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デジタルコンテンツ流通の潮流を見据えて

Financial TimesはなぜHTML5を選択したのか、自らTechnical Q&Aとして公開している。

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AppleやGoogleが競って雑誌や新聞コンテンツを呼びこもうと定期購読の仕組みや柔軟な課金サービスを提案している中で、Financial Times(FT)が多くの既存のアプリケーションユーザーがいるにも拘らずにHTML5ベースのWebアプリに移行したのは注目に値する。FTはその技術的な理由をFT Web App-Technical Q&Aとして公開している。簡単に紹介すると次のようになる。単に、30%のアップル課税を逃れるという以上の強い意志が感じられる。

Why did the FT decide to create an HTML5 web app?

1)新しいコンテンツや機能にユーザーは直ちに触れることができる。App Storeなどを通るプロセスが無く、常にユーザーは最新のバージョンを見ることができる。
2)複数の異なった端末に対して専用のアプリケーションを開発していくのは、物理的にも経済的も管理することができない。
3)多くの場合端末ごとの専用アプリケーションは単なる経過的(bridging)解決で、Web技術は常に最新でリッチなユーザーイクスペリエンスを提供することができる。新しい機能は専用アプリケーションではなくHTML5ベースのWebアプリケーションの方により多く見られる。ただし、常に特定のブランドや端末のハードウェアと密にインテグレートされたり、特別に早い性能を必要とするようなアプリケーションのニーズはある。(ゲームなどはその良い例である)

What is the difference between HTML5 and native apps?

1)HTML5とはHTMLやCSSやJavaScriptを含む数十の技術からなる最新のWeb標準の総称である。これらの技術は二十年にもなるアクセシビリティやセキュリティまたは互換性といったWebの歴史的な経験値を受け継ぐ何世代ものバージョンから進化したものである。特定の企業に属すること無く広く市場で支持されている。
2)専用アプリケーションは特定のハードウェアやOSを利用して開発される。AppleやAndroidまたはBlackberryなどの専用アプリケーションはそれぞれ違った異なった技術を持っている。例えて言うと、ある規格の線路用に開発された列車の後に別の規格の線路用の列車を開発しなくてはならないのと同じことだ。
3)専用アプリケーションとWebアプリケーションの違いはその開発段階だけでなく、アクセスの方法が違う。HTML5は単なるWebサイトだ、ブラウザーでアクセスするだけである。専用アプリケーションはAppStoreやAndroid Marketなどからダウンロードしてインストールする必要がある。これらのApplication Storeは特定の企業によってコントロールされ、時に課金されたり、HTML5ではあり得ない束縛を課す。HTML5は純粋にWebによって提供される。

(つづく)

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