮する自分づくりのためのヒント163~
トム・ピーターズ(著)、杉浦茂樹(翻訳)

本書には、著名な経営コンサルタント、トム・ピーターズ氏が44年間書きためた経営哲学のアイデアが163個書かれている。

ちなみに原題は"The little big things"

The little big things つまり「小さいけど大きなこと」とは、些細であっても普遍的に正しいことを意味する。一般に些細なことのほうが、より単純な要因に支配されている。だから私たちはその要因をピュアに知りたいのだと思う。

163個もあるThe little big thingsのどれに感じるか感じないかは、人によって違うものだ。小さな会社で働いている(私のような)人と、大きな会社で働いている人とでは、感じるツボも違っていて良いと思う。

ということで、ここでは全体の16分の1にあたる、私がとくに共感したアイデアを10個あげる。

1.トイレがきれいなこと

トイレがきれいだというのは決してそれ自体で大きなプラスにはならないが、人を長く引き留めておく大事な材料になる。ふだん大急ぎで用を足しても、トイレがきれいだとここで過ごす時間が長くなるというのは真実だ。

私が4年前に今のビルに移転先を決めたのも、ふり返ってみればトイレがきれいだと感じたことは大きかったと思う。

2.金融危機以降の厳しい時代だからこそ思いやり

厳しい時代を生き抜くためにライバルを出し抜くのではなく、ライバルに最大限の敬意を払うことが大切。危機は人間の本質を示す最高のチャンスだということだ。

だからポジティブ思考ではなく「思いやり思考」を心がける。危機の状況を楽観論で切り抜けることはできない。ポジティブでもネガティブでもなく「正しい振るまい」を心がけるべき。

3.Resilience(レジリエンス、回復力)

ブラックスワン(=予測できない極端な出来事)に遭遇しても何とか切り抜ける技術を身に付けているか、ということ。ブラックスワンにどのように遭遇するかを計画することはできない。ブラックスワンへの対処の仕方で人生が決まってしまうとも言える。

「回復力のある人」の特徴の箇条書きをコピーしておく。

  • 落ちついている
  • 自分をよく知っている(うろたえない)
  • ユニークで幅広い経験がある
  • 適度の混乱を好む
  • 幅広い人脈を築ける
  • エネルギッシュである
  • 正直でまっすぐな性格
  • ユーモアのセンス(緊張感の高まっているときに重要)
  • 高い共感能力(思いやりがあり、回復力の低い人を負け犬扱いしない)
  • 冷徹さ(難しい決断を1人で下せる)
  • 決断力があるが、頑固ではない
  • 個人としてもチームの一員としても優秀(両立は難しいが、ある程度は存在する)
  • 命令系統とその重要性を理解している(必要とあらば無視する柔軟性も)
  • 風変わりなアイデアの持ち主を評価するが、全体としては「実践」を重視
  • 常に希望を忘れない

この箇条書きをコピーしながら感じたのは、起業家とは少し違うタイプだということ。最初から目立つようなことはせず奥手で目立たないが、最終的には首尾よくチームを成功に導けるタイプではないか。

4.一番大事な仕事は「自分を喜ばせること」

トム・ピーターズ氏は、顧客の前でインパクトがあり高く評価される講演をするために、「自分を満足させること」に全精力を注ぎ込んでいるとのこと。

顧客のフィードバックは大事だが、そこから顧客の満足につながる答を導くことはできない。顧客を真の意味で最優先に考えるには、その顧客に奉仕する人間(ここでは自分自身)の気持ちをそれ以上に優先しなければならない。

5.思いやりはタダ

タダといってもムダなことをしているわけではない。せっかく相手の貴重な時間をいただくわけだから、感動を与えよということ。これには特別コストをかける必要はない。お金より時間を大事にしているような相手(たぶん高いポストについている人)には、きっとこの心配りは届くはずだ。

トム・ピーターズ氏は「思いやりはまた無用な摩擦を減らすことができ、スピードアップのカギになるのだ」とも言っている。何か問題が起きたとき、問題の透明性を上げるために支払うコストを抑制するのも、結局、思いやりなのだろう。思いやりは事実を隠蔽するのではなく開示を促す力になる。──対照的に、近頃は政府や行政の「思いやりのなさ」が本当に無用な摩擦を増やしているように思う。

6.書記はとてつもなく大きな力を持っている

トム・ピーターズ氏は、面倒くさくて誰もやりたがらない書記を「立候補してでもやれ」という。彼はスタンフォード大学で学んでいたときクラスで一番の新参者だったにも関わらず、書記役を片っ端から引き受けることで、事実上「グループの記憶」をコントロールできるようになったという。

私自身も企業研修を続けていると、最近は書記を進んでやる参加者が増えてきたことを実感する。利他の精神を説いた私の意図が通じ始めたと思うのは思い過ごしで、実はチームの成果物が評価されることが確実になるや、それまで書記をやらなかったような人も進んでやるようになっているという印象だ。書記は、研修の時間外においてもチームの中心的存在であり続けるからだ。

7.早めの準備

本書の記述そのままだが、

  • 誰よりもよく働く者は、大きなアドバンテージを手に入れる。
  • 最もいい準備をした者は、大きなアドバンテージを手に入れる。
  • いつも「過剰なまでに」準備をする者は、大きなアドバンテージを手に入れる。
  • 最もよく下調べをした者は、大きなアドバンテージを手に入れる。

私自身も、自分の主催する勉強会には誰よりも準備をしたという気持ちで臨んでいるが、それでも中には私以上に準備をした人にたまにお目にかかる。こういう人には敬意を忘れないし、内心、負けたなあと感じる。

8.ベストを尽くすだけでは足りない

トム・ピーターズ氏は、かつて海兵隊に所属していたとき上官との対話で「ベストを尽くしております」と応えたら厳しく叱責されたという。上司いわく「君がベストを尽くしているか否かには関心がない。われわれは単に、君が職務を全うすることを期待している」と。

確かに「ベストを尽くす」にはどこか責任を逃れるような響きを感じる。「職務を全うすること」が本来の許容水準なのだ。

9.敵はわれわれ自身

念を入れてマーケティング戦略を企画することも大切だが、実際は企業の足下をすくいかねない組織の問題に目を向けるほうがよほど大切だ。成果が出ない問題の多くは、業務遂行を妨げる組織の硬直化に原因がある。

  • GMを骨抜きにしたのはトヨタではない
  • GMを骨抜きにしたのはホンダではない
  • GMを骨抜きにしたのは日産ではない
  • GMを骨抜きにしたのはGM自身である

発見した敵が実は自分自身だったというのは悲しいことだ。これはGMのように大きな会社だけではなく、小さな企業にも当てはまる。

これを発展させて考えれば、「自分の組織に適した新事業しか成功しない」というよく聞く常識も、実は同じ原因が潜んでいるように思う。自分本位で考えすぎれば、環境変化に適応する機会を逃すことになるからだ。

10.ライバルを愛する

IBMの元社長トーマス・ワトソンが定めた行動規範「絶対に競争相手の悪口を言うな」。このルールに背いた社員は首にすると言われたほどの厳しさがあったと言われる。

ライバルに対して寛容になれる気持ちは結果論にも聞こえるが、実は次の成長に向かう準備なのだとも思う。トム・ピーターズ氏も「業界が栄えるとき、業界の評判があがるとき、あなたも成功できる」と言う。──こんな言葉は私の身の丈を超えてしまっているが、心の底で同意している。

トム・ピーターズ氏はまた「同業者に尊敬され、同業者のためになる仲間でいたい。はっきり言えば、そうすることで、実は自分の競争力をずっと守っていけるのだ」と言う。──競合企業を批判するのではなく、助けの手をさしのべる気持ちが大切だ。競争が熾烈なほど、ビジネスには品位が大切になる。

以上、私なりに163分の10個、気になって自分なりに咀嚼したものをあげてみた。これらは自分のThe little big thingsとして大切にしておきたい。

本書は目次だけで圧倒されるが、163個の筋立てを期待してはいけない。著者も筋立ての無い仕上がりにしたと言っている。この中から自分の気に入ったアイデアを見つけて記憶に留めておけばいずれ役に立つのではないか。

hirose

今日はブックスタンドを作成した。

もう少しテンポ良く本を読めないかと考えていたところ「ブックスタンドがあるといいんじゃないか」と思いつき、それで作ることにした。

姿勢への負担を減らすアプローチから入ろうということであって、読むスピードがこれで上がるわけではない。

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ブックスタンド表側 背板のサイズは320ミリ×220ミリ 傾きは45度
2012/01/29製作 所要時間は約4時間(11時~15時)

実は作った後に既製品が売られているのに気付いた。
1,000円そこそこで売られているので手作りした甲斐が無いじゃないかとガッカリしつつも同じような仕掛けになっているのは嬉しかった。

とにかく思い立ったが吉日。作りたくなった気持ちが急いて作り始めていた。
いつも人には「作り始める前に類似品が無いか調べましょう」と言っているくせに自分を抑えるのは難しいと今さらながら思う。

##

この後は作品を紹介します。よかったら少しつき合って下さい。

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これはブックスタンド裏側から。
背板と脚はベニヤ版。
背板の傾きは45度。これはノートパソコンの画面の角度が45度ぐらいでちょうどいい感じだったのでそうしした。

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本のページを押さえるアームはフェンスの切れ端を折り曲げて作った。
使うときは底部の穴に差し込むだけ。
フェンスに使われているスチールは意外に頑丈(径は3.5ミリ)で、しっかり曲げるには万力が必要だった。表面のビニル被膜は剥いだ。
穴は大型用と小型用に2カ所。

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本を置くとこのように。
このブックスタンドは、一般のビジネス書のサイズに合わせて作成。
アームの先端を鋭利にしているので、紙面にひっかかってページがめくれていかない。思った以上の効果だった。

使ってみると45度の傾きもちょうど良く、読むのが少し楽になったような気がする。
ちなみに本来の目的ではないが、両手が空くので並行してパソコン操作ができるようになったことも嬉しい。

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紙面を強く押さえつけるときは、アームをゴムで引っ張るという仕掛け。
ゴムの端はダボに絡めてある。

最初はこれが必要になると思っていたが、実際にはアームだけで十分だったようで、使うことはなさそう。

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文庫本のサイズにも対応。

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これは我が家の工具棚。工具棚のヨコに使い残しの木材があるので、今回はホームセンターに行かずにストックだけで出来た。言い訳になるが、既製品があるかを調べもせず刹那に作り始めてしまった理由はここにもある。

紹介は以上です。つき合っていただき有難うございました。

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読書の環境がこれで少し改善された。今後は少しは自分の読書量が増えていくことを期待したい。

作るのは私の趣味なので、ブックスタンドが必要なら市販のものをお勧めする。同じ悩みを抱えている人には、このリンクのほうがよほど有益だったかもしれないm(._.)m

カール ブックスタンダー NO.820
http://amzn.to/xWjmbU

ELECOM EDH-004 ブックスタンド
http://amzn.to/xl7EbD

以上

hirose

企業の今流行の戦略といえばグローバル化やサービス化などが筆頭に上がるだろう。様々な企業トップの年頭あいさつを見ても、そのあたりのキーワードが入っている感じがする。

分かりやすい方向性だと思うが、変わらなければならないという切迫感に比べて何か大事なパーツが足りていない気がする。1つ挙げるとすれば、企業の「メディア化」戦略だろう。

メディア化は企業にとって新種のコンピテンシーだ。──古き良き時代の繁栄を味わった経営者には、ここが非常に認識しづらいところだろう。

しかし環境適応するには、事業ドメインなどの外形的な変化も大事だが、コンピテンシーの補強も必要。コンピテンシーの変化を遂げなければ戦略は完遂できない。ソーシャルメディアが普及する潮流をカベの向こうで起きている出来事だと見過ごしていやしないだろうか?

この探していたパーツを小林弘人さんが近著で見事に言い当ててくれた。

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メディア化する企業はなぜ強いのか? ── フリー、シェア、ソーシャルで利益をあげる新常識
小林弘人(著) 、技術評論社刊行

##

企業が「メディア化する」というのは、これまで広告代理店などのプロに任せていたメディア活動を、企業自らが行って、市場に価値訴求しようという戦略。

この戦略は、企業の持つ既存資産を情報化して市場に伝達することで価値訴求ができるという点で、ローリスク・ハイリターンな戦略と言われる。また先に挙げたグローバル化やサービス化といったドメイン・シフトの戦略とは補完しあえるもので、戦略全体のリスク低減にもつながる。

ちなみに最近話題の『ソーシャルシフト』(斉藤徹著)の概念も「メディア化」に近い。

斉藤さんの「ソーシャルシフト」と小林さんの「メディア化」は、いずれもソーシャルメディアに適応すべく企業のパラダイムシフトを意図している点で、同じ目的を持ったほぼ同義の言葉だと理解している。なおソーシャルシフトについては以前の自分のブログ(※脚注1)でも言及している。

ちなみに過去に、

  • 『フリー』(クリス・アンダーソン著、2009年初版)
  • 『ツイッターノミクス』(タラ・ハント著、2010年、原題:The Whuffie Factor )
  • 『シェア』(レイチェル・ボッツマンら著、2010年)
  • 『パブリック』(ジェフ・ジャービス著、2011年)

などを読んだことのある人なら、同じような大局観をもってメディア化を捉えているのではないだろうか?

小林さんは、上記『フリー』『シェア』『パブリック』のいずれにも監修・解説者になっているように、この3~4年間を俯瞰してみる意味で本書を読んでみるのもよい。

それから『ツイッターノミクス』は、ツイッターを主題にしているように見えるが、実は原題が”The Whuffie Factor”となっている。Whuffie Factor(ウッフィー)とは共感資本のことをいう。市場の引力がお金以外のものに移り変わっていく様をよく捉えている点で、一連の理解を助けてくれる。

そんな一連の流れを踏まえ、企業がメディア化しなくてはならなくなった背景を自分なりに整理しておきたい。以下、時間軸にそってフェーズを3つに分けてみた。

フェーズ0 「フリー化」以前

「フリー化」以降の変化を明確にするため、最初にそれ以前のビジネスモデルを示しておく。

一般に流通が多段階になっていることが多いが、ここでは単純に顧客と総称する。顧客は後に出てくる「利用者」とは異なり、有料の取引が行われる。実際のビジネスモデルはもっと複雑だが、ここでは有料取引の部分をクローズアップして単純化する。

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以下、このビジネスモデルがどう変化するかを表現することを意図して描いた。念のためこれらの図と解釈は私の理解なので、本書の内容をそのまま表している訳ではない。

フェーズ1 「フリー化」 ──潤沢にある財を無料提供することで利用者のスケールを得、希少性や秩序を欲する利用者からお金をいただく戦略

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ヨコ軸は企業が市場からいただく対価がどう変わるかを表している。(タテ軸は次フェーズで説明する。)

対価というのは、企業が商品やサービスなどの財(価値が付随する)を提供する見返りとして得るもので、これまではお金が大事だった。

ところが最近は、市場がいかに財の利用経験を持ってくれるかに、企業の関心がシフトしてきている。企業の見返り(対価)は、市場が費やしてくれる時間である。お金が不要になったといっているわけではない。より大事なものが右側に移ったという意味だ。

「フリー化」はこのヨコ軸方向の流れとして起きた。

小林さんは、フリー化は「企業のメディア化戦略の基底にある考え方だ」と言っている。

フリー化戦略というのは、潤沢にある財(音楽データなど)を無料提供することで利用者のスケールを獲得し、希少な財(生の音楽など)や財を選別するための秩序(ランキングなど)を欲しがる利用者からお金をいただくという戦略。

ただしフリー化戦略がうまくいくのは、小林さんが指摘するように音楽やソフトウェアなどの情報産業に限られている。量産(複製)するコストがほとんどかからない産業だ。

私自身も『フリー』を読んだ当時、情報産業以外の産業に適用できないかと考えたことがあったが、財を提供するコストを抑えるためには、資源の制約が問題にならない産業じゃないと難しいという印象を持った。

フェーズ2 「シェア」「コラボ消費」 ──バラバラだった利用者が経験の共有を求めてつながり合う動き

「シェア」とは利用者どうしで財を分かち合うこと。
「コラボ消費」はシェアを通じて財の新しい利用の仕方を発見すること。

大雑把にいうとシェアは効率性を追求し、コラボ消費は創造性を追求する。

時代的にはリーマンショック(2008年)以降のことになるが、先進国の経済が減速し続けるにも関わらず石油価格が上昇し続けるなど、不況と資源問題が同時に起きたという背景がある。 ──このジレンマをブレークスルーする知恵として生まれたという意味で、 「シェア」や「コラボ消費」を一時的な消費行動と見るわけにいかない。

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説明が遅れたが、図のタテ軸は自社と顧客や利用者をつなぐ取引経路の変化を表している。上方向の変化は、取引経路が限定されていた状態から、ネットワークのように複線的になっていくという変化である。

まず「シェア」「コラボ消費」は、フリー化戦略と同様、ヨコ軸方向の、利用者のスケールを追求する戦略が前提になる。

そして利用者が飛躍的に増えていくと、利用者間で同じ経験を共有する割合が増えてくる。するとバラバラだった利用者が経験の共有を求めてつながり合うようになり、これが「コミュニティ」としてまとまった状態になる。──これがタテ軸方向の動きである。

このつながりの力をタラ・ハントは「共感資本(Whuffie Factor、ウッフィー・ファクター)」と表現し、お金に代わる普遍性の高い資本と考えた。

また最近ではジェフ・ジャービスが、1人1人にシェアする倫理観が芽生えてきたとして、この倫理観を「パブリック」(※脚注2)と表現した。これはいわゆる自治体などが負う公共的機能ではなく、個人(または個社)に帰属する公共的な精神のことである。

フェーズ3 「企業のメディア化」 ──プロのメディアに任せず、自ら市場に積極的に近づき、価値訴求する企業の戦略。情報産業以外の業種もフリー化する戦略として

そうして、利用者同士の一つ一つのつながりは力弱くても、コミュニティ全体としてみると企業の言うとおりには動かせない勢力になっていく。何か問題が起きれば口コミで全体に伝わってしまうので、企業も積極的に関わっていく必要がある。

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「企業のメディア化」戦略は、フェーズ1のフリー化と同様、ヨコ軸方向の動きとして今まさに起きつつある。

つまり企業にとって、市場が費やしてくれる時間がますます大切な見返り(対価)になってくる。(念のためお金が不要になったといっているわけではない。より大事なものが右側に移ったという意味。)

メディア化戦略は、勢力を持ったコミュニティに積極的に近づき、財の利用経験を持ってもらおうと価値訴求する戦略だ。企業はパブリックの利益を最大化することが大事になる。

広告代理店など、プロのメディア事業者を間に挟む必要は、もはや無い。

相手側がネットワーク構造をしているのに、自分側に階層構造を残しておくのはナンセンスだからだ。極論を言ったが、当面は利用者の全てがネットワークにはならないと思うので、中間機能はある程度残ると思う。

むしろこれから必要になる中間機能として、小林さんは「メディア・クラウド」を挙げている。これにはブロガーやキュレーターと言われる人々が含まれるが、これらもやっぱりネットワーク構造を持った集団だ。

それからフリー化戦略と異なるのは、メディア化戦略は情報産業以外の業種においても有効だということ。
当然だが、コミュニティに提供される財は潤沢にあるものでなければならない。情報産業以外の業種においてもそれは「自身の持っている情報」だと思われるので、その意味ではメディア化戦略はフリー化戦略と手段が同じという見方ができる。

着目したいのは、情報産業以外の業種にも適用されれば、産業構造全体を大きく揺さぶる可能性があるという点だ。なかでも小林さんは「B2B系の業種こそメディア化戦略に好都合」と言っている。メディアの利用から一番縁遠いと思われる業種こそ効果が大きいというのだ。

本書に紹介されている前田建設ファンタジー営業部の例は、「マジンガーZの格納庫を、もし前田建設が受注したらどういうふうに作るかといった荒唐無稽なプロジェクト」についてリアリティのある物語を自社サイトに紹介したというもの。

ふだん見えない建設の裏側が面白く伝えられることに加え、それだけにこれまで語られなかった情報が相当豊富に眠っており、メディア化による効果は他の業種に比べて大きいだろう。

##

さて、以上のように企業のメディア化をゴールとし、ビジネスモデルの変化をフェーズに分けて整理してみた。

これまで情報産業以外の業種にとって、ITやインターネットは単なる効率化の道具であってそれ以上のものではないと思われていたようだ。
しかしここに来てソーシャルメディアの普及とともに、情報産業であるなしに関わらずあらゆる市場がコミュニティの結束力を持つようになった。

小林さんが言うように「あらゆる企業がメディア化する」というのは、市場のそうした新しい勢力とつきあっていくための新種のコンピテンシーが必要になるということだ。

メディア化戦略が企業において取り組まれるならば、恐らく組織活性化や人材育成のプログラムとして落とし込まれていくだろう。
平たく言えば、社員が社内に閉じこもらず、市場で行われている利用者どうしの会話に、カベを置かず、また上から目線でもなく入っていけるようになるかということだろう。

しかし多くの企業において事業戦略は描けていても、こうしたメディア化戦略がすっぽり抜け落ちているような気がしてならない。現場は少しずつ感じ始めているように見えるが、経営層にとってこの戦略が想定外になっていないだろうか。

批判を込めて言えば、
「市場で起きている変化は市場自身が変わる問題であって、その変化を自社の体内にまで取り込む必要はない」
という意識は無いだろうか。
少なくともこれまでは他人事でよかったが、これからはそうはいかないだろう。

メディア化戦略は、真の意味で市場に自分の身を置いた立場でものを考えることを要求するものになるのだと思う。

以上

##

【※脚注1: ブログ】
「ソーシャルシフトという企業のパラダイムシフト。ビジネスコンサルタントにお勧めの1册」

##

【※脚注2: 勉強会の告知】
『パブリック』を読んで、シェアビジネスの可能性を考えてみませんか?

2012年2月1日(水)19:00~ @東京・大森

『パブリック ― 開かれたネットの価値を最大化せよ』 を課題図書にした勉強会を開きます。初めての方も歓迎です。ご興味おありの方はぜひご参加ください。

hirose


プロフィール

広瀬 幸泰

広瀬 幸泰

プランテックラボ株式会社 代表取締役
人材育成にめざめコンサルに復帰。「手を動かしながら考える~」の著者。
ITの明るい未来観を描きたく、読書を通じて潮流と哲学を追いかける。

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