ブラジル社会で生きる中で、肌で感じたコトや頭で考えたコトを、ざっくばらんに吐き出します

いまさら聞けない「ブラジルEC市場」超入門

»

楽天やamazonといった大手ECプレイヤーが、まさに今から本格参入しようとしている「ブラジルのEC市場」について、あまりご存知ない方も多いのではないかと思い、一度このタイミングでまとめておきたいと思います。

下記の内容について、順にお話させて頂きます。
・ブラジルのEC市場規模の推移
・大手EC関連サイト
・領域特化型ECサイト
・ブラジルEC市場の課題

■ブラジルのEC市場規模の推移

まずは気になる市場規模から。
直近2011年の市場規模はR$18.7billion(日本円にして約9,350億円)。対前年比26%UPという結果になっています。10年前からの推移を見ると、気持ちいい程の右肩上がりのカーブで上昇していることが分かります。

▼ブラジルのEC市場規模の推移(億円)
Marketscale
※e-bit発表資料を基に砂塚作成(R$1=50円にて換算)

なお、2012年の予測は25%UPのR$23.4million(≒約1兆1,700億円)となり、日本円で1兆円を超える規模に到達する模様です。(※e-bitより)
そしてもちろん、市場規模に連動するようにECサイトで購入するユーザー数も右肩上がりで伸びています。

▼ブラジルのECユーザー数の推移(万人)
User
※e-bit発表資料を基に砂塚作成

直近2011年のユーザー数は3,190万人。ブラジルの全人口は1億9,325万人(※出典:JETRO)ですので、伸びているといえども、ECサイト利用率はまだわずか16.5%ということになり、まだまだ伸び代が残されていることが分かります。
なお、IBOPE Nielsenによると今年1月時点でのネットユーザー数は7850万人という発表もあるので、ネットユーザーに占めるECサイト利用率は40.6%となりますね。



■大手EC関連サイト

では、具体的にはどんなサイトが存在しているのか、大手サイトをいくつかご紹介させて頂きます。

①mercadoLivre(メルカード・リブリ)

まずこちらはEC関連サイトでアクセス数TOPのオークションサイト「mercadoLivre(メルカード・リブリ)」です。日本で言うところの「ヤフオク」ですね。

▼mercadoLivre(メルカード・リブリ)
Mercadolivre
http://www.mercadolivre.com.br/

本社はアルゼンチンで、設立は1999年。ブラジルのサイトもアルゼンチン同様に1999年からサービスが開始されていたようです。その後、2001年に米ebayが約20%の株式を買収する形でebay傘下に。ラテンアメリカ地域を中心に、現在13カ国に展開しています(アルゼンチン・ブラジル・コロンビア・コスタリカ・チリ・ドミニカ共和国・エクアドル・メキシコ・パナマ・ペルー・ポルトガル・ウルグアイ・ベネズエラ)。

2011年の第4四半期(10〜12月)の取引数は1,590万件、取引総額はUS$1.45billion(前年比46.7%増)、売上はUS$86.5million(前年比38.8%増)、ユーザー数は6,580万人とのこと。(いずれもラテンアメリカ計の値)

なお、現在のAlexaのブラジルランキングによると、全サイト中第12位で、EC関連サイトでは最上位。Wikipediaよりも上位に位置するとてもメジャーな存在です。

②BuscaPé(ブスカペ)

続いてこちらはアクセス数第2位の価格比較サイト「BuscaPé(ブスカペ)」です。日本で言うところの「価格.com」ですね。

▼BuscaPé(ブスカペ)
Buscape
http://www.buscape.com.br/

本社はブラジルで、設立はmercadoLivreと同様1999年。2009年9月に南アフリカNaspersが株式の91%をUS$342millionで買収。あくまでもこの価格比較サイトを中心に据えているものの、それ以外にもtoB向けのビジネスや、EC市場の調査研究機関や、領域特化型の比較サイトなども含め、幅広いサービスを展開しています。2011年の売上は推定R$205million(≒約103億円)とのこと。(※出典:Exame PME)

▼推定売上推移
Salesbuscape
※Exame PME掲載情報を基に砂塚作成(R$1=50円にて換算、空白年次は不明)

なお、現在のAlexaのブラジルランキングによると、全サイト中第35位。

③B2W(Americanas.comおよびsubmarinoなど)

続いて2つのサイトを同時にご紹介します。
前述のオークションサイト、価格比較サイトとはプラットフォーム型でしたが、それらとは異なり自社で商品を販売しているECサイト「Americanas.com(アメリカーナス.com)」と「submarino(スブマリーノ)」です。扱っている商材は、電子機器、家電、調理器具、家具、ゲーム、書籍、DVD、美容健康、スポーツ、おもちゃ...など多岐にわたっています。

▼Americanas.com(アメリカーナス.com)
Americanas
http://www.americanas.com.br/

▼submarino(スブマリーノ)
Submarino
http://www.submarino.com.br/

なお、これらの2つのサイトは共に「B2W」という企業が運営しています。

▼B2W(ベー・ドイス・ダブリュ)
B2w
http://www.b2winc.com/

このB2Wは、上記2つのサイト以外にも、旅行サイトやチケットサイトなど複数のECサイトを展開しており、ECを運営する企業としてはブラジル最大手です。2011年の連結売上はR$4,232million(≒約2,116億円)とのこと。(※出典:B2W社IR資料より)

しかし、最大手である一方で、実はこの会社は問題も多く、つい先日(2012年3月)も消費者保護センターから72時間の営業停止処分が下されていました。このB2Wが悪いのか、物流業者が悪いのか、厳密には分かりませんが、「商品が届かない」や「商品が壊れていた」といった苦情が非常に多い模様です。消費者保護センターに限らず、以前にこちらの記事でご紹介した「クレームを介した企業と消費者のCRMプラットフォーム」的なサイト上でも、常にワーストランキングを争っているような状況です。

なお、現在のAlexaのブラジルランキングによると、Americanas.comは全サイト中第38位、submarinoは第47位です。



以上ここまで、大手EC関連4サイトをご紹介させて頂きましたが、Alexaでこれら4サイトの推移を見てみると下記のようになっています。

▼大手EC関連サイトの推移
Alexa
※出典:Alexa

これを見ると、少々違和感を感じられるかもしれません。トップのオークションサイトmercadoLivreは確かに伸びているものの、他の3サイトはほぼステイ。「ブラジルのEC市場全体は右肩上がりに伸びている」にも関わらず、です。

おそらく構造としては、新規参入のECサイトが増え、彼らが市場を牽引しているということだと思われます。特に、領域特化型のサイトなど、消費者のかゆい所に手が届くような様々なサイトが登場してきている印象があり、ユーザーは分散しつつも、市場全体としては伸びているものと想定されます。(一方、マス対マスのマッチングであるオークションサイトは、ネットユーザーの上昇に伴い最大手mercadoLivreが独走状態で突っ走っているのではないかと想定されます。)
ECに限らずネットサービス全般に言えることかとは思いますが、「ブラジル発の新しいサイト」も数多く誕生し、かつ「国外サイトのブラジル進出」も相次いでおり、有象無象に混沌としている状況です。競争環境は日に日に激化してきている印象があります。



■領域特化型ECサイト

そんな競争の激しいEC市場において、領域特化型で急成長中のサイトを2サイト程、簡単にご紹介させて頂きます。

④dafiti(ダフィチ)

まずはdafiti(ダフィチ)です。「Zapposのブラジル版」と言うとイメージはわきやすいでしょうか。靴のECサイトで、送料は無料、30日以内であれば交換可能といったサービスを提供し、急成長中のサイトです。

▼dafiti(ダフィチ)
Dafiti
http://www.dafiti.com.br/

設立は2010年10月、ドイツ人2人とフランス人とブラジル人の4人(全員20代後半)で始めたようですが、その約1年後の2011年末には既に、月間UU数は360万UU、取扱商品は2万5000点、従業員として700人を雇用し、売上はR$400million(≒200億円)に到達しているものと推測されています。(※出典:EXAME)

なお、現在のAlexaのブラジルランキングによると、全サイト中第67位ですが、急激な勢いで上昇しています。

▼Alexaによるdafitiのアクセス数
Alexadafiti
※出典:Alexa

⑤Netshoes(ネットシューズ)

続いてこちらはNetshoes(ネットシューズ)です。名前からして「ネットの靴屋」のようですが、靴に限らずスポーツグッズ全般を扱っており「ネットのスポーツ用品店」というイメージのサイトです。

▼Netshoes(ネットシューズ)
Netshoes
http://www.netshoes.com.br/

実はこのNetshoes、今を輝くサッカーブラジル代表ネイマールが所属するサントスのスポンサーでもあり、ユニホームの両袖にはしっかりとロゴが入っています。サッカー好きな方はそんなルートでロゴを目にされたことがあるかもしれません。(とはいえ残念ながら、昨年のクラブW杯の来日の際は、権利絡みのためか、スポンサーロゴは外されたユニホームだったので、ブラジル国内リーグの試合を見ている方でないとご存知ないかもしれませんが...)

このNetshoesはDafiti程に最近できた新しい会社というわけではなく、設立は2000年で、大きくなり始めたのは2007年頃からとのこと。2011年の売上はR$600million(≒約300億円)で前年比50%増、月間UU数は580万UU、1300人の従業員を雇用しています。そして今年2012年の売上はR$1billion(≒約500億円)と昨年比67%UPの予測。
またブラジルでの成長もさることながら、既にアルゼンチンとメキシコにも進出し、ラテンアメリカ地域の国外展開も積極的に進めています。

なお、現在のAlexaのブラジルランキングによると、全サイト中第68位です。



■ブラジルEC市場の課題

ここまで、急激に伸びているブラジルのEC市場をご紹介してきましたが、もちろん一方では課題も多く存在しています。B2Wが営業停止命令を受けたなどという話もありましたが、僕が個人的に感じている課題は大きく3つです。

①物流
②信頼性の担保
③税金・物価

まずは「①物流」です。
なんと言ってもブラジルは、物流の問題が最大のネックであるように思います。「近隣エリアでの物流」については、日本以上に発達している印象も受ける国なのですが(レストランの宅配、クリーニングの宅配、ネットスーパーの宅配など、日本に負けず劣らずモトボーイと呼ばれるバイク便が、あちこち走り回っている)、一方で「広域エリア(市外・州外)の物流」となると、荷物が遅れる、荷物が届かない、商品が壊れていた...など、様々なトラブルが発生しているようです。
また、日本の約22.5倍の面積を誇る国ですから、配送にかかる時間・コストも無視できません。そして後ほど③でも触れますが、州をまたぐ関税の問題も絡んできます。このあたり、日本の大手物流会社が参入して、キレイすっきり解決してくれれば良いなと、よく日本人同士では話したりもしますが、なかなか重たい課題ですね。今の所、僕はコレと言った解決法は見えていません。

続いて「②信頼性の担保」です。
これは、かつての日本も「ネットは怖い」という人が多かったことを考えると、時間が解決してくれるのかもしれません。ただ、それをのんきに待っているわけにもいかないでしょうから、以前にこちらの記事でもご紹介したような第3者機関的役割を担う企業が、適切な信頼性評価をくだし、消費者に対して信頼性の保証をしていく、というのは、引き続き重要な機能になるように思います。
そうでないとすると、消費者の誰もが「あそこは信頼できるはず」と思える最大手の1〜2社に、業界が独占or寡占されてしまうのでしょうか。せっかくオープンでフラットなECの世界ですから、小さい会社・お店にもチャンスが拡がって欲しいところです。
いずれにせよ、まだまだ不信感の強いネットEC市場に参入する企業にとっては、上記の物流トラブルを始め、決済トラブルや、顧客対応面など、信頼性をいかに培っていくか、極めて重要なテーマになるかと思います。

最後に「③物価・関税」です。
ブラジルにはICMS(商品流通サービス税)と呼ばれる州税があります。州税なので州毎に対象物品も税率も異なります。このICMSに関して今更ながら「ICMSを徴収するのは、商品の発送側の州か、受取側の州か」という話が出ているようです。リアル店舗であれば「店舗の所在地」で済むのでしょうが、ネット販売となると、確かにややこしいですね。
そして残念なことに、どうやら発送側の州と受取側の州でICMSを2分するという方向に話は進んでいる模様です。繰り返しますが「州毎に対象物品も税率も異なる税金」です。いちいち発注のあった1つ1つの商品毎に、発送州と受取州を確認して、それ毎に2分して、それぞれの州に納める・・・などという作業を、今後ECでの販売者はやらねばならないということですしょうか。大手ならまだしも、マーケットプレイスに出品している小規模販売者にとっては厄介な問題ですね。同時に購入者側も「どの州の出品者から買うか」によって値段も変わってきてしまう、と。
運用の手間が増え、コスト上昇を招き、EC市場の発展を阻害しかねない気もしますが、本当にやるのでしょうか。今後の動向に注目です。

まだまだ細かい課題はあるのかもしれませんが、個人的には主にこの3点が気になっています。逆に言えば、このあたりをうまく切り抜けられる手段さえ見つけられれば、一気に差別化も図れ、勝ち組を突っ走れる可能性もある市場かもしれません。

なお、最後に参考までに、AlexaのブラジルランキングTOP100のうち、ECに関連するサイトのみを拾い上げてみました。

▼AlexaのTOP100のうちECに関連するサイト(2012/4/23現在)

Alexa順位サイト名URL分類
12 MercadoLivre mercadolivre.com.br オークション
35 BuscaPé buscape.com.br 価格比較
38 Americanas.com americanas.com.br EC(全般)
45 Amazon.com amazon.com EC(アメリカ)
47 Submarino submarino.com.br EC(全般)
51 groupon groupon.com.br 共同購入
52 peixeurbano peixeurbano.com.br 共同購入
67 dafiti dafiti.com.br EC(靴)
68 netshoes netshoes.com.br EC(スポーツ)
73 pagseguro pagseguro.uol.com.br 決済
74 ebay.com ebay.com EC(アメリカ)
84 PayPal paypal.com 決済
85 Livraria Saraiva livrariasaraiva.com.br EC(書籍)
88 Magazine Luiza magazineluiza.com.br EC(家電)
96 Ponto Frio pontofrio.com.br EC(家電)
98 walmart walmart.com.br EC(全般)

注目すべきは、なんと4番目(Alexa45位)に米amazon.comが、そして11番目(Alexa74位)に米ebay.comが入っていることです。ブラジル政府が上記のような税金等で面倒なことをしていると、そもそも物価は高い国ですから、消費者はこのように国外ECサイトに逃げてしまい、国内市場を食われてしまう可能性があるように思います。(とはいえ、それはそれでブラジル政府は、国外でのカード決済に対して税金をかけ、対応済みなわけですが...)

■おわりに

いかがでしたでしょうか。
課題はまだまだ多いブラジルのEC市場。しかしそうは言ってもネット普及率の上昇にも伴って、まだまだ伸びると予想されている成長市場です。実際に、世界の大手サイトの参入や、国内異業種の参入のニュースを頻繁に目にします。

そして、世界の大手サイトの1つとして楽天ブラジル(ポルトガル語の発音では「ハクテンブラジル」)が、昨年11月のプレオープンから約5ヶ月、いよいよブラジル現地時間の4/23(火)グランドオープンを迎えるようです。同じBRICSの中国からは撤退するという寂しいニュースもありましたが、ぜひここブラジルでは、きっと苦労も多いかとは思いますが、日本と同じくらいに、いや日本以上に、生活に密着したプラットフォームになって頂きたいと、一人の日本人として思います。今後の動向に期待ですね。

では。
Até mais!

▼楽天ブラジル
Rakuten
http://www.rakuten.com.br/

 





▼砂塚裕之



Comment(0)

コメント

コメントを投稿する