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大学のキャリアセンターがリンクトインを活用する日

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 本日の記事は「大学等教育機関さんが学生のキャリア支援にリンクトインを活用する流れが出てきているが、実際にどんなことが出来るのか。そしてその先にある"愛校心"の重要性について」の紹介記事です。

▼学生さんのキャリアデザインにとってのリンクトインの意味が強くなってきている

 つい先日ですが、リンクトインの新機能が発表されました。それは学生さんの利用を念頭に置いたもので、学生時代の主な実績や成績、研究プロジェクト、所属組織(サークルやボランティアなど)をプロフィールに反映できるというものです。
 参考記事①:Introducing New Profile Sections Designed for Students(英語)
 参考記事②:LinkedIn、プロフィールを改良して新卒の社会人を応援(日本語)

 以前「ミシガン州立大学がリンクトインと提携して学生のキャリア支援を強化する」という報道がされていたのですが、学生さんに限らず、リンクトイン上には様々な仕事の情報があるため、キャリアデザインに有用なツールなのは間違いありません。そしてインターンなどの情報も掲載されているため学生さんにとっても非常に有用なキャリアデザインツールであると言えます。そして、今後もこの流れは強くなってくると思われます。


▼学生さんのキャリア支援のために何が出来るのだろうか

 それではですが、学生さんのキャリア支援のためにリンクトインをどのように活用できるかについていくつかご紹介したいと思います。

 1:卒業生のネットワーク化

 一番オーソドックスなのはこれなのですが、卒業生のネットワーク化です。多くの教育機関で卒業生の集まりなどをやられているかと思うのですが、場所が限られてしまうため遠方の卒業生が参加できなかったり、単発なのでそこで生まれたネットワークをうまく活用できないなどの問題があるかと思います。
 リンクトインを使うと、オンライン上での継続性のあるネットワーキングが可能です。やり方は主に2つあり、1つは大学名でグループを作成し、そこに現役生・教授・キャリアセンター側・卒業生などに入ってもらうという方法。例えば慶応義塾大学の卒業生グループは2011年7月17日時点で1,600名ほどのユーザーが登録しているようです。おそらく卒業生同士の意見交換や、仕事の紹介などがなされているのだろうと思います。
 もう1つは、キャリアセンターの担当職員などが直接ハブとなり、卒業生や現役生などとリンクトインとコネクションになることで、直接人を紹介できる体制を組むという方法です。リンクトインでは知らない人の個人情報は見れませんが、つながりのつながりであれば個人情報を見れる可能性を高めることができますので、その担当職員さんを経由して様々な卒業生とつながることが出来ます


 2:卒業生のキャリアデータベースの閲覧

 リンクトインは世界最大の履歴書データベースでして、ものすごく詳細な検索をかけて意中の人物を探しだすことが出来ます。
 卒業生のキャリアデータベースという意味では、自分の所属大学を卒業してある特定の企業で働いている人間を見つけ出し、その人がどんなキャリアを辿ってきて、どんなスキルや経験があるのかなどを閲覧することが出来ます。試しに「早稲田大学を卒業してアップル社で働いている人」を検索すると26人が出てきました。こういった情報は、何か希望する就職先がある学生さんからすれば非常に参考になる情報と思います。


 3:インターン先の紹介・探索

 これはそのままですが、リンクトイン上には世界各国のインターン情報が載っていますので、自分のスキルを活かして経験を詰める企業を世界中から探し出すことが出来ます。もし意中の会社に卒業生がいるなら、その人の紹介を受けることも可能でしょう。


 4:キャリアデザインのための情報収集

 ざっくりした話になってしまいますが、「自分がやりたい仕事・働きたい会社で求められる経験・スキルは何か?」というのもリンクトインで各企業や各スキルのページを見れば知ることが出来ます。これを元に、たとえば働きたい会社でHTML5のスキルが必要とわかればそれについて勉強し何らかのプロダクトを作ってみるといったことが可能かと思います。


 5:卒業生や著名人によるカリキュラムの推薦

 少しキャリア支援という文脈からはそれてしまいますが、大学等教育機関での活用という点では、カリキュラムの紹介ページを作ってそこで卒業生や著名人に推薦文を書いてもらうという方法があります。これは先日の「LinkedInの「推薦」機能がすごい」というエントリで紹介した「サービス・製品の推薦」という機能を使うわけですが、大学の公式ページにカリキュラムなどを紹介して、そこに卒業生からの推薦文を掲載することができます。例えばインシアード大学ではキャリア支援サービスなどの情報を掲載しており、それぞれについて様々な推薦文が掲載されています。
 「この大学のこのカリキュラムはあの有名な●●さんが推薦しているのか!すごいに違いない!」という使い方となるかと思います。
 なお、余談ですが、大学のフォロワー数もその大学の価値を示す指標に徐々になってくるのではないかとも思います。

▼活用の先にある論点は「愛校心」

 以上、主に学生さんのキャリア支援という観点でリンクトインの活用について紹介いたしました。

 今後数年かけてどんどん大学のキャリアセンターのリンクトイン参入と活用は拡がってくるものと思っています。
 そして、そこでおそらく論点になってくるだろうと思っているのは「愛校心」だと思います。もう少しソーシャルメディア的な言い方をすると「生徒・卒業生と大学のエンゲージメント」とも言えるかと思います。
 OBOGに紹介してもらって現役生が職を得る。卒業生に大学の推薦文を書いてもらう。といった在り方が普通になるには、その前提として「その卒業生に愛校心はあるか?」が大切になってくると思います。強権的に推薦文を書かせたりすることは出来なくもないでしょうが、長続きしないでしょうし、一方で愛校心のある人たちが集まれば非常に強力なコミュニティが形成されると推測されます。

 本日のエントリは以上です。「リンクトインが展開することで、教育機関はいかに生徒の愛校心を醸成できるかが重要になってくる」という主張とともに、このエントリを終えたいと思います。

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