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デジタルコンテンツ流通の潮流を見据えて

電子書籍は出版社の味方・・・のはずが

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またグラフを見ていただきたい。出版は1996年に2.5兆円でピークを迎え、その後急激に売上は落ち続けている。つまり出版の売上が減少しているのに電子書籍はまったく関係していない。大きな影響を与えているのは携帯電話、インターネット、スマートフォーンというネットワーク機器とサービスだ。それまで情報を得る手段がテレビ、新聞、雑誌、書籍であったのが、これらのネットサービスの出現で大きく変わり、同時に出版は急激に落ち込みを始めた。アメリカでキンドルが発売されたのが2007年、日本では2012年である。電子書籍は出版の落ち込みとはまったく関係がない。

むしろ電子書籍は出版社にとってはWebに持っていかれがちの読者を引き止める手段だと考えた方が正しい。これまでの雑誌や書籍の形をそのまま継承して電子化できる手段として電子書籍や電子雑誌は分かりやすかった。新聞と電子新聞の関係も同じだ。電子書籍は既存の紙媒体の出版の変形でしかない。それにもかかわらず、出版社は電子書籍を紙媒体のビジネスを奪うものだとして、新刊を電子化しなかったり、電子版の価格を下げなかったり、疑心暗鬼の状態から出ることができない。実際に既存の出版のパイを奪っているのはもっと大きなインターネットという大きな社会変動である。電子書籍はどちらかと言えば出版社にとってその変動に向き合うための道具であるのに、その電子書籍を自らの既得権益を奪う敵であるようにみてしまっている。

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