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デジタルコンテンツ流通の潮流を見据えて

Subscriptionは音楽だけではない。雑誌や書籍もおなじビジネスモデルを模索している。

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6月30日から待望のApple Musicのサービスが始まった。ぼくも開始早々ファミリー登録した。ファミリー登録だと月額1480円で6人が利用できるので一人あたり246円で無制限の音楽サービスが受けられる。我が家には5人のiPhoneユーザーがいるので迷わずファミリー契約にした。

Appleは基本的に買収したBeatsのサービスを引き継いでいる。iTunesで購入した曲やCDから取り込んだ曲もマイミュージックとしてストリーミングされる曲と同じように扱うことができる。詳しいサービスについてはべつに感想などを紹介したいが、今日はこうした一般的にStreamingによるSubscription(月額定額サービス)とよばれる形式のビジネスモデルについて考えてみた。

これまでCD販売をビジネスの基本としてきた音楽家はここ10年くらいの間に急激な環境変化がありビジネスモデルの変革を否が応でも求められてきた。そしてここ2−3年のSubscription型の登場で更に変革がすすみつつある。

音楽家または音楽レーベルはSubscription型のビジネスに恐れをいだきながらもこの大きな流れには逆らうことはできない。技術の進歩で物理的な媒体(この中にはデジタルファイルのダウンロードも含まれる)で音楽コンテンツを流通させるのはもう成立しなくなった。問題はそこで音楽家に対する報酬がどう変化していくかということだ。音楽家以外の音楽レーベルや街のCDショップは通常のビジネスとおなじように環境の変化についてこれなければ退場してもらって新しい役者が登場すればいいのだが、音楽家はコンテンツを作り出す元の存在なので、もしも音楽家が新しいオリジナルなコンテンツを作り出せないまたは作りにくい環境になるのだとしたらそれは大きな問題だ。そのように一部の音楽家からの発言がある。

とくにインディーズと呼ばれるロングテールに属する音楽家の露出に機会や報酬が制限を受けると言われている。本当にそうなのだろか。自分でかんたんな計算をしてみた。

アップルミュージックの目標ユーザーは1億人だそうだがまずは1000万人とする。月額1000円の料金が払われると100億円の売上がアップルに入る。アップルは70%以上をコンテンツ側に払うと言っているので(実際は60%を下回るという情報もある)70億円をコンテンツ側で分配することになる。その際Subscription型ビジネスではいつものロングテイルの法則がいきてくる。なんの根拠もないが仮に60%をトップレベルの音楽家が占め、30%を次のミドルクラスの音楽家が占めるとすると残りの10%がその他のインディーズと呼ばれる音楽家で分配される。仮にそのクラスの音楽家が5000人いたとすると7億円を5000人で分けることになる。一人あたり14万円だ。

よく知らないがこれってそんなに割の悪いビジネスではないのではないだろうか。月に14万円、年間168万円の収入がアップルから得られる。ロングテイルの音楽家がこれまでどれくらいのCDを売っているのか知らないがCD1枚が1000円だとするとCD140枚を売ったことになる。そしてCDのビジネスとの大きな違いはこの音楽が聞かれる限り毎月14万円の収入があるということだ。地味だが長く聞かれる音楽を作ればかなり安定した収入だ。CDやダウンロード型だと一度売ってしまうとそれが何度聞かれても追加の収入にはならない。ぎゃくに人気のある音楽家の曲は流行っている時にはたくさん聞かれて収入もおおいが、流行が終わり聞かれなくなればそこで収入は減り始める。

これまでの媒体の消費に対する報酬ではなく音楽の消費に対する報酬になるところが一番の違いだ。

ぼくの計算はとても乱暴なものだが大筋はこんなところだろう。海外からの情報ではアップルまたはSpotifyなどは1ストリームあたり0.6円程度をコンテンツ側に支払うことになると言っているがこれについては疑問がある。Subscriptionビジネスというのは売上から経費と販売側の利益を取ったあとのものを実際の利用に応じて分配するのが原則なので0.6円とか固定的な金額が支払われるわけではないと思う。たまたま想定したビジネスだとこれくらいになるという目安だと思う。このことについては詳しい方に間違いを訂正していただきたい。

つづく

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