ソフトウェア技術者のための英語(8: 突撃)
ソフトウェアの世界では、海外の有名な人がときどき日本にきたり、あるいは海外のカンファレンスにこちらから出かけていって会うことができる。こういうときは、何か話す、ということがとても重要で、これを「突撃」と呼んでいる。相手にどうやって話かけようか?どうやったら自分の印象を持ってもらえるだろうか。
第一声で、"Hi, I'm Kenji, nice to meet you." というお決まりの挨拶はできる。問題はこの後だ。この後に何か話せるかどうかで、相手とのこれからの関係が決まってくる。
第一声を掛けた後、何を話すか。時間は1分と考えたほうがよい。自分自身のエレベータピッチ、というやつだ。言うことは2つ。
- 私は、あなたをどう尊敬しているか(私はなぜあたなと話したいか)。
- あなたからみて、私はどういう関わりがあるか(あなたは私と話すとなぜ得か)。
ぼくはこれらをこの順序でいうことにしている。1は、「あなたを尊敬しています」ということをどう伝えるか、ということ。これは、自分のことを快く受け取ってもらえるための入り口である。できるだけパッションが伝わるように、熱っぽく入る。そして、2は、相手に自分の印象を持ってもらい、自分と話す価値がある、と思ってもらう。ここが重要で、その後、仲良くなれるかが決まる。大概日本のエンジニアは、2が下手なように思う。自分の自慢をするのではなく、「あたなから見た」、「自分の価値」について話すのだ。何か印象をもってもらうように。
例えば、ぼくの場合、Kent Beck を先生のように慕っており、彼に直接会う前から、どうやったら彼に挨拶ができるか、と考えていた。最初に会ったのは、XP祭りだったと思う。
1で、ぼくは、「あなたの本を読んで感銘をうけた。日本でもあなたの考えを広めようと思っている」と言った。そして、2では、「日本で、XP-jp というメーリングリストを始めた。先月1,000人に達しました。」そして、「先日のあるカンファレンスで、日本でのXPの現状という発表をしました。これが資料なんですが、見てもらえますか?」と言って、あらかじめプリントアウトしておいたこの資料を渡した。この資料は意図的に英語と日本語を併記して作った。
Kent Beck は、ぼくの活動にお礼を言ったあと、資料をぱらぱらと見ながら、
I think I saw this picture somewhere.... You drew this!
You know, a picture communicates more than words.
と言った。このとき、ぼくは Kent Beck にコネクトした、と思った。実際は、この後、長いメールや訪問による親交があるのだが、この時点で彼がぼくのことを認識したのは間違いない。彼の中で、この絵がぼくのアイコンになったはずだ。mixi や twitter のアイコンのように。
繰り返そう。
- 私は、あなたをどう尊敬しているか(私はなぜあたなと話したいか)。
- あなたからみて、私はどういう関わりがあるか(あなたは私と話すとなぜ得か)。
をこの順で。できれば、インパクトのあるものを添えて。絵だったり、芸だったり、エピソードだったり。
あ、そして、短い時間しなかいパーティや講演後の会話などでは、自分の名前は、フルネームで言う必要がない。覚えてもらえる自分の「呼んでもらいたい名前」を伝える。ぼくは、自分が Kenji という名前だったことをとてもラッキーに思っている。外国人からみて、覚えやすい名前なのだ。
あ、もう1つ。パーティで数人が輪になって会話をしている、という場面で突撃するのはかなり勇気がいる。もっともいいのは、「紹介」してもらうこと。その人を知っている他の人に繋いでもらう。ぼくも最近は、パーティなどで人を繋げる側の役割を買って出ている。あ、この人にこの人を紹介したいな、と感じると、自然とそういう繋げる行動が出るようになってきた。もし、ぼくがいるカンファレンスで、繋げて欲しい人がいたら、一声掛けてください。