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デジタルコンテンツ流通の潮流を見据えて

凄いサービスが始まった eBook Exchange

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Screen_shot_20110107_at_14113_am_2eBook Exchange.incがAmazonまたはBarns&Nobleで買った電子書籍の貸し借りをマッチングするサイトを公開した。eBook Exchange

仕組みを簡単に紹介する。例えばAmazonで買った電子書籍を「貸します」といってリストに登録する。借りたい人はリストから自分の読みたい本を選んで「借ります」と登録する。マッチングが成立すると貸し手にメールで連絡が行く。貸し手はAmazonのサイトで借り手に貸すための手続きをする。後はAmazonの仕組みで14日間借り手はその電子書籍を読むことができる。貸し手はその間はその電子書籍を読むことができない。14日間が終わると電子書籍は貸し手の元に戻る。本当にeBook Exchangeはマッチングをしているだけだ。

興味あるのはそのビジネスモデルだ。借り手は借りる前でも後でもいつでもContributionをすることが求められている。ただし、これはOptionなのでまったく支払わずに借りることもできる。貸し手はリストする際に希望のContribution額を設定することができる。eBook Exchangeは2011年の間の利益はすべて児童の読書啓蒙のために寄付するとしている。100% of eBook Exchange profits in 2011 will go to charities focused on childrens' literacy and fostering a love of reading as an education multiplier. Lend an ebook; do some good. つまり、貸し手にはなんら支払いは行われない。eBook EchangeのVisionとしては、電子本を死蔵させずに社会のために有効活用しましょう。そして借り手はContributionを行いそれは児童の読み書き能力増進などのために使いますって言うわけだ。

将来的には著作権者への二次ライセンスの還元など電子本のより有効な活用を提案していくとしている。単に紙の代わりに電子になったというだけでなく、電子であることの利点を活かして、作者、出版社、書店、読者、社会のためになる仕組みを作りたいとVisionを語っている。もちろん、自らのサービスでの収益も目標にしていることは隠していない。2011年の全ての利益を福祉に還元すると言っているが、それは全てをボランティアで行うという意味ではなく必要なコストは当然回収するということだ。

電子本の社会レベルでの利用をこうして高めるというのは大賛成だが、果たしてこのビジネスは成立するのだろうか?まずはAmazonやBarns&Nobleはこうしたことを納得しているのだろうか?出版社はどうか?作者は?紙の本で比較すると、ブックオフはその収益を著者への二次印税として還元したり社会に還元するって言わなければならなくなる。別に電子でなくても同様の仕組みは実現できるのだから。などなど、私なんかはすぐ否定的なことを考えてしまうのだが、こういったことをすぐに実行するベンチャーそしてそれを許す社会が羨ましい。日本では電子本の各プラットフォームは自分の中に閉じこもることしか考えていないので本人が他の端末で見ることさえ許されていない。ましてや他人との間で貸し借りを斡旋するなど別の世界の話だ。

本来DRMというのはこうした新しいサービスを構築するベースとなる技術で、実際に著者や他の権利者への還元なども厳密に行うことができる。Keyring,netもこうしたチャレンジを続けていきたい。

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