デジタルコンテンツ流通の潮流を見据えて

Subscriptionは音楽だけではない。(再登録)

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6月末にアップルミュージックのサービスが日本でも始まった。Spotifyなど先行サービスがあって2−3年前から音楽はSubscriptionが主流になると言われていたがアップルの参入で流れは決定的になった。LPがCDになりデジタルの世界になってダウンロード型が主流になるかと見られたがそのすぐ後にSubscription(定額定期聴き放題サービス)の時代になった。

アップルミュージックをさっそく使っているが音楽の消費行動としては非常にここちよい。好きな音楽を検索して聞くだけでなく、好みのジャンルのラジオ型配信、キュレータと呼ばれる人が選択してくれるFor you、好きなアーティストを選んで関連するコンテンツに触れられるConnectというサービスもある。私はJazzとClassicをジャンルで選んでいるのでConnectではベルリン・フィルとかアンナ・ネトレプコなんていう超大物とConnectできる。ベルリン・フィルといえば昔はSONYとべったりだった気がするが今回は積極的にアップルミュージックに関わっている。サイモン・ラトルがビデオメッセージを提供したりしている。こうしたサービスを嫌がる人もいるが多くの人にとって気軽にさまざまな音楽に触れられる良いサービスだと思う。また従来のCDやダウンロードミュージックを買うのとちがってアップルミュージックの中で自分にとって新しいアーティストや曲に出会うたのしみもある。アップルミュージックが始まるときにクレームをして話題になったテイラー・スウイフトなんかもたくさん露出しているので「Shake it off」などを聞いてみたりもした。これなどもSubscriptionでもなければ絶対に選択して聞いたりしないのは確かだ。

こういった音楽の楽しみ方について意見はいろいろあるだろうが好き嫌いはべつにして今後の音楽視聴の主流になることはまちがいない。

Subscriptionの一番の効果は少額課金のストレスをユーザーから取り去ることができることだろう。AppleやAmazonなどの大手ECにユーザー登録されているばあいでも決済ごとに購入のためのボタンを2−3回は押さなくてはならない。100円の曲であってもこのストレスのために躊躇してしまうケースは多い。これは販売する側もおなじで少額課金を運用するためのシステム負荷は大きい。

一方アーティストにとってはどうだろうか?一部のレーベルやアーティストはCDやダウンロードミュージックの売上が減るとしてSubscriptionに反対しているが本当にそうだろうか?こういったことは大きなロングテール曲線をえがく音楽業界でどこに位置しているかで違うだろう。少数のトップに位置するアーティストにとってはそんなに大きな影響はないのではないだろうか?むしろ音楽に対して対価を払う層が増えることで得られる収入も増えることが予想される。問題はテールのアーティストたちだ。

アップルやSpotifyなどのコメントをみるとおおよそ収入の70%を権利者側にもどすとしている。それをどのように各アーティストに分配しているのかは明らかにされていないが、Subscriptionの原則からいうとコンテンツの利用に応じて比例配分することになると思う。アップルミュージックのターゲットとする市場は1億人だそうだが、まずは1000万人のユーザーが毎月1000円支払ったとすると100億円の収入がアップルにはいる。70%つまり70億円がアーティストに配分される。乱暴に計算すると、10%のトップランクのアーティストが60%の配分を受け、次の30%の二番手のアーティストが30%の配分を受けるとすると、多くのテールの60%のアーティストが10%の収入を分けることになる。70億円の10%だから7億円を仮に5000人のテールのアーティストが分けると一人あたり月14万円の収入になる。もちろんこれは平均値なので収入ゼロのアーティストがたくさんいるしもっと受け取るアーティストもいるだろう。とにかくSubscriptionはアーティストにとってそんなに悪い話ではないように思うのだがいかがだろうか?テールのアーティストがいくら位のコンテンツ収入を得ているのか知らないがSubscriptionでこれくらいの収入があるのはいいように思う。

Subscriptionのもう一つの従来との違いは、これまでCDやダウンロードの場合は媒体を売っているわけで一度販売されるとそれ以降の収入はない。購入したユーザーが何度聞こうが追加収入はない。Subscriptionの場合は媒体ではなくコンテンツの利用にたいする課金なのでおなじ人が何度もその曲を聞けばその分だけ収入が増える。一時的なヒット曲を出すのもいいが、長く親しまれる曲は常に継続的な収入が期待できる。カラオケでよく歌われる曲の印税がアーティストにとって嬉しいのといっしょだ。

コンサートでの売上といっしょで音楽の消費(利用)に対しての課金モデルが成立するわけだ。LP、CDやダウンロードミュージックの場合は媒体を売っていたもので一度しか聞かれないものも擦り切れるまで聞かれた場合も収入がおなじだった。音楽家にとっては本来のビジネスモデルに戻ったと考えられる。

なるい

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