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新iPadの価格はいくらに?Apple製品が世界一高額なブラジルに潜むポテンシャル

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日本時間の3/8(木)未明、新iPadが発表になりました。

僕は日本から時差12時間のブラジルで、この発表内容を知ったわけですが、
この新iPad、ブラジルでも、そしてブラジル市場を視野に入れている日本企業にも、
非常に大きな影響を与えるかもしれません。

なぜか?

それは、ブラジルに潜んでいる巨大なポテンシャルが開花する可能性があるからです。



■ブラジルのApple製品は世界一高額

まずはこちらをご覧ください。
新iPadの発表のあった当日3/7(水)付け(※現地時間)の、ブラジル最大手週刊誌の表紙です。

▼店頭に並ぶブラジル最大手週刊誌Vejaの3/7(水)号
Veja

記載されている特集タイトルは「なぜブラジルのiPhoneは世界一高額なのか」とあり、
この表紙のイラストの中に、
・ブラジル:US$ 1,650
・アメリカ:US$ 815
という具体的金額も示されていますが、なんとブラジルのiPhoneは、アメリカの2倍強の値段です。

アメリカ以外の国はどうなっているのかというと、
このVeja誌の記事の中で示されていたのは、下記7カ国のランキングでしたが、
ブラジルがダントツで一番でした。

▼iPhone4S(32GB SIMフリー)の価格①
Iphoneranking1

またソースは異なりますが、iPhone4Sが発売になった昨年末には、
下記のようなランキングも発表されていました。

▼iPhone4S(16GB SIMフリー)の価格②
Iphoneranking2

いずれもブラジルが頭ひとつ飛び抜けて、最も高額な国となっています。

この状況は「iPhone4S」に限った話ではなく、
歴代のiPhoneシリーズもiPadも、さらに他のApple製品も同様のようです。
(出典:terra「ブラジルのAppleストアは世界一高額」※ポルトガル語)



■なぜブラジルはそんなに高いのか

ブラジルが世界一高額であると聞いて、違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

一方で、ブラジルは物価の高い国であるとご存知の方には、
確かにブラジルは高いよね、と思われるかもしれませんし、
さらに「どうせ税金でしょ?」と考えられているかもしれません。

このあたり、実際のところ、どうなのでしょうか。

ここで、冒頭の「なぜブラジルのiPhoneは世界一高額なのか」という問いを
投げかけていたVeja誌には何が書かれていたかというと、
下記の7つの要因が挙げられていました。

1. 為替レートの影響
2. ニーズに対する供給量の少なさ
3. 高額な税金
4. 高いインフレ率
5. 弱い競争環境
6. 少ないスケールメリット
7. 低い労働生産性

ご覧の通り「ズバリこれだ!」と断言するわけではなく、
「色んな要素が絡んでいるよね」といった形でどこか濁されていました。

そして面白いことに、それに対して違和感があったのか、Gizmodoのブラジル版がこの記事を取り上げて
「なぜ誰もこの質問に答える事が出来ないのか?」といった、記事も取り上げていました。
(参考:Gizmodoブラジル「なぜ誰もこの質問に答える事が出来ないのか?」※ポルトガル語)

これらの記事と同様、僕も一概に「これ」というものを挙げるのは難しい気もしますが、
とはいえ、個人的に思うのは、やはり「高額な税金」の影響が極めて大きいように思います。



■ブラジルの税金は高い

ご存知ない方のためにも、ブラジルの税制について簡単に触れておきますと、
ブラジルには、GDP比で37.37%を占めるとも言われている高額な税制が存在します。
その種類は56種類に及び、かつ日々変化しているため、複雑極まりないものになっています。

一例としてご紹介させて頂くと下記のようなものになります。

連邦税 所得税 IR 実質所得への課税、税率15%、27.5%
法人税 IRPJ 課税対象利益が月額2万レアル以下は15%、以上は25%
工業製品税 IPI 輸入工業品の通関、製造施設からの製品拠出に課税
輸入税 II メルコスールの対外共通関税(TEC)
輸出税 IE ある商品の国内供給不足が起きた時に課税
農地所有税 ITR 市街地外の不動産に課税
金融取引税 IOF 金融機関・保健会社による信用取引、為替取引にも課税
州税 商品流通サービス税 ICMS 付加価値税の一種、サンパウロ州では18~25%
自動車保有税 IPVA  
市税 都市不動産所有税 IPTU  
生存者間不動産譲与税 ITBI  
サービス税 ISS 薬務提供を行なう邦人・個人の受け取り価値に課税
社会負担金 社会保険融資負担 COFINS 前サービス・商品の相売上げ対象に3%か7.6%課税
社会統合計画 PIS 1.65%
公務員厚生年金 PASEP  
暫定金融取引税 CPMF 現金・小切手振出に一定割合で課税
社会寄付金 CSLL 国内に住所のアル法人に負担義務、税率9%
その他 社会福祉負担金 INSS  
金属年数補償基金 FGTS  

※出典:ブラジル日本商工会議所

確かにこれだけ多くの税金があれば、積み上がって高額になってしまうのもうなずける気がします。

また、前述のGizmodoブラジルでは、
「iPhoneの販売価格に対して税金が占める割合」を算出していましたが、
なんと合計46.76%にまで至るそうです。

つまりiPhoneの「約半分は税金」という事になりますね。

▼iPhoneの販売価格に対して税金が占める割合
Iphonezeikin



■しかし、ブラジル人の消費意欲は強い

そんなに高額なのであれば、新興国であるブラジル人には手が出ないのではないか?
と思われる方も多いかと思います。

確かにそういった層も多く「欲しいけど買えない」人達が多いのも事実ではあります。

しかし、昨今よく聞かれる話は「国外に"買い物旅行"に出かける」というものです。
ある種「ブーム」とも呼べそうな雰囲気すらあります。

例えば下記はブラジル人が国外で消費した金額の推移です。
2003年以降急激な勢いで伸びていることが分かります。

▼ブラジル人が国外で消費した金額推移
Kokugaishouhi

なお、目的地はアメリカが多く、マイアミ、ニューヨーク、シカゴ...などが人気のようです。
よく「ブラジル経済は内需が支えている」とも言われますが、
どうやら国内外を問わずにブラジル人の消費意欲はとどまるところを知らないようですね。

そういえば日本では、秋葉原などで買い物旅行に来た中国人を見かける事も多々ありましたが、
似たような状況かもしれません。
ただ少し違う点があるとしたら、「日本⇔中国」の距離と「ブラジル⇔アメリカ」の距離は倍以上あり、
かかる費用も、そして労力も、おそらく倍以上かとは思いますが、
多くのブラジル人がアメリカに渡って買い物をしている、という点でしょうか。

また、この経済効果が大きかった影響からか、アメリカ側も観光振興策として、
ビザの発給をスムーズ化するなどの手が打たれているようです。
(※参考記事:「米大統領が観光振興策=中国、ブラジル狙いに」)



■大幅な減税によって迎えるマーケットの転換点

実はそんな中、さすがのブラジル政府もこの状況をよろしくないと思ったのでしょう。
今年の1月にiPadを含むブラジル国内で生産されたタブレット端末への大幅な減税を発表しました。
(参考記事:techmundo「政府が国産のiPadに対する減税を発表」※ポルトガル語)

上記の参考記事によると、この政策によって「30%程度販売価格が下がる見込み」とのことです。

こうなってくると、話は大きく変わってきます。

今日発表になった新iPad、アメリカではUS$499とのことでしたが、
ブラジルでの販売価格は一体いくらになるのでしょうか?

これはひょっとしたらひょっとするかもしれません。

というのも、このような状況であったために、
今までは欲しくてもなかなか手の出なかった中間層が大勢います。
今回端末価格が大幅に下がる事があるならば、それによって新たに生まれる市場には、
大きなポテンシャルを秘めていそうな気がします。
これまでが高額だった分、Appleの「ブランディング」は十二分に出来ていますし。

なお、3月16日発売の国リストにブラジルは入っていなかったようで、
このあたりの状況が判明するのはしばらく先になりそうですが、
新iPadの発売タイミングが、大きな転換点になるかもしれませんね。

多くのブラジル企業たちも、その辺りを見越して虎視眈々と準備しているようですが、
ブラジル市場を視野に入れている日本企業の方々にとっても、非常に面白いタイミングかもしれません。

個人的にはこの新iPadと次回のiPhone5によって、
ブラジルのネット市場が大きく動くような気がしています。
楽しみですね。

では。
Até mais!




▼砂塚裕之



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