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家電量販より高く販売して、お客様から喜ばれるでんかのヤマグチ

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ヤマダ電機、ヨドバシカメラ、ビックカメラといった家電量販店の安売り競争はし烈である。郊外型のヤマダ電機が駅前に進出し、さらに、競争は激しくなっている。池袋の駅前では、大通りをはさんで、どちらの歩道にいても両店の呼び込みの声が聞こえる。また、都市部だけでなく地方都市でも、駅前は、昔、百貨店だっとところが、家電量販店になっているところも多い。

そうした中、家電量販店よりもかなり高い価格で販売して、お客様から喜ばれている街の電気屋さんが町田にある。でんかのヤマグチだ。随分前から気になっていたが、ようやく昨年末、山口社長を訪ねてお会いすることができた。メディアもの取り上げられているので御存知の方もいらっしゃると思うが、簡単にご紹介したい。

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人によって、高額商品の買い方は異なるだろうが、価格コムで最安値を検索⇒家電量販店で確認・交渉⇒妥協できる価格になったら購入 といったパターンの方も多いのでないかと予想する。ネット検索での情報収集になってから、お客様の情報収集コストは手間だけになっている。そうした中、昨年、11月下旬に訪問した際の価格比較であるので、少しデータは古いが、最安値に比べ2倍以上の価格で販売していた。

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通常なら、家電量販店で買うといったことが、合理的な意思決定である。しかし、お得意様は、でんかのヤマグチで買うのである。しかも、周りに家電量販店がないのであれば、遠くまで買いに行かなくてはならないので理解できるが、町田市は、東京のベットタウンで人口約42万人の郊外密集集積地であるが、やまぐちのお店の周りは、家電量販店の包囲網かと思える位、各社がひしめいている。

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経緯を少し紹介すると、96年が転機になる。大手家電量販店の激戦区となった町田市で商売を続けていくために、3万件あった顧客データを1万3千件まで絞りこみ、優良顧客にだけ手厚くサービスするようにしている。

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具体的には、30,000→13,000と顧客の絞込み、「過剰な値引きを要求」、「過去トラブルがあった」、「過去5年に1万円以上の購入がない」というお客様をすべて切る。しして、直近の購入時期を横軸に、過去5年の累計購入額(1万円~100万円以上)を縦軸に顧客ランクを9段階にポジショニングし、セグメント毎に、訪問回数、DM発行回数などを設定と適した販促を実施した。

その結果、2009年のそれぞれのセグメントの人数比率は、1年以内の購入客数が44.2%となっている。下表のカッコ内の数字は2007年の実績である。それぞれのセグメントの人数が上位セグメントへ移行している様子が良く分かる。購入いただいたお客様への徹底したアフターサービスも充実させている。

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結果、96年の業績は、16億円と最も高いが、96年を契機に売上を目標に掲げず、粗利益重視の経営に大きく変更する。この後、10年をかけて、粗利率は25%から38%までに飛躍することになる。ハイビジョンテレビの累計販売台数は12,800台(2010年1月)。これは松下系列販売店のトップである。

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もう少し詳しく言うと、外販営業担当者は一人あたり500人~800人を担当を持ち、訪問による売上は全体の65%である。従業員一人当たりの年間売上高は、電器店平均1,975万円(04年商業統計)に対して、ヤマグチは、2,727万円と752万円もパーヘッドは多いのである。

こうした結果を残している活動を、いくつか紹介すると、新規顧客獲得のための活動は何もしておらず、徹底した口コミマーケティングを行っている。例えば、IHクッキングヒーターの購入客だけの料理教室を開くなど、お得意様を徹底的にフォローしている。

出張訪問が無料である。「遠くの親戚より近くのヤマグチ」と言われる由縁はここまでの徹底した顧客サービスにある。また、商品を購入して頂いた日に即日配送して「買ったらすぐに使いたい。」というニーズにもしっかり応えている。結局、「高いもの程、すぐに来てくれるヤマグチを選ぶ」というお客様が増えている。

具体的なサービスを上げると、

1.電球一個の交換でもトンデ行きます!

2.エコポイントの手続きのお手伝いもします!

3.録画予約もします。高齢者には難しい録画予約やリモコン操作、今日のドラマの番組予約もトンデ行きます!

4.冷蔵庫が壊れたら、修理の前に、クーラーボックスに氷を入れて、エアコンが壊れたら扇風機を持ってトンデ行きます!

5.頼まれれば、営業車で駅まで送ります!

6.頼まれれば、簡単な水回りの修理もやります!

7.頼まれれば、部屋の中の模様替えのタンスの移動もお手伝いします!

8.頼まれれば、「ペットの餌やり」、「庭の水まき」、「留守の見回り」もやります!

又、両替OK、駐車場の開放、トイレの開放、店内電話利用OK、救急箱、地域の詳細地図観覧サービス、AED設置、店内コーヒーサービス、雨の日の傘貸し、雨の日のささやか券発行(100円の金券)など、店舗でも至れり尽くせりのサービスを行う等、お客様にお役に立てることは全て行うといった徹底ぶりだ。

一方、一人一人が毎日・毎週・毎月・半期・年度の目標値を持ち、レジの女性まで目標値を持って数値管理を行っているが、決して競争ばかりではない。数字の出ていない社員がいたら助け合う雰囲気があり、一人一人先輩や山口社長、熊沢店長が個別の指導を行う。基本的には、山口社長を中心とした家族経営なのである。

さらに、みんなで稼いだお金はみんなに分けるといった山口社長の考えから、時折、呼ばれる講演会などで社長がもらう講演料も、全額会社にプールされ、毎年2月~3月に全社員に還元される。税引き後利益は、会社と従業員で折半しているから、モチベーションも高い。

こうした取組みの背景には、以下のような経営理念と活動方針がある。

経営理念

でんかのヤマグチは当店を利用していただく大切な大切なお客様とお客様の為に働く
社員のためにある

活動方針
 ○お客様のわがままをすべて聞くこと
 ○お客様のかゆいところに手が届くこと
 ○お客様の楽しい買い物を楽しくお手伝いさせていただくこと

                                でんかのヤマグチのホームページより

以上、いろいろなことを紹介してきたが、整理すると、

①発想の転換、②思い切った顧客の絞込み、③顧客の分類、、④高齢者をターゲット、⑤徹底したお客様サービス、⑥お店に来てもらう努力、⑦大手には絶対に真似の出来ないきめの細かい顧客サービス 等である。

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山口社長は、中学卒業後、松下電器産業へ就職、カーラジオやステレオを修理する部門で技術を磨き1965年に23歳で起業した。最初は店舗を持たずにライトバン1台で家電の修理を請け負う「便利屋」のような業者であったそうである。その後、「松下のお店」として町の電器店を開き、高度成長期に6店舗まで拡張する。そして、家電量販の出店により、150坪の1店舗に集約した。

もう一人お話をお伺いした熊沢店長は、「やると決めた事をやる。売上が出る出ないに関してはあまり口を出さないが、決めた行動をちゃんと行っていないことや、数字に厳しい」と山口社長を評していたが、私達が、実際にお会いした印象は、「頼りになるやさしい親父」と言う感じだ。

家電業界に限らず、価格だけで競争するといった傾向が強い小売店にとって、でんがのヤマグチは学ぶべきことが多い。

ヤマダ電機に負けない「弱者の戦い方」―セブンとアトム、ヤマグチに学ぶNo.1企業との共存の法則
ヤマダ電機に負けない「弱者の戦い方」―セブンとアトム、ヤマグチに学ぶNo.1企業との共存の法則 月刊「技術営業」編集部

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