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その発想はなかった!? ブラジル人のSNS活用術

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日本にいる頃から、僕は周囲に「ブラジル人はSNS好きだよ」と言い回っていたわけですが、当時それはあくまでも、「頻繁にSNSで話しかけてくる」・「頻繁にSNSに投稿している」・「頻繁に写真や動画をSNSにUPしている」...といった状況を称しての発言でした。

しかし、こうしてブラジルに住み始め、ブラジル人の友人が増えてくるに連れて、
「この人達、SNSを頻繁に使っているだけあって、日本人より賢い使い方をしてるんじゃないか?」
と思うようなシーンに遭遇します。

今日はそんな一例をご紹介出来たらと思います。

■まず、それらの事例に入る前に・・・

具体的な事例をご紹介する前に、
「そもそも今ブラジル人が一番利用しているSNSは一体何?」
というのが気になる方も、多々いらっしゃるかもしれません。

ただ、ここの話に踏み込んでしまうと、それだけで1記事のスペースを費やしてしまいそうなので、
詳細はまた後日にでも改めてさせて頂くとして、今日はサラっといきますが、
主なSNSメディアはfacebook、twitter、orkut、google+、MSN、Skype...あたりでしょうか。

その中でも、やはりfacebookですね。
(ちなみに案外見逃せないのがMSNとSkypeです。これもまた後日にでも...)

なお、一昔前はダントツでorkutでした。(googleが手掛けるgoogle+ではないSNSです)
しかし昨今、猛烈な勢いでfacebookが追い上げていて、肌感覚では完全にorkutを抜いていますね。

ちょうど今日一緒に食事をしたとあるネット系の会社の社長さんも、
「facebookが伸びていて、orkutとtwitterが下降している」とも言っていました。
(ただ、各調査会社等の発表によると、まだ現時点ではorkutが勝っているとのことですが...)

日本ではちょっと前にmixiが激減したと話題になっていましたが、
もしかすると似たようなフェーズかもしれませんね、ブラジルと日本は。(mixi→orkut)

そんなブラジルのSNS市場において、
現地での生活から垣間見られた「ブラジル人のSNSの活用方法」を、
事例という形で2つ、ご紹介させて頂きます。
twitterとfacebookの活用事例です。

■事例1:ブラジル人のtwitter活用事例 「ネズミ捕り対策」

まずは、ブラジルにおけるtwitterの利用状況ですが、
こちらのcomScoreの資料を見て頂くとよく分かるかと思いますが、
ブラジルはtwitterで「世界一のリーチ率」を誇る国です。

Twitterreach_2
※出典:http://www.comscoredatamine.com/2010/09/twitter-com-top-20-global-markets/

twitterの140文字の制約は、日本語にfitするので日本ではtwitterが浸透しやすかった、
というような説もあるようですが、そんな日本を凌ぎ世界一のリーチ率を誇っています。
(4pt差、比率で見ると約5/4倍くらいでしょうか)

そんな「世界一twitterが浸透している国」であるブラジルにおいて、
ホームステイ生活を3ヶ月間のBelo Horizonteという街でしているときに、
ブラジル人の興味深いtwitter活用方法に出会いました。

それがこちらのアカウントです。

Blitzbh

@BlitzBHというアカウントです。

「BH」は「Belo Horizonte」という都市名を意味し、
「Blitz」とは、辞書によると「電撃」や「猛爆」や「急襲」を意味するそうで、
要するにこれは何かと言うと、警察による「ねずみ捕り情報」を共有し合うというbotです。

このアカウント宛にツイートすると、そのツイートが自動転送され、
全フォロワーに届けられるという仕組みです。
(構造はラーメン二郎の混雑状況をツイートし合う「@jirolian」と同じ仕組みですね)

実はブラジルというのは、まだまだ飲酒運転の多い国でして(飲酒運転はブラジルでも犯罪ですが)、
飲んだ後の帰り道で「飲酒取り締まり」に引っかからないために、
ネズミ捕りの情報をみんなでシェアし合い、予防しているという状況です。

なお、具体的に投稿されている内容を見ていると、
「△△通りにいたぞ!」という危険情報の共有というよりは、
「□□通りは今は問題なくスムーズです」などといった安全情報の共有が多いようです。

実際、僕もブラジル人の友達と飲みに行った際、彼らは車で来ている事も多く、
帰り際にこのアカウントを入念にチェックしてから笑顔で帰って行く、
というシーンを幾度となく目にしてきました。

改めてこのアカウントのプロフィールを見てみると、
 ・フォロワー数:約4.4万人
 ・ツイート数:約1万ツイート
で、この街に存在している「飲酒運転をする可能性のあるドライバーの数」を考えると、
結構なボリュームではないかと思います。

ジオマーケティングとでも言いますか、地域限定・エリア特化でかつリアルタイム性が重要な、
ネットワーク外部性の高いサービス(仕組み)ですよね。
非常に興味深いtwitterの使い方だなと個人的には思いました。
(少なくとも僕は、日本で同様の仕組みを見た事がなかったもので)

なおこのアカウントは、twitterに限らずfacebookページも存在します。

Blitzbhfb

「いいね!」の数は約5000人と、twitterのフォロワー数よりは少ないですが、
とはいえ、多くの人が日々見ているようで、「いいね!」やコメントも多々見受けられます。

また上記はいずれもBelo Horizonteの情報ですが、大都会São Pauloのアカウントもあるようです。
いくら大都会と言えども、まだまだ車社会の側面も強いですからね。

そのアカウントがこちらです。

Blitzsp

こちらは、
 ・フォロワー数:約4万人
 ・ツイート数:約4万ツイート
と、Belo Horizonteに比べてツイート数が非常に多いですね。
多くの人達に頻繁に利用されているようです。

※補足
当然、ブラジルでも飲酒運転は犯罪行為です。ただ最近まで飲酒取り締まりが緩かったという背景もあってか、飲酒運転をしてしまっている人が多いのが実態です。今回こうしてご紹介しているのは、当然「飲酒運転を推奨している」とか「同じ仕組みを日本に作った方が良いと思っている」とか、そういった意図は1mmもありませんので、その点はご了承ください。また「これらのアカウントが行っている行為は違法に当たる」というような話も、最近の記事として出ていたりして、裁判所等が動いている模様です。今後はなくなっていくかもしれませんね。

■事例2:ブラジル人のfacebook活用事例 「児童虐待防止キャンペーン」

少々、違法な要素を含むSNS活用事例を1つ目に紹介してしまいましたが、
2つ目はもっとクリーンで、とても気持ちの良い事例です。

昨年後半にあった「児童虐待防止キャンペーン」でのfacebook活用事例です。

これはブラジルの子供の日(10/12)にちなんで行われたキャンペーンなのですが、
「児童虐待防止に賛同する人は、facebookのプロフィール写真をマンガのキャラクターに変えよう!」
という内容のものです。

言い出しっぺはとある代理店で、当初の目標は1万人だったようですが、
なんと終わってみると約10万人がこのキャンペーンに参加したそうです。(※出典:veja)

最初このキャンペーンを知らなかった僕は、日々マンガのキャラに変わっていくブラジル人が増えて行き、
頭の中に「???」が駆け巡っていましたが、その後、このキャンペーンの存在を知って、
これは面白い、と僕もそのキャンペーン内容の告知とともにfacebook上の画像を変更しました。
(ちなみに蛇足ですが、僕はキャプテン翼の「翼くん」に変えました!)

その後もどんどん拡散していき、最終的には、
僕が繋がっていたブラジル人は、ほぼ全て(実感値では約8〜9割)が、
プロフィール画像をマンガのキャラに変えていたのではないかと思います。

一覧で見るとこんな状態でした。

Facefb

日本のマンガのキャラクターも、ブラジルのアニメのキャラクターも、
その他世界のアニメのキャラクターも見られます。
不思議とあまり「他人とかぶる」という事がなかったような印象です。
みんな他の人のキャラクターを見ながら、敬遠しつつ選んでいたんでしょうかね。

その後、子供の日が終わってからは、みんな通常通りの自分の顔写真に戻ったのですが、
このキャンペーン期間中の僕のfacebookは、とても奇妙な事になっていましたね。
ニュースフィードを見ても、パッと見ただけでは、誰が誰だか全然分からず...
正直「とても不便」ではありましたが(笑)、とはいえ、
キャンペーンとしての効果は絶大だったのではないかと思われます。
実際、当初目標の約10倍にまで到達したとのことですし。

ニュースフィード以外の場所(今回は「プロフィール写真」)をプロモーションに使い成功した、
日本ではこれまであまり見かけなかったfacebookの使い方の事例ではないでしょうか。

■ブラジル人は「SNS親和性」が高い

高々2つの事例ではありますが、ブラジル人の「SNS好き」さを感じて頂けますでしょうか。

いや、厳密には「SNS好き」というのは結果論としてそう見えるだけであって、
「コミュニケーション好き」や「お祭り好き」といった要素が絡み合って
「SNSを賢く利用している」というのが正しいのかもしれません。

こんな「SNS親和性の高い市場」でSNSを使ったキャンペーンを、
何か仕掛けてみたいという方もいらっしゃるかもしれませんね。
もしかしたら、日本ではハマらなかったようなキャンペーンも、
ここブラジルでは大爆発するかもしれませんし。

蛇足にはなりますが、
例えば日本では「スパム」とまで言われていたbadooという出会い系サイト、
ブラジルではNo.1の出会い系サイトだったりもします。
(スパムという認識ではなく、受け入れられているということですね)

今回ご紹介したのはSNSの使い方のほんの一例でしたが、
ブラジルにはこれら以外にも、日本ではあまり見かけないようなSNSの使い方もあったりします。

また、こういった「既存SNSの使い方」に限らず、
そもそも日本にはない「ネットサービス」も多々あったりするのがブラジル市場です。

次回あたりに、この「日本にはないネットサービス」の中から、
僕がどっぷり惚れ込んでいる会社について、取り上げてみたいと思います。
乞うご期待。(変に期待値は煽らない方がいいですかね。。。笑)

では。
Até mais!




▼砂塚裕之



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