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デジタルコンテンツ流通の潮流を見据えて

Financial TimesがIOS版をHTML5に変えた。かなり完成度の高いコンテンツになっている。

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英経済紙ファイナンシャルタイムズがIOS用をアプリからHTML5ベースのWebアプリに変えた。 これまでのアプリ版と同様の操作性を持ちオフラインで見ることができる。これでFTはユーザーに直接課金できるだけでなく直接繋がることができる。

FT Web AppはHTML5で作成されたコンテンツで、端末には専用のアプリケーションを必要とせずに、Webブラウザからwww.app.ft.comにアクセスして閲覧する。購読登録するとWeb AppだけでなくPC他の端末からもコンテンツを見ることができる。コンテンツを端末にキャシュしてオフラインで閲覧することができる。「FT Web App」と呼ばれるWebアプリで今はAppleのiPadとiPhoneだけに対応しているが今後はAndroidやBlackBerryなどに広げていく。

キャンペーンとして、6月14日まで全アクセスが無料なので早速IPAD2で試してみた。アプリ版のFT Mobile Editionもまだ使えるので両方を比べてみると、ほとんどその操作性に差は無いように見える。左右のSwipeでページが送られ、長い記事は上下にスクロールする。見出しをタップすると、その記事のページに移動する。フォントサイズの変更ができるのも同じで5段階のサイズから選ぶことができる。メニューにある機能はフォントサイズの選択と検索ぐらいで後は直感的にコンテンツを閲覧することができる。ただ、一番の機能であるはずのオフライン閲覧をすることができなかった。何かの設定があるのかいろいろ試してみたがオフラインにするとコンテンツは一切見ることができない。オンラインで閲覧している時に各ページで"Downloading contents for off-line use"というメッセージが出てプログレスバーが表示されて確かにコンテンツをダウンロードしているのだが、オフラインにすると一切見られない。どなたかオフラインでの見方をご存知の方は教えてください。また、最初にアクセスした時に、オフライン閲覧のためにキャッシュのサイズを大きくしますか?というメッセージが出て、OKすると、50Mb分のスペースを確保する。

今回アップルの定期購読システムを使わずにWebアプリとしてコンテンツを公開することにするに当たっては十分な検討がされたはずで、FTのサイトにはFAQとしてその経緯を詳しく説明している。FTは専用アプリを使ったサービスをだいぶ前から行っていたので数万人のユーザーがいるはずだが、それらのユーザーをWebアプリの方に誘導するのも大変だろうし、細かな点ではWebアプリでは専用アプリに比べて機能や性能が劣る部分もあるはずだが、今回の結論に至った理由としてはIn App Purchaseを逃れて30%のアップル税を回避するだけではない。FTのサイトに詳しく書かれているが、多くの端末ごとのアプリを開発保守する負担が大きいこと、新しい機能をすぐに提供できること、ユーザー情報をFTが直接取得管理できることが挙げられている。

アメリカの新聞雑誌業界ではFTのようにHTML5を基本としたコンテンツ作りが主流になってきている。書籍はすでにEPUBが主流となっているが、雑誌のようにレイアウトが重視されるものや、情報の鮮度が重要なものはEPUBでは無理がある。日本ではまだ紙面を画像のまま配信する方法が主流だが、画像ではHTML5のようなインタラクティブなコンテンツはできないし、IPHONEのような3−4インチの端末は諦めざるをえない。

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