書籍『チケット駆動開発』が出版されました。
『チケット駆動開発』が出版されました。
http://books.shoeisha.co.jp/book/b93629.html
この本は、チケット駆動開発(TiDD)について書かれた本の、待ちに待った二冊目です。小川さん、阪井さん、おめでとうございます。
本の出版にあたって、まえがき、を書かせてもらいました。ここに、紹介文として掲載します。ぜひ、本を手にとって見てください。
日本でも「アジャイル」という言葉がよく聞かれるようになりました。その中の1つの手法である「スクラム」という言葉を先に知ったという方も少なくないでしょう。アジャイル開発では、チームが協調して動くソフトウェアを育てます。チームは現在の状況を透明化して共有し、顧客にも伝えます。状況共有の手法に「ストーリ」、「かんばん」、「バックログ」、「バーンダウン」等がありますが、これらを積極的なツール支援によってより分かりやすく、チームが使いやすい仕組みにしよう、というのがチケット駆動開発です。
逆に言えば、チケット駆動開発では、「チケット」という概念を一番先頭にもってくることによって、アジャイルに必要なルール(規律)を現場中心に作り出し、開発全体を進める(駆動する)手法だということができるでしょう。
具体的な行為と結びついたチケットは分かりやすく、「アジャイル」という言葉のように時に漠然とした議論に陥ることがありません。アジャイル開発をしているかどうかは判断が難しい場合が多いですが、チケット駆動開発をしているかどうかは、はっきりと分かるでしょう。ですから、アジャイル開発を始めるのに、チケットをまず使ってみる、という使い方も、よい出発点だと思います。
さらに、チケット駆動開発はアジャイルだけに特化した手法ではありません。ウォーターフォールのように行程を区切った開発を支援する手法としても十分使えるのです(本書の中ではAdaptable Waterfallという呼び名で呼ばれています)。このことも、日本での利用シーンの想定を広くしています。
私自身も、アジャイルの中のチームビルディング、コラボレーション、ファシリテーションのエッセンスを抜き出して、それをウォーターフォール開発でも実践できるようにと「プロジェクトファシリテーション」(本書の中にも何度か登場します)という手法を作って日本で多くの人たちに伝えてきました。チケット駆動開発もまた、急激にアジャイル開発を実践できない現場でも、取り入れることが可能で、かつ、メリットをすぐに享受できる手法なのです。
ちなみに、私はすべての開発がアジャイルであるべきだ、とか、アジャイルがどんな場面でも最も優れた開発手法だ、という風には思っていません。開発現場がそれぞれ違うのですから、それぞれが自分たちで手法を選択し、さらに適用を考えるべきです。その意味で、チケット駆動開発は分かりやすく、自分たちのやり方を考えるよい出発点になるでしょう。
平鍋健児