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デジタルコンテンツ流通の潮流を見据えて

デジタルパブリッシングフェアー二日目報告

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 Cimg4490_3Cimg4484 二日目も大変なにぎわいであった。主催者の話では初日の入場者が15000人強で例年より若干多いそうだ。不況と言われてから長い出版業界だがこの賑わいからはそういったイメージは一切ない。もはや電子出版が今後間違いなくメジャーな産業になることは誰も疑っていないが、それがどのような形で成長していくかを誰も知らない。自分はパソコンの黎明期1980年代にその業界にいたが、その当時も似たような感じがあったように思う。ただ違うのは出版はとても長い歴史をもった産業で1500年代にグーテンベルグが聖書を印刷製本したころから常に文化表現の主要な手段であったことだろう。何百年の間に方法は様変わりしたが紙にインクの染みをつけるということに変わりはなかった。それが液晶や電ペーパーなど新しい素材が使われネットワークでそのデータがやり取りされるようになる。この方法論の変化がその内容にどういった変化をもたらすのか誰も分からない。ここが面白いところだ。

 アイドックのブースでも連日多くの方が訪れていただき、我々のスタッフとの間で様々なビジネスの可能性が議論されている。DRMが電子出版においてキーコンポーネントであることを改めて確信する。

 今日は専門セミナーの中から二つ聞くことができた。一つは「Yahoo! Japanのオープン化とコンテンツ配信戦略」でヤフー(株)の講演だ。内容は特に新しいこともなくこれまでYahooがやってきたことの紹介でしかなかった。出版業界との連携とは言ってもこれまで通り自らの露出の大きさだけを武器にしたコンテンツの只捕りの構図でしかない。Yahooとの連携から出版界の得られるものはほとんど無いことを改めて示したに過ぎなかった。

 もう一つは「出版、IT、印刷の業界トップたちが語る!次世代電子書籍プラットフォーム」というもので、凸版印刷、インプレス、シャープ、集英社が行っているコラボレーションの紹介だった。私の尊敬するインプレスの塚本相談役の「これからのネットコンテンツはデジタルならではの編集が加えられるべきである。」というコンセプトがテーマになっていると言うことなのだが、やろうとしていることはCelsysやVoyagerが開拓して来たコンテンツのマルチデバイス対応の焼き直しの感が否めない。技術説明の中で、データベースパブリッシングと言いながらも実際は紙の編集で出来上がった版をベースにした電子化になっているという現実が吐露されていて興味深かった。

 紙ベースの出版物を電子化するに当たってどういった再編集をするべきかについてはいくつかの考え方があるが、塚本さんの提言されていることは正論で将来を見渡した時にはその通りだと思う。ただ今日のセミナーでの各社の言っていること、やっていることは単にデバイスのサイズの差をどうやって補完するかという次元にとどまっていて、塚本さんが提言された内容を矮小化してしまっている。

 逆に私は日頃、出版社は紙ベースのコンテンツをできるだけそのまま電子化して収益化を計るべきだと考えいてる。詳しく述べるのは別の機会にするが、電子出版するに当たって紙ベースのコンテンツの資産を流用しないというのは暴論だと思う。ただでさえ収益が激減している出版社に新たに電子コンテンツを作るのは負担が大きすぎる。今の出版業界でこういたことができるのは、一部の大手出版社のなかの限られたコンテンツに過ぎない。またそうした限られたコンテンツでさえ電子化してどれだけの収益が得られるかは全くの未知の領域だ。

 続きはまた明日

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