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デジタルコンテンツ流通の潮流を見据えて

デジタルバプリッシングフェアー初日報告

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 今日からビッグサイトで東京国際ブックフェアーが始まった。日曜日まで4日間の長丁場だが、それだけの意義のあるイベントだ。今日見聞きした中から紹介したい。

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 まず概観から。デジタルパブリッシングフェアーへの参加企業の顔ぶれが変化している。正確に統計をとったり記録があるわけではなく、あくまでも5年連続で出展している私の感想だ。初期のころはIT系の企業の参加が目立っていた。Adobeが大きなスペースを取って華やかに存在感をしめしていたし、大手家電メーカーも参加していた。3年前はGoogleがブックサーチの開始と合わせて参加していたのも記憶に新しい。またそのころまではモバイルといえば携帯向けのコミックのビュアーや制作ツールが主要な展示だった。それが最近は印刷会社大手が大きなスペースを持っている。大日本印刷と共同印刷だが、なぜか凸版印刷は参加していない。携帯ではなくiPhoneを中心とするスマートフォンへの対応ソリューションを各社が提案している。多くのFlashを使った雑誌ビュアーが提案されているといった技術の変化だけでない。

 電子書籍、電子出版にかかわるベンチャー企業の顔ぶれが少しずつ変化している。昨年でビューしたサービス会社が今年は参加しておらず、別のベンチャーがデビューしている。これは何を表しているのだろうか?デビューしても継続的にビジネスを行えない場合が多いのはなぜだろうか?一方、新しい企業が参入してくる例も多い。これは引き続き電子出版の将来に大きな期待が寄せられているからなのか?ここまで書いて来て恐縮だが、私にも答えは無い。言えることは業界がまだ揺籃期にあるのだと思う。周辺の技術は十分に成熟してきていて残された課題はビジネスモデルの創造だと思う。

 アメリカではAmazonやAppleやGoogleなどが盛んに電子書籍市場での覇権を競っている中で、日本ではまだ誰もそういった戦略を打ち出すことができないでいる。展示会でも多くの企業が新しい技術やソリューションの提案をしているが、これまでの停滞を打破するような変革と呼べるような提案になっていない。そう、日本では電子出版ビジネスが成長する前に停滞してしまっているのかも知れない。技術やインフラは十分に整って来ているのにそれらを駆使して新しいビジネスが生まれてこない。

 ショーの初日の報告をするつもりが、なんか愚痴っぽくなってきてしまった。気を取り直して報告報告。

 ショーの中で目立って元気なのが、CelsysとVoyagerだ。大きなブースを中央の持ち、iPhoneを始めとする携帯端末でのコンテンツ販売のソリューションを提案している。特に注目されるのが、「理想書店」という名前で異なるデバイスで閲覧することのできる販売システムだ。

 理想BookViewerは、iPhone OS 3.0で利用できるようになったアプリ内課金には対応しておらず、理想BookViewerから直接購入することはできない。App Storeで購入するソフトは事前にアップルの審査を受けて認可を受ける必要がある。この審査にコミックやグラビアなど多くのコンテンツが引っかかってしまう。これを回避するために、理想BookViewerでは、コンテンツをウェブサイトで売るという方法で、アップルの審査を避けてコンテンツを販売する仕組みだ。AmazonがKindle for iPhoneをApp Storeで配布してコンテンツはブラウザーで購入させているのと同じだ。

 AmazonはAppleの課金を避ける目的だが、理想書店の場合はAppleの審査(Raiting)を避けるのが主な目的だと説明していた。会場の説明ではかなりきわどい表現を使っていた。iPhoneへの書籍コンテンツの販売方法としては標準的なものになるだろうが、App Storeの課金を使うという選択肢も捨てがいたいものがあるだろう。30%の手数料を取られるが、それだけの価値はあるように思う。Raitingについてはいろいろな考え方があるだろうが、AppleがApp Storeで売られるコンテンツをコントロールしたいという考えは当然だし尊重されるべきだと思う。ただ、今回の例のようにブラウザーを併用することにより実質コントロール外を認めているということだろう。

 理想書店が成功するかは未知だが今回のショーでの典型的な電子書籍販売のソリューションの一つとして紹介する。

 続きはまた明日。

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