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日本のアジャイル10年、人々とコミュニティの私的物語

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日本のアジャイル10年、人々とコミュニティの私的物語  平鍋健児


(※)この記事は、2011年に書籍『Ultimate Agile Stories』に寄稿したものを転載しています。執筆時点で、『Ultimate Agile Stories - Iteration 2』が刊行されています。(2012/8/15)


Xpbook ぼくが初めてアジャイル、というか、XP、そうエクストリームプログラミングについて知ったのは、2000年の初めだった。ふと目について注文した洋書『Extreme Programming: Explained』がamazon.comから届き、それを週末に読んだのだ。このときに、どんな電流が走ったかは、多くの人の前で語ってきたが、Kent Beck という人物がとんでもなく明快に、そして極端に、人に喜ばれるソフトウェア開発、という視点でプログラミング活動を中心おいて4つの価値と12個のプラクティスをまとめた薄い本だ。もちろん、そのころオブジェクト指向オタクであったぼくは、リファクタリングやテストファースト、継続的統合、といった技術的内容の徹底(extremeさ)にも引かれたのだが、一番大きくぼくの考え方を変えたのは、「リリースをしたら、お客さんと一緒に、食事をしてお祝いしなさい」という一文だった。なんと、、、エンジニアリングの本に食事のことが書いてある。。。それ以来、ぼくはソフトウェア開発を、ソーシャルな活動として捕らえている。この文章は、同人誌の発刊にあたり、ぼくの関わった日本のアジャイルを、関わった人たちとのソーシャル活動という、ぼく自身の視点から紹介してみたいと思う。

ことの起こり:XP-jpの立ち上げ、パターンコミュニティとアジャイル

2000年、本を読んだ次の日に、エクストリームプログラミングを紹介するWebサイトを立てて、そこで、FAQやニュースを配信するようになる(この活動はその後、永和システムマネジメントの「オブジェクト倶楽部」(現:オブラブ)として活動していくことになる。)。メーリングリストXP-jp も立ち上げ、日本のXPコミュニティを作ろうと思った。JavaWorld への記事『extreme programmingの魅力を探る』 (現在でも読める)を書いたのもこの年だ。このころは、ぼく自身もプログラミングに費やす時間が自分の時間のほとんどだった。新しい手法を紹介して、開発の現場を生産的・協調的にしたい、という一心で、土日の時間を使ってXPの翻訳に取り組んだ。バイブルである上記のKent Beck 本を訳したのは、長瀬嘉秀さんで、それ以来、XP・アジャイル関係のコミュニティで長くお付き合いさせて頂いている。また、XPやScrumを含むアジャイルのコミュニティの起源は、ソフトウェアパターンと呼ばれるソフトウェア設計知識のナレッジ化活動にあり、その活動の中でフジノさん友野さん羽生田栄一さん、児玉さん太田健一郎さんらと知り合った。羽生田さんはもちろん日本のオブジェクト指向の草分けとして多くの知識を日本に紹介されてきた大先輩である。2001年に沖縄で開催された日本初のパターンライターズワークショップMensorePLoPでは、Linda Risingさん(AgileJapan2011基調講演)に私のパターンのシェパードになって頂いた経緯もある。アジャイルコミュニティは、パターンコミュニティを兄貴分としており、海外でもこのソーシャル関係は強く見られる。ぼくにとってのアジャイルの起こりは、Kent Beckの一冊の本であり、それを伝えたいと思って作ったメーリングリストであり、そしてパターンのコミュニティだ。

2000-2003: XP-jp、Extreme Ways、XPJUG、アジャイルプロセス協議会

さて、ぼくが企画した最初のアジャイルイベントは、2000年7月7日、渋谷のバー、その名も「XP」にて、最初のXP-jpのオフ会である 。このころ(いまでも)福井にいたぼくは、東京に行くのがうれしくてしかたなく、「渋谷のモヤイ像に、白い本を持って集合!」を合言葉に集合した(若かった!)(*1)。そこには、渋川さんがいた。飲み会では、「好きなプラクティスは何ですか?」のような自己紹介をして盛り上がった記憶がある。また、同じころ、NEC関係のグループにExtreme Ways というコミュニティがあり、そこには、懸田さん牛尾さん安藤さん水越さん、という今考えるとトンでもない人たちが集まっていて、そのグループとも交流した。また、日経の企画(これは日経コンピュータの田中淳さんの企画)でKent BeckとBill Gatesが東京に同時に来たときには、Kent Beckを夜の街に連れ出して、XP-jpのグループとアンダーグラウンドの会をやったりもした。

(*1)ここにそのメールがアーカイブされている。「XP-jp最初のオフ会のメール」

アジャイル王子こと牛尾さんとは、大阪での実ビジネスでのXP適用でもお手伝いさせて頂いた。牛尾さんは色物に見られがちだが、実は一番理論と実践のバランスと経験を持ち合わせた人だ。顧客とチームを組んで仕様を作りながら開発を進める現場で、そのプロジェクトではスーパープログラマの山根さん、ともお会いした。

また、同時期に長瀬さんをリーダにXPJUGが立ち上がり、Alistair CockburnとKent Beckを大阪呼ぶというすごい企画もあった。以来、XPJUGは毎年「XP祭り」というコミュニティイベントを開催し、日本のXPコミュニティの中心となっている。小井土さん福井厚さんという.NET系の大先輩とはここでお会いした。また、大きな声では言えないが、どうも、大阪の方がXPJUGは毎年勢いがある、という定説があり、細谷さん(前会長)西さん(たけぷ~現会長)山中さん川端さん(前々会長)土屋さん前川さん、などなどつわものがそろっていて東京の本家はいつも圧倒されている。2011年のXP祭り関西では、井芹さんもテストの話をされている。

2003年には、ビジネスサイドからの普及を目的にした「アジャイルプロセス協議会」(略称:アジャパ)が立ち上がる。大槻さん、羽生田さん、濱さん、塩田さん、大阪の新保さん、らとも親しくして頂いた。東北代表の豊島さん、九州代表の高木さんとは、この後お話するXPアンギャで出会った面々だ。

XPアンギャ(2003)

Xpangya ぼく自身は、所属する永和システムマネジメントの活動として、2003年4月~7月、天野勝さん北野弘治さんと、XPアンギャ、という全国をXP布教してまわる活動を思いつき、それを実行に移した 。「宿泊費さえ出してもらえばどこでも行きます。ホスト企業を募集します!」という、なんとも過激で荒削りな企画だ(若かった!)。仙台、福岡、札幌、京都、浜松、福井、と全国6箇所をめぐり、最後に、東京でも開催した。このときに、参加して頂いた方には、東北リコーの豊島さんや、博多の高木さん澤田さんみかままさん、浜松の寺田さん、福井の小島さん、大阪の川端さんはじめ、いまでもコミュニティで活躍されている人が多い。

Xpangya_4 この写真のように、全国でワークショップをしたあとに懇親会をやって最後はXPのポーズでキメる、ということを繰り返して普及活動をすすめた。写真は博多でのXPアンギャの懇親会の写真。左半分が「X」、右半分が「P」のポーズ。

海外アジャイルカンファレンスへの参加(2003-2008)

Xpantipractices 2001年にAgileという言葉が生まれた。2003年には、ソルトレイクで開催される、Agile Development Conference 2003に、前述のアンギャのメンバー2名と、牛尾さんとで参加した。このイベントは衝撃だった。参加者との双方向コミュニケーションの仕方や壁の張り物、オープンスペースの作り方などを日本に持ち帰り、オブジェクト倶楽部で実践した。さらに、2004年には倉貫さんと参加した。このときは、倉貫さんのグループが書いた、「XP AntiPractices」という実践論文が審査に通過し、これを一緒に発表した。発表にはマンガを使い、当日はぶっつけ本番の英語コント風に発表して喝采を受けた。スライドは、Brownies’ Work(先輩がぼくのコミットしたコードをリファクタリングしちゃった)というアンチパターンだ。これは、アジャイル界で日本が認知された大きな事件だったと思っている。

また、このカンファレンスでは、Jim Highsmithの『アジャイル・プロジェクトマネジメント』、Mary Poppendieckの『リーンソフトウェア開発』を日本語に翻訳したい、という話を持ちかけて、これらを日本に紹介する機会を得た。

Agile2008esther さらに、Agile2008、日本のギター・ボーカル・パーカッションのグループ、「侍塊s」 作詞作曲『Dear XP』(*2)を、歌姫、串田さんのボーカル、そしてあまのりょ~さんのビデオ作成で、全世界のアジャイリスタの前で歌うことができた(*3)。そして、ありがたいことに、ぼくは日本のコミュニティ形成の功績でGordon Pask Award という、年に2名がAgile Allianceから受賞する賞を頂いた(*4)。この賞は、日本のアジャイルコミュニティ全体が取った賞だと思っている。写真は、オープンスペースに作った「日本の壁」の前で、Esther Derbyと撮ったもの。

(*2 トリビア:侍塊s、Red, Blue, Green の3人がはじめて出会ったのは、オブジェクト倶楽部の懇親会である。)

(*3 DearXPの動画)


YouTube: Dear XP (English telop)

(*4 Gordon Pask Award 受賞の様子)


YouTube: Kenji Hiranabe Speech in Agile2008(FullVersion)

プロジェクト・ファシリテーション(2004-2010)

Pf_2  一方で、現実のプロジェクトの中でアジャイル手法をそのまま使う、ということに日本ではなかなか至らなかった。これは一つには日本の受託開発という産業構造の問題がある。契約という壁を挟んで、ビジネス側と開発側がわかれ、「工程」で成果の進捗を確認していく形だ。そこでは、ウォーターフォール以外の適用が難しい。

しかし、ぼくの目的は開発現場が生産的に、協調的に、そして楽しくなること。そして、これをプロジェクトの成功とANDで取る、そんな現場を作ることだ。このような現場を作るには、開発の進捗をアナログに「見える化」し、現場の課題解決力と改善力をうまく高めることが必須だ。そして、そのヒントとしてアジャイルを使おう、と発想を転換した。ここでは、マスター線表がウォーターフォールだってなんだっていい。とにかく一週間という時間を区切って、「かんばん」にタスクカードを貼り出し、「朝会」をやって状況を共有し、週の最後に「ふりかえり」をして改善する。これらのプラクティスを骨格に、アジャイルとトヨタ生産方式からのアイディアを借用して現場作りをしていく。このそんな活動に「プロジェクト・ファシリテーション」(PF)という名前を付けた。これを編み出すには、永和システムマネジメントでのチーム角谷、そこに参加した、t_wadaさん芦沢さん、さらに、トヨタ生産方式を使った現場改善活動としての天野さん、富士通の和田さん坂田さんらとのディスカッションの成果が必要だった。それに、目に見えるもとと触れるもの、もっと言えば五感をプロジェクトで如何に使うか、という懸田さんとの議論の中から出てきたアイディアも多い。

これをプレゼンテーションとしてさまざまな場面で発表させて頂だいたところ、もともとぼくがアジャイルの「敵」だと思っていた管理者層、それから、日本の経営者層の方々、それからプロジェクトマネジメント系の方々から大変評価された。このことで、ぼくはアジャイルを目的ではなく手段だと考えるようになったし、また、「アジャイル v.s.ウォーターフォール」とか、「プログラマ v.s. 管理者」とか、敵・味方ではなく「現場を良くしたい」という気持ちで活動することが大切で、それぞれの現場にあった文脈の中で、自分たちでやり方を見つけていくこと。それを楽しみにできるような人づくり、が本質だと改心した。

おかげで、プロジェクト・ファシリテーションはぼくの1つのライフワークのようになっている。口コミだけで(アジャイルと無関係の分野を含む)多くの方から講演の以来をうけ、2004年から2010年の7年間にわたって、全国109箇所でお話をさせて頂いた。ここで多くの出会いがあり、思い出深いものが多いので、リストしたい。

  • 2004
    12-09 オブジェクト倶楽部
  • 2005
    01-28 OSC, 01-31 FITEA 合同合宿, 02-04 デブサミ, 03-10 富士通PST,
    04-21 ULSystems, 04-27 富士通PST, 05-19 富士通FIMAT, 06-21 JavaWorldDay
    06-29 オブジェクト倶楽部, 07-11 富士通大阪, 07-29 VANS
    08-04 九州「見える化」セミナー, 08-05 沖縄ITEP, 08-12 ITI
    08-30 SONY, 09-02 JPMF, 09-03 XP祭り, 10-11 PMConference
    10-15 フェニックス研究会, 11-02 KCCS, 11-22 富士通SSL, 11-24 ISトップフォーラム
    12-08 JavaFesta札幌, 12-08 PFU
  • 2006
    02-01 SORUN, 02-09 デブサミ, 02-16 NTTData, 02-17 稚内北星学園
    02-20 富士通社会基盤BG, 03-23 富士通FIMAT, 04-13 NIS PF
    05-08 PFP大阪, 05-22 NEC SWQC, 06-14 東芝ソリューション
    07-04 専修大学, 07-07 東芝SEPG, 07-10 NEC関西, 07-19 東レ
    07-20 富士通SSL, 07-26 CX, 07-27 富士通護国寺07-29 IPASEC,
    07-31 NEC中部, 08-31 PMシンポジウム, 09-08 見える化福岡
    09-22 NECソフトウェア東北, 09-30 XP祭り関西, 10-16 NECソフトウェア九州
    10-19 日本UNIXユーザ, 11-09 富士通(TPSとAgile), 11-22 NECソフト
    11-24 NSソリューション, 12-01 富士通長野, 12-05 QuaSTom
  • 2007
    01-17 NTTData, 02-01 Ricoh, 03-02 富士通VLSI, 03-20 福岡
    05-11 要求開発アライアンス, 05-15 関電, 06-14 NEC新潟
    07-12 企業研究会, 08-07 アジャイルプロセス協議会, 08-08 統計センター
    08-30 SWEST9, 10-16 日経コンピュータ, 11-19 ITI, 12-17 内閣府内閣官房(8/22訂正)
  • 2008
    02-21 にいがた産業創造機構, 04-02 IBM, 05-30 富士通FIP
    06-13 中電CTI, 06-26 ITフロンティア, 07-10 日科技連
    07-24 JavaKueche沖縄, 08-01 パイオニア, 08-19 インテック
    08-28 東京エレクトロン, 09-09 富士通FIP, 09-10 SDNA
    09-11 東京エレクトロン札幌, 10-08 富士通SSL, 10-11 九州PFP
    11-05 トヨタ, 11-14 ITA, 11-26 JASPIC神戸, 11-26 三菱(尼崎)
    12-04 リコーソフト, 12-09 日立(戸塚)
  • 2009
    01-09 沖縄日立ネットワークシステムズ, 01-20ミツエーリンクス, 02-10 NECソフト
    02-27 IT教育サミット(豆蔵), 03-23 原電情報, 04-09 QConTokyo
    04-27 NTT研究所, 05-23 PMフォーラム京都, 06-14 PMIサマーフェスタ
    07-15 PMカンファレンス, 07-22 匠塾, 07-23 ITA, 10-07 ITI, 10-15 日本総研
    11-23 PFP関西, 12-15 日立
  • 2010
    06-30 富士ゼロックス, 07-02 コニカミノルタ, 12-20 CEST技術セミナー
  • 2011
    08-26 PP&Mフォーラム, 09-09 PMシンポジウム, 09 09-あかねサロン
    12-15 日立製作所一日技術研修
  • 2012
    01-25 NTTデータ, 05-23 ドコモ・システムズ

特に、その過程でPFP(プロジェクト・ファシリテーション・プロジェクト)なるコミュニティができたことは財産だ。なかでもパナソニックの前川さん西河さんたけぷ~さんのPFP関西がやっぱり元気がいい。さらに、小川さんが広め、えと~さん阪井さんも参加しているチケット駆動開発(TiDD)、と組み合わせて、デジタルで併用する方向へも向かっている。また、官公庁でこれを実践した佐賀県庁の東さんにも出会えた。さらに、PFを運用できるファシリテーターを育てる活動を、PFI(プロジェクトファシリテーター協会)として松本さん十返さんきたむらさん、あまのりょ~さん、らが中心になって進めてくださっている。大変ありがたいことだ。

アジャイルジャパン、イノベーションスプリント(2009-2011)

2009年、ピークワンの前田さんが「アジャイルのイベントを日本でやりたい」と言ってきた。ぼく自身、そのころにはあまりイベントというものを自分で企画することに強い意志を持っていなかった。しかし、アジャイルをよりビジネスとして普及させるには、日本での事例紹介の場が必要だと思ったのがアジャイルジャパンのきっかけだ。。そこで過去の人脈の中から、実行委員をお願いした。「ソフトウェア開発最前線」を書いた前川徹先生、「受託開発の極意」を書いた岡島さん、コーチングでお世話になったアネゴ企画の上田さん、冒頭に登場したNECソフトの安藤さん、富士通でアジャイルと改善活動を推進する和田さん、前述大阪の前川さん西河さん、前述の倉貫さんDevLoveの高柳さん、などなどが積極的に参加してくれた。なかでも、EMZEROの野口さんは、「ペア割りチケット」や「サテライト開催」などの多くのアイディアを出してくれた。

Agilejapan 毎年、海外からの講演者1名と、日本からの講演者1名、という組み合わせで基調講演を選出した。2009年は、海外からMary Poppendieckを招いてトヨタ生産方式の話を、日本からはトヨタの黒岩さんを招いてアジャイルの話をして頂いた(写真)。お願いしたテーマはわざと得意分野と反対の相手の分野だ。このクロストークはアジャイルの本質が「自分の課題を自分で考えること」にあることを見事に露呈できたと思う。

2010年は、Alan Shalloway を向かえて、Kanbanとリーンの話を、そして日本からは野中郁次郎先生を招いて、知識創造と現場リーダの話をして頂いた。ここでも、スクラムという概念を最初に提唱したのが日本であり、「知の本質は実践と対話にある」というアジャイルの本質に食い込む話があって、大いに会場が沸いた。これがご縁で、野中先生とは次にイノベーションスプリント、という企画をすることになる。そして、2011年には、震災後一ヶ月という時期にも関わらず、Linda Rising(冒頭で紹介したパターンコミュニティのリーダ)が来日してくれFearless Changeを話し、今変わることの意味について、会場と深い共感の場をつくることができた。つづいて、日本からはUSP研究所の當仲さんに、業務を理解し顧客とともに作るシステム開発の話と、それを支える考え方の話をして頂き、ここでも人生観にまでいたる考察を会場と共にすることができた。ここにいたって、日本でのアジャイルの事例が多数あつまり、日本のアジャイルを、現場で作ろう、という機運が高まったと思う。

Innovationsprint 2011年、もう1つの大きな事件は、ソフトウェアにおけるScrumの創始者であるJeff Sutherlandと、そもそものスクラムを日本型のイノベーションプロセスとして発見した野中郁次郎先生の対談を実現させよう、と、かわぐちさんが発案した「イノベーションスプリント2011」だ。それを楽天の吉岡さんがサポートする形で、この企画が実現した。対談冒頭、Jeffが歴史的な出会いに声を詰まらせるなど、感動的な場になった。他にも、森崎さんに、東証アローヘッド、宇治さんの事例を日本発イノベーションの1例として品質やチームの面から企画してもらったり、クーニングさんによる国際的なアジャイル事例発表を長沢さんに企画してもらったり、佐々木さんによるプリウスの開発記を『パターン、Wiki、XP』の著者である江渡さんに企画してもらったりと、成果の多い会に出来た。

さまざまなコミュニティ

Scrumtao このようにアジャイルの活動を続けていくうちに、多くの他のコミュニティが自然発生している。その1つは、「スクラム道」(題字はジェフサザランドに書いてもらったと聞いている)というコミュニティ。ここでは、西村さん永瀬美穂さんRyuzeeさんらの、スクラムマスターが、現場でのスクラムマスターとしての活動をもちより、さらに、スクラムがうまく活用できるように、活動している。

Scrumtao_3 また、直接アジャイルではないが、ソフトウェア開発を愛している人たちが集まっている、DevLOVEという会がある。papandaさんらが中心となり、毎回パッショネットな会が開催されている。高柳さんとはここで出会った。AgileJapan2011では、ワールドカフェの企画で大きな協力をしてもらうなど、場の持つ力、そして、言葉の持つ力を信じている人たちだ。また、これもアジャイルとは直接の関係はないが、「要求開発」のコミュニティとも交流度が高い。おじさん度が高いなかで、てつ。さんゆこ。さん宮原さん、そして牛尾さんをはじめとする若い世代がこの流れにもアジャイルの息吹をいれている。2010年秋には近江さんらを中心に、アジャイルとテストをテーマとするユニークな勉強会agile.swtestが発足した。さらに、名古屋には、名古屋アジャイル勉強会、がある。山本さんをはじめ、徳富さんらが続けている、とっても長く続いている活動だ。最近では、AgileJapan2009の基調講演の黒岩さんとも協調しているようで、名古屋地区からの底力を強く感じる。

アジャイルは人と人との繋がりである

最後に、こうやって振り返ってみると、ぼくにとってのアジャイルはなんだったかというと、それは「活動を通じて繋がった人たちとの関係」であるように思える。解決したい課題があり、その手段を探すうちに、同じ指向の人と出会い、話し、企画し、相談する中で見えてきたもの、そしてその仲間たちそのものが、ぼくのアジャイルだと思う。人生論的な結論になってしまって申し訳ないが、そういう10年だったのだからしかたがない。このことを感謝せずに、なんのための人生だろう。

そして、まだまだたくさん、自分が関わって感謝している方がおり、紙面に名前を登場させられないのを残念に思う。

次の10年に、どんな出会いが待っているか。その期待を楽しみに、また仲間作りを続けて行きたい。

仲間と書いてアジャイルと読んで、ぼくと書いてXPと読もう。

(平鍋健児: 2011年7月3日、アジャイルブラジル参加中に執筆。2012年8月15日Web公開)


(※8月16日、以下加筆。福井から東京へ向かう新幹線の中にて。)

この記事は、Ultimate Agile Stories (Iteration1)向けに書かれた、私的な文章であり、もともとはこの本に登場する著者を全員(!)メンションすることが目的でした。なので、ほかにもたくさん日本のアジャイル普及に貢献しているのに、ここに言及できないのは残念です。どうちらにしても、モレなく言及しつくすことは無理なのですが、重要な出会いをもう少し足そうと思う。

ずっと最初からXPを実践している栃木のケントベックこと、咳さん。オブジェクト倶楽部にも何回か来ていただいたし、デブサミで元トヨタCEの片山さん、富士通の和田さんと、TPSやトヨタの考え方とアジャイルの接点も一緒に探検した。

オブジェクト指向からパターン、リファクタリングからXPへと繋がるキーパーソンの一人、Martin FolwerのBliki を地道に日本語にして紹介してくれている、kdmsnrさんこと角さん。EstherとJohanna Rothman が来日したときに、「アジャイルチームビルディングカンファレンス」を一緒に開催した。

『パターン、Wiki、XP』著者の江渡さん。前書きを書かせてもらったし、講演の機会をいただいたり、飲みにいったりしている。アカデミックということでは、鷲崎さん(今年のAgile2012に参加中と聞いている)。JPLoPからの付き合いであり、2002の沖縄のMensorePLoPに一緒に参加した。さらに、最近お近づきになれた、森崎さん。レビューや品質、というクラシックな話題からアジャイルとの接点でお話させてもらっている(また、冗談のセンスに脱帽している)。

翻訳ということでは、日経BPの高畠さんに多くの翻訳本を出してもらったし、(今ドイツに住んでいる)高嶋優子さんと、本当にたくさん共訳した。継続的インテグレーションを訳した小野剛さんや、NECの佐野さん、高徳さんたちと、メーリングリストでレビューしながら翻訳するスタイルで、10冊近く出したと思う。

オブジェクト指向の原理、原則からXPへの道を一緒に歩んだまさ~るさん、こと、故石井勝さん。助田さんと一緒にオブジェクト倶楽部にも来て頂いたし、ユニットテストのフレームワーク解説はすばらしかった。彼の作品(Quick JUnit: Eclipseプラグイン)を引き継いだ、近藤さんは、前述Lindaの本、Fearless Change 読書会を続けているし、Kanban本の翻訳(途中)をしている。

うちわが続くが、f-kinoこと木下さんとは『The Art of Agile Development』を監訳して、著者のJames Shore に一緒に会いに行った。yattom こと安井さんは、Agile2008で日本のアジャイル状況を世界に伝えるとともに、アジャイルをゲームによって表現する活動を日本で続けている。開発プロセス、というトラックが「デブサミ」にはずっとあって、その企画では岩切さんにお世話なった。この部分では、角谷さんもpapandaもずっと近くにいた気がする。

角谷さんには、RubyKaigi2007(RubyとAgileの架け橋となっているDave Thomasの伝説のキーノートの回)でライトニングトークスの機会をもらった。彼はRubyとアジャイルをクロスオーバーする活動を日本だけでなく海外へもアピールする方法で続けている。角谷さんやナヲトこと西村さん、近藤さん、角掛さんが訳した『アジャイルサムライ-達人開発者への道 』の読書会が、「アジャイルサムライ道場 」として各地域に続々と立ち上がっている。アジャイルサムライ道場としては、湯島道場、渋谷道場、新宿道場、DevLOVE道場、札幌道場、島根道場、埼玉道場、秋田寺子屋、京都道場、静岡道場、大井町道場、金沢道場、大阪道場、松山道場など、さらに企業内道場として、エイチーム道場、BIGLOBE道場、TIS道場、ECナビ道場、ドワンゴ道場、ドリコム道場、永和システムマネジメント道場などが存在するらしい。特に個人的に湯島道場の梶浦さんとは、ダイアログファシリテーター高柳さんに対談記録をしてもらって、新しいエンジニアの働き方について語り合った。

Rubyとアジャイル、ということでは、札幌えにしテックの島田さんとの出会いも忘れられない。JavaFesta札幌の二次会でRuby札幌のみなさんと語り合った。札幌ではこの流れで、TELSTの合田さん、鈴木さんと出会い、アジャイルジャパン札幌サテライトにつながった。

また、前述のt_wadaさんとは、最初にオブジェクト倶楽部に参加頂いたときから折に触れて長い付き合いをしている。t_wadaさんは「TDD Boot Camp 」というテスト駆動開発の啓蒙活動を、東京、北陸、名古屋、札幌、福岡、佐賀、仙台、長野、長岡、横浜、大阪、岡山(もうすぐ)など日本国内各都市で開催している。

スクラム方面では「すくすくScrum」というワークショップが老舗で30回以上の開催を数える。
江端さん、林さん、海江田さんなどが中心となっている。林さんは、Agile2008でパーカッションを使ったドラムサークル、を実演したつわものだ。2011年にはScrum Gathering が開催されている。ヤフーの高橋さんが実行委員長。前述の川口さん、海江田さん、吉羽さん、西村さん、江端さん、アギレゴの谷口さん、永瀬さんなどが企画している。(来年1月開催も楽しみにしています)。そういえば、この主要メンバー、それから、原田さんたちと、Agile2010に参加したのも楽しかった。黒岩さんが日本から発表する、という衝撃。年をとっても常に自らフロントにいたいものだ。原田さんには黒岩さんのセッションのほかにも、要所要所で、同時通訳をして頂いたりアジャイルジャパンでもお世話になった。

あと、企業でのアジャイル導入でがんばってる人、ということで楽天の藤原さんと、VOYAGEのこしばさん、の組織改革のプレゼンには本当に感動した。DevLOVEのきんちゃん、こと矢島さんの情熱とカポエラにも。さらに、島根県庁でビジネス実証事業をやっている、杉原さん、のパッションにもいつも驚かされる。Rubyとアジャイルで、地元の企業を盛り上げようとしている。

(※ 8月16日さらに追記まだまだメンションが足りていない。。。)

古くから、XP祭りの運営でお世話になっている人。斉藤良太さん、くまさんこと大熊さん。さらに、.NET系で福井出身の小島さん。うー、まだまだたくさんいる。。。。

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