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地方の人手不足をビジネス視点で解決する

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ITエンジニアが不足しているという話は身近な問題としてよく聞いていますが、この人手不足が一部の職種の問題というよりは全産業的、全国的な問題だという認識を最近深めています。ジョブのミスマッチよりも大きな人口構造的な現象だということです。

実際、生産年齢人口(15~64歳の人口)の予測を見ると、それがはっきりとわかります。2010年(現在)から2025年にかけて生産年齢人口は8,173万人から7,084万人へと、13.3%減少すると予測されています。他方、この間の総人口は12,810万人から12,069万人へと、5.8%減少すると予測されています。働き手は、人口減少スピードの2倍程度の速さで進行していくのです。この原因ははっきりしていて少子高齢化に他なりません。

人手不足は地方が深刻

東京にいると地方のことがあまりよく見えてきませんが、人手不足は地方のほうが激しいようです。生産年齢人口の減少率のワースト10は以下の通り、東北地方に偏っています。

2010年-2025年にかけての生産年齢人口の増減ワースト10

ワースト 2010年 2025年 増減数 増減率
1 秋田県 640,878 460,018 -180,860 -28.20%
2 青森県 847,046 635,865 -211,181 -24.90%
3 高知県 451,294 347,553 -103,741 -23.00%
4 岩手県 799,314 619,086 -180,228 -22.60%
5 山形県 696,447 541,018 -155,429 -22.30%
6 長崎県 861,779 671,412 -190,367 -22.10%
7 徳島県 476,346 371,144 -105,202 -22.10%
8 福島県 1,244,829 973,702 -271,127 -21.80%
9 島根県 416,556 326,963 -89,593 -21.50%
10 鳥取県 355,471 282,291 -73,180 -20.60%

(出所)生産年齢人口予測(都道府県データランキング) http://uub.jp/pdr/j/fp.html に基づき筆者作成


人手不足がどういう問題を起こすかというと、介護や医療サービスを受けたくても受けられない、バスなどの交通機関を動かせない、などと生活に深く関わる問題にぶちあたります。

東京に住んでいるから地方の問題は関係ない、と思ってもだめです。地方に行っても儲からないから地方の問題には関わりたくない、と思ってもだめです。構造的な問題は、いずれ誰にも降りかかってくる、避けて通れない問題です。


地方の人手不足問題をビジネス視点で解決する

こうした地方の人手不足の問題を、経営共創基盤代表・冨山和彦氏はビジネス視点で光をあてています。

なぜローカル経済から.jpg

なぜローカル経済から日本は甦るのか
GとLの経済成長戦略
PHP新書
冨山和彦(著)

冨山氏は、ビジネスをグローバルビジネス(G)とローカルビジネス(L)に分けてとらえるべきと説いています。ビジネスの切り分け方として私たちはこれまで、第一次産業・第二次産業・第三次産業といった生産物による区分や、中小企業・大企業といった資本規模による区分を使ってきましたが、グローバル(G)かローカル(L)かという区分は全く新しい視点です。

各々、頭文字をとってGとLに省略しますが、Gの世界はグローバル化が進むほどそこから蹴落とされる人が増えるという意味で、一般的な人材不足の問題には無縁です。人材不足が問題になるのは、Lの世界です。そして日本の生産年齢人口の大半はこのLの世界に所属しています。

また経済特性が全く違っており、Gの世界は規模の経済性が働きますが、Lの世界は密度の経済性が働きます。つまりLの世界でビジネスを成り立たせるためにはアクセスしやすい近さが大事で、広域にビジネスを広げればいいというものではありません。人や企業の流動性もGの世界ほど激しくありません。穏やかに人や企業が交代するという前提で考えなくてはなりません。

Lの世界において人手不足に対して打つべき手は、人的資源が限られているという前提で考えると、労働生産性を上げる方向にならざるをえません。Gのビジネスが資本生産性の追求にあることとは対照的です。

労働生産性を上げるというのは、政策的には最低賃金を上げるということになります。これは労働生産性の低い企業の退出を促す意味で、とても重要な政策になります。最低賃金を上げずにいると、ブラック企業がはびこることになります。そういう会社は退出させなくてはなりません。

また企業によってはアルバイトなどの非正規雇用を正社員にする方策をとっているところがあります。そもそも正規と非正規に雇用を分けるというのは人余りの時代の代物で、時代遅れです。ユニクロがアルバイトを正社員にしたことはヒューマニズムだけによるものではなく、経営者の慧眼といわざるをえません。これも人手不足に対抗する効果的な方法ではないでしょうか。

ほかにも、スキルアップも重要な打ち手ではないでしょうか。外国語の習得は、地方の「おもてなし」を世界に通用させる武器となります。

人手不足に対して移民政策を取るという発想もありますが、これに関して冨山氏はややネガティブなスタンスをとっています。高級エリートをグリーンカード(永住権)のような方法で優遇するのはともかく、安い労働力を他国から調達するという発想は、最後の手段にすべきではないかということです。外国人労働者の急増に対して社会的なストレスが起きかねないということや、とくに労働力がダブついてしまったときに、ややこしい民族問題に発展しかねないというリスクがあるということです。──移民政策は最後の手段であり、仮に進めるとしても、前述したような最低賃金の引き上げは政策として必要になろうかと思われます。

IT武装やロボット武装も人手不足に対する打ち手となりえます。問題をリモートで解決するという発想は、人手不足の深刻な地方でこそ効果的な結果をもたらすのではないでしょうか。ここでポイントになるのは、Gの世界で使われるテクノロジーをLの世界に持ち込むということです。GかLかを手段というレベルで対立的にとらえる必要はなく、冨山氏もどちらかだけでとらえるのではなく、共存させて考えることが大事だと言っています。

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