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デジタルコンテンツ流通の潮流を見据えて

DRMからIRMへ、保護への欲求と利便性のあくなき戦い

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主に音楽、映像、書籍、雑誌などのいわゆるコンテンツの著作権保護の仕組みをDRM(Digital Rights Management)と呼ぶのに対して、企業などが扱う文書や情報を保護する仕組みはIRM (Information Rights Management)と呼ばれる。

DRMとIRM、どちらも技術的には基本的に同じ基盤で構成されている。デジタルファイル(DRMではコンテンツと呼び、IRMではドキュメントまたは文書と呼ぶ)に暗号をかけそのファイルをオープンしようとした時に本人認証と権限の確認を行う。権限が確認されると専用のビュアーアプリケーションまたは既存のアプリケーションとアドインプログラムを使ってファイルをオープンする。

アイドックは新しい形の企業向けIRMサービスHOGO Enterpriseを始めました。

HOGO Enterpriseの報道発表

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出版系のDRMサービスでは原則としてコンテンツをユーザーに視聴または購読させることが目的なので、コンテンツの編集や印刷は制限されている。ビジネス系のIRMではマイクロソフトオフィスなどを使って見るだけでなく編集して別名保存したりすることが必要になるのでIRMはその際にも保護された内容が目的外に使われることが無いように制限する。
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ファイルの印刷も許可または不許可の選択だけでなく、印刷可の場合にも印刷部数を制限することもある。また最近ではファイルに可視または不可視の透かし(Watermark)を挿入してファイルが想定外の転送がされた場合や印刷または画面キャプチャーされた場合にそのファイルの出処をできるようにすることで不正利用を抑制する方法も一般的になりつつある。透かしによる不正利用抑止はSocialDRM(ソーシャルDRM)と呼ばれている。つまり技術的な仕組みでファイルの利用を制限するのではなく、ファイルの中に名前やIDなど本人を特定する情報が含まれていることからそのファイルの不正利用を抑止しようとするものだ。
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情報の内容が複製されて想定外の人に伝わったり、想定外の利用がされるのを防ぎたいというのは大昔からの人類に普遍的な欲求であって、昨今のIT技術を待つまでもなく昔からいろいろな方法が開発されてきた。もっともシンプルなものは情報が漏れた場合またはある人から情報が漏れる可能性がある場合、その人間を殺すというのがある。エジプトのピラミッドの設計者や現場監督は必要なくなると同時に殺されたという話を聞いたことがある。これは現代の闇の世界では今でも標準的なソリューションであるかも知れない。
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紙に書かれた情報または画面に表示された情報がキャプチャー(画面保存)されて漏洩するのも昔からある方法でそれを完全に制限することは難しい。とくに最近はデジタルカメラが信じられないほど普及してしまっていて紙であろうが画面であろうがカシャされてしまうのを防ぐことはできない。実際カメラが今日ほど溢れかえる世の中になるとはひと昔前には想像することもできなかった。街を歩くほとんど全ての人が何らかのカメラを持ち、街じゅうに監視カメラが網羅されている街はひと昔前のSFの世界だ。
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DRM/IRMによるサービスを提供している会社の人間として断言できるのは、完全に情報が守りたかったら、紙にも残さず、デジタルファイルにも残さず、自分の頭の中だけに留めること。そして敵の拷問にあった時に秘密を守りきる自信がなければ、自分の頭の中からも消去することだ。
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