Gerald Weinberg(ワインバーグ)氏との思い出
現在、私は胸腺癌である。珍しい癌であり、積極的な治療によっても1年後生存率がおそらく25%という進行性の癌だ。どうも、この嫌なやつは、急速に私の体中に転移し、すでに明らかな症状がでてきた。あちこちのいたみ、精神不均衡、呼吸、聴覚、そして視覚の異常、そして、極度の疲労。email さえもうまく処理しきれない、ましてや電話や訪問を受けることは難しい。
医者がたった今、今後の治療計画について詳細に話してくれた。これは治療できない、少なくとも治すことはできない。手術は不可能で、科学療法も痛みの軽減と延命が限度であり、そして、その命は3ヶ月から最長でも3年。。。。。(以下つづく)
http://www.caringbridge.org/visit/geraldmweinberg
この文章は、ぼくが尊敬する Gerald Weinberg 氏によるものだ。彼は、自分が進行性の癌であること、そして、自分の残りの人生をより意味あるものにするため、CaringBridge.org というサイトで、上記の文章と、残り人生のジャーナル、そしてゲストブックを公開した。ジャーナルの日付は、今年11月8日、彼がAYE(Amplify Your Effectiveness)カンファレンス開催中に書いたものだ。
ぼくは2003年ソルトレイクで開かれた Agile Development Conference 2003 に出席したときに、彼に念願の挨拶をすることができた。とても温和な表情で、握手をしてくれた。そのとき、彼は"Effective Habits in Software Development”(『ソフトウェア開発における効果的な習慣』)という内容で、犬の家族を題材にしたビデオを中心にしたユーモア溢れる基調講演をした(彼は本当に犬が好き)。ここであげられていた「習慣」にはソフトウェア開発者というよりも人間として他人と協調するために忘れてはならないことが多く語られていたと覚えている。例えば、「感謝をする」という、習慣。効果的なという言葉が題名についた実際的な講演の中に、このような態度や心構えのことが多く出てきていたのが印象的でした。
この Effective という言葉、うまく訳せていないのですが、効果的というよりも、「他人に影響を与える」という意味あいが強いと思う。例えば「七つの習慣」では「コントロールできる範囲から影響できる範囲へと自分の意識を移す」ことが書かれているが、この影響を与える力がEffectiveness。実は、感謝をすることが自分の能力を高めるために、他人へ影響を与えるためにとても大事なんだ、ということなんです。これは現在の自分に大きな影響を与えている考え方の1つになっている。
写真は永和システムマネジメントの天野さんと一緒にワインバーグ氏ととってもらった写真。彼の胸ポケットにあるのが AYE カンファレンスのパンフレット。彼はこのカンファレンスを生涯のミッションとした。AYE(Amplify Your Effectiveness)のサイトを見ると、そこには『アジャイル・レトロスペクティブ』の Esther Derby の姿が見える。また、今回の CaringBridge の彼のサイトがあることを twitter 経由で教えてくれたのは『オブジェクト・デザイン』の Rebecca Wirfs-
ソフトウェア開発の問題は多くが技術的なものだと思われがちだが、実は人間の側の問題だ。
ということを一番早く指摘した人の一人だから。そして、多くの名著。ソフトウェア開発に携わる人であれば誰でも読んで欲しいものだ。ここにamazonのリストを紹介しておく。
1つだけ、お勧めするとしたら『ライト、ついてますか』。(原題は、"Are Your Lights On ?")問題の解決は、どこにあるか?既存の常識にとらわれていないか?問題自身をもっと突き詰めて考えてみたらどうか?。。。
ぼくが新入社員にいつも勧める本でもあります。
(※ 彼のページがあるのは CaringBridge.org というサイトで、このサイトには「健康がもっとも大切なときに家族と友人を繋ぐサイト(Connecting Family and Friends When Health Matters Most)」というフレーズが着いている。)