デジタルコンテンツ流通の潮流を見据えて

電子出版ビジネスの3つの肝とは、SocialDRMについて。

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電子出版は従来からの予測の通りAmazonの寡占が定着しつつある。一方いくつかの新しい試みが行われて成果を見せつつある。

  1 定額読み放題

  2 出版社または著者による直販

  3 紙媒体と電子媒体の連携販売

  4 透かし技術によるSocialDRM

これらの中で定額読み放題はこれまでコミックなど特定ジャンルのものを出版社がアプリ経由で直接提供する形が多かったが最近はAmazonがKindle Unlimitedとしてジャンルを横断して一度に10冊までダウンロードして読むことのできるサービスを始めている。

電子出版ビジネスの肝は次の3つに尽きる。

  1 InternetやSNSなどによる認知

  2 課金(EC

  3 DRMなどによる著作権コントロール

もちろん常に例外はあって、すでに十分認知されていて改めて認知のためのプロセスを必要としないもの、広告モデルのように無料で配信するもの、著作権管理を必要とせずに生のファイルを配信するものなどがあるが、いずれにしても上記3つの要素の中になぜ出版社がAmazonに頼るかの理由がある。

つまり

  1 みずからのコンテンツの告知や集客をすることが難しい。

  2 みずから課金ECシステムを構築することが難しい、そしてユーザーは個々の出版社ごとに課金登録をしたくない。

  3 みずからDRMなどのシステムを構築して著作権管理するのは難しい、そしてユーザーは個々の出版社ごとの異なるDRMに対応したアプリを使いたくない。

この中で3の著作権管理についてSocialDRMの動きについて考えてみよう。

Amazonを出版社が使う一つの理由はAmazonがみずからのDRM技術でコンテンツを管理してくれるからだ。これによって出版社はコンテンツが不正に流通または共有されることを心配しなくてよくなる。ただし反面これによって出版社はAmazonに縛られることになる。そこでいくつかの出版社はSocialDRMを使うことでAmazonの呪縛から離れて独自の販路を確保する道を選んでいる。DRMとしての不正防止機能は制限的であるが十分な不正抑止の効果が期待できる。

SocialDRMとは通常のDRMとは違ってファイルに暗号をかけずに代わりにコンテンツの販売時に購入者や販売店または販売日時を特定できる情報を可視または不可視の透かしデータをコンテンツに埋め込んで配信するものだ。暗号がかかっていないので購入者は自分の好きな端末で好きなビュアーアプリで閲覧することができるし、ファイルをコピーして複数の端末で見たり、場合によっては家族や近い友人と共有することもできる。自分の名前や情報がファイルに埋め込まれているのでそのファイルを不特定の人がアクセスできるような場所に投稿したり配ったりすることを心理的に抑制するので昔からSocialDRMと呼ばれている。技術としては透かし技術の応用である。

これまでSocialDRMを用いて出版社された最大の例はHarry Potterシリーズの電子版を著者自らがPottermoreという会社を作って販売したものだろう。ほかにはTim O'Reillyのように一部のTech系出版社の例がある。これらはいずれも前述の電子出版の三原則の内の1と3をクリアーしているものだ。つまりHarry Potterのように十分な認知がすでに終わっているコンテンツで新たに告知作業をする必要がない。またO'Reillyのように限られたニッチな読者を対象としたコンテンツも巨大書店の集客や告知の力はに頼る必要がない。つまりこれらの出版社はAmazonの集客や著作権管理に依存する必要がないケースだ。独自に課金をしなければならないという課題はあるが3つ内の2つの要素をクリアーしている。

Amazonなど既存の書店の呪縛から離れるということは大きな意味がある。単に書店に支払う30+%のマージンの節約だけでなく、直接販売することで読者と直接繋がることができ、様々なマーケティングや読者サービスを展開することができる。

個人間での不正な共有がコンテンツの売り上げにどの程度影響を与えているのかこれまで詳しい分析は無いが決して大きな数字だとは思われない。むしろユーザーの利便性を考えるとこれからの電子出版の一つの主流になるだろう。

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