活き活きした個人、活性化したチーム、成長し続ける組織、卓越したリーダーシップ・・・を実現する考え方

過疎地で日本中から教習生を集める益田ドライビングスクール

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2011年1月より、萩石見空港の夕方の大阪便がしばらく飛ばないことが発表された。赤字の全日空としては、搭乗率約30%といった状況では経営的な判断としては、やむを得ない面もあるだろうが、益々地域の過疎が進む要因になりかねないと思うと残念である。航空会社の経営努力も十分でないと思うが、政治の影響をまともに受けた根拠が薄い楽観的なシュミレーションのもとで実行される空港建設に、付き合わざるを得ないのも赤字の一因であることは間違いない。そのため、結局、国が航空会社を支援することになるが、税金がつぎ込まれるのは納得できないし、国としてのビジョンが見えてこない。事業仕訳が行われているが、一方、票集めの手段として実行されてきたことを見直し、しっかりとしたビジョンを持って計画をして欲しい。

さて、飛行機の便数も減らされる人口わずか6万人の島根県益田市に、日本中から、年間約6000人の教習生を集める自動車学校がある。益田ドライビングスクールだ。別名、益田の頭文字をとって、Mランドといった方が親しみがある方もいらしゃるだろう。

現在、全国に約1360校の自動車学校があるが、昨年度ベースで、四輪車はNo1であり、二輪車はNo2.(ホンダが経営する二輪車の学校が1位)、そして、全国総合No2である。今、全国に1360の自動車学校があるが、せいぜい年間約1000人の教習生しか集まらないことを考えると、驚異的である。

何故、こんな過疎地で、これだけ人が集まり続けるのだろうか?どうしても、自分の目で確かめたくて、実際に、益田ドライビングスクールを訪問し、小河二郎会長からお話をお伺いした。(尚、単なる自動車学校ではなく、テーマパーク的な楽しさを付加し、Mランドの名称で運営されているので、以下、Mランドとします。)

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以下、代表的な実際の取り組みをご紹介する。

1.挨拶(あいさつ)

小河会長が、若い時、東京へ行った際、外国人は、エレベータであっても気軽に挨拶をするが、日本人は、顔を赤くして黙っている。情けないと感じ、この状況を変えたいと思ったのがきっかけである。そして、ビザの問題など障害があることを乗り越え、Mランドに挨拶をすることを仕事にするアメリカ人、カナダ人、オーストラリア人を10数年間雇って、定着化を図っていった。凄いのは、スタッフがゲスト(教習生の呼名)に対して、挨拶をするのは当たり前であるが、ゲスト同志が挨拶し合っている。現に、私もMランドに着き、少し校内を一人で回っていると、会う人会う人が挨拶をされた。そして、迷っている様子の私に声を掛けてサポートしてくれたのは、ゲストであったのには驚いた。

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2.掃除

Mランドには、2つの塾がある。一美塾と言われる塾でトイレ掃除を、重美塾では、学校内の掃除を徹底的に行う。最初は、特に、トイレ掃除をするとなると、抵抗感を持つゲストもいるとのことだが、経験すると清々しい気持ちになるとのことで、毎日のように参加するゲストもいるという。トイレの中や道具も拝見したが、トイレはピッカピカで、道具もしっかり整理整頓されていた。

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まさに、釈迦の掃除の功徳とイエローハットの鍵山相談役が言われる

1)自身洗浄(自分の心が清められる)
2)他心洗浄(他人の心まで清めることが出来る)
3)諸天歓喜す(周囲の環境が活き活きしてくる)
4)端正の業を植ゆ(周囲の人の心も物事も整ってくる)
5)命終の後、まさに天上に生ずべけん(死後、必ず天上に生を受ける)

で、素晴らしい“気”の循環を創り出している。

3.Mランドマネー

Mランドでは、ここでしか使えない通貨を発行している。この通貨は、100円1ドル換算で販売されている。また、掃除などのボランティアを行うと、15ドル、10ドルといったようにボラティアの内容により支給されて、校内で使うことができるようになっている。これも、小河会長が、海外でやっていることを知り、1年掛けて研究して導入したものだ。Mランドとしては、1年間で数千万円の赤字だということだが、一期一会で出会ったゲストに、良質の経験をしてほしいといった思いで長年続けている。

4.文化施設や娯楽施設

御茶室、ギャラリー、テニス、ゴルフ、岩盤浴、バトミントン、カラオケ、ネイルサロンなど、教習を受けていない時間には、様々な楽しみも用意されている。

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5.心の教育

自動車運転のテクニカルな教育だけでなく、心の教育を行っている。具体的には、教習で使用する道路で、わざと狭い道路を作り、“譲る”といった精神を体験させる。“譲る”ことは、譲れる方も気持ちがいいが、譲った方も気持ちがいいことを実感させるためだ。

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6.MDSまつり

地域活性化のために、Mランドを市民に開放しまつりを毎年行っている。今では、6万弱の益田市において、3万人が集まる大きなイベントになっているが、全て社員の手作りで行われる。地域の方に喜んでもらうために、夜を徹して準備する過程は、最高の社員教育の場となるという。そのため、毎回数百万の赤字が出ていても続けているという。

他にも数多くの取り組みがあるが、全ては紹介できない。小河会長に、以上のような取り組みの根底にある気持ちをお伺いすると、「自動車学校には、15日間しか通わない。昨日入った人もいれば、今日卒業の方もいると、1日しか一緒にいることがない人もいる。せっかく来ていただいたゲストに、一生の内、卒業した後も、免許証以外の何かを持っていってもらいたい」といった気持ちから取り組んでいるとのことだ。まさに一期一会の精神だ。

こうした生活を2週間経験すると、心が洗われるのは容易に想像できる。実際、茶髪にピアスの現代っ子の若者も教育され礼儀正しくなり、親からの感謝の手紙をもらうことも多く、「Mマジック」と言われている。

また、15日過ぎて、残念ながら合格しなかったゲストからも、一切追加費用は取らない。免許が15日間過ぎても取れなかったのは、インストラクター側の教え方が悪いからだといった前提に立っているからだ。

さて、何故、全国からわざわざこんな過疎地まで、年間6000人のゲストが集まってくるかと言えば、ほとんどが口コミだ。多くの合宿のドライビングスクールは、業者からの斡旋で教習生を集めているのが実態であるが、Mランドでは卒業生から紹介で集まってくるのである。

ブランディングは、小手先の手法ではない。以上のような取り組みが、信頼と愛着を生んでいくのである。こんなドライビングスクールなら、是非、自分の娘も御世話になりたいと心から思う。86歳になる小河会長には、いつまでも元気でいて、さらに、益田を盛り上げてほしい。

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