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利他の精神で、好循環を作る美容室バグジー

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全国各地で、代表の久保華図八さんが講演を行い、書籍やDVDも販売されているので、ご存知の方も多いと思うが、北九州小倉に、感動の美容室と言われている(有)バグジーがある。私自身、しばらくサービスマーケティング、サービスマネジメントを勉強したので、以前から知っていたが、遠方といったこともあり、なかなか訪問できないでいた。

しかし、友人から、「しばらく久保さんが講演を休むそうだぞ!(結果的には間違いであったが)」といった話を聞き、どうしても久保さんの話が聞きたくて、昨年10月に京都で開催した講演会にお伺いした。その後、12月には、実際に北九州の店舗を仲間と訪問し、更に、2月の東京での出版記念の講演会と、短期間3回ほどお会いしてお話を伺った。

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バグジーの久保さんは、元々、ハリウッドで、ライオネルリッチーやキャサリンロス等の有名人のヘアーメイクをしていたカリスマ美容師だ。日本へ帰国した後も、外車を乗り回していたような方であるが、社員が久保さんの経営マネジメントに不満を持ち、50名の社員のち38名が辞めてしまい倒産しかけた経験を持つ。その際、残ってくれた社員の方から言われたことから、自分自身の経営の仕方を反省することになる。そして、従業員を大事にして従業員の人がやる気になれば、絶対お店が良くなる。顧客満足の前に従業員満足をやった方がいいと考え始めたのが、今のバグジーの経営である。その後、急激にバグジーは発展することになる。

美容業界について、調べてみると経営は大変だ。退職率も高く、美容学校を出て就職しても、10年で10分の1になる。理由は、一見ファッショナブルであるが、1日中の立ち仕事は重労働である。そして、上場している企業であっても、平均給料は、約280万円と驚くべきほど、他の業種と比べても低い。しかし、この点もやむを得ないところもある。1日にお客様のヘアメイクを行う件数には限界があり、アシスタント等を使い、分業して時間効率を行っても、一人当たりのパーヘッドは50万円がアッパーであるという。

また、一時のカリスマ美容師のブームは去り、何万円も出してヘアメイクをする人は一握りの層だけになった。むしろ、オリックスが運営するQBハウス990円と勝負しなければならない。最近は、男性向けだけでなく、女性向けにも女性版QBハウスであるキャトルボーテといった新業態も出てきている。キャトルボーテの提案するコンセプトは、①ヘアカット&ブロースタイリングを2000円で ②ハイレベル技術 ③予約不要 ④所要時間20分で過ぎても一切追加費用の発生はナシ であり、店舗もきれいだが、基本的には価格と時間の節約訴求である。

以上のような美容業界全体の状況もあり、社会保険も払っていないところがほとんどで、従業員は、基本的には国民健康保険を加入している。そうした中、バグジーは、社会保険を会社が支払い、業界で当たり前の成果給は行わず、且つ、同業者と比べても給料を高く設定している。その他、全社員で合宿を行ったり、店を休んでの東京ディズニーランドへ社員旅行、新人に対する両親への感謝の品物を送ることを義務づけ一人5000円の援助金支給といったことを会社としておこっている。さらに、従業員同士でも、工夫したお誕生日会を開くなど、相互にも動機づけされる風土が出来上がっている。

中小企業で、価格競争はタブーである。ただでさえ、労働集約的でパーヘッドの上限がある中、大手と同じ土俵で価格競争を行うことは自殺行為に等しい。むしろ、土俵を変えることが正しい戦い方である。では、何をやるかであるが、徹底的なお客様とのリレーションシップの確立と、別の価値を提供することである。

久保さんが普段、スタッフに言っていること、バグジーが行っていることを数例紹介すると、

1.徹底的に覚えること                                         年間12回毎月1回お見えになるお客様には、釣りの話をしたら、釣りを次回お話をするといったように、カルテに全部書いておいた方がいい。たばこを吸う人の隣はだめだとか?覚えてあげること。 
2.手間を掛ける
一番指名を取る月500名(雑誌にも載ったスタッフ)のスタッフがいるとのことで、自分のお客様437人に、手作りで年賀状の印鑑を彫って手紙を出すという。すると、正月明けに、436人が来店し、客単に10200円であるので、470万円の売上を上げた。
3.常連主義でないとダメ
新規の人よりも常連を大事にしないとだめであると久保代表は言う。「全然知らない人がチラシで半額なのに、10年通っているお客様が、通常料金の1万円」では還元の仕方が変であるからだ。
         以上、久保華図八代表の講演内容の一部を要約し掲載

さらに、まず他の美容室がやっていないことも、スタッフのアイデアで実施している。例えば、下記のメニューの中から、ご紹介をいただいたお客様が、スタッフの一発芸を選べるといったサービスである。

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私達がお伺いした際の朝礼では、その日に来るお客様全員の状況を、例えば、「9時の予約のお客様の田中さんは、風邪ぎみなので早目にカットをして・・」と言うように、直接担当しないスタッフも、お客様一人一人の状況を把握し、直ぐにサポートできるようにしている。

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また、社会貢献にも熱心だ。例えば、毎朝行われる街のゴミ拾いをしたり、スタッフが自主的に携帯電話のメールで連絡を取り合い、休日に老人施設などを訪ねてボランティアで髪を切るといったことを行っている。そして、こうした「人の役に立つこと」を、久保代表は大いに奨励し応援している。なぜなら、自分達の方が逆に学ぶことが多く、且つ、幸せな気持ちになり、プレゼントをもらっている気持ちになるからだという。そして、こうした活動を行ってから社内の人間関係のトラブルも無くなったそうだ。

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美容院のようなサービス業では、スタッフ(人間)そのものが商品である。その商品が、活き活きとお客様に接することは、その企業のブランド形成を行う上で非常に重要である。久保代表が、全国で講演していることは、バグジーの企業のブランディングには貢献しているのは間違いない。しかし、実際に、行ってみて講演内容と異なれば、かえって信用を無くし、企業ブランドは失墜する。だから、スタッフの真からのホスピタリティーがブランディングでは重要なのだ。そのことを、久保代表もスタッフも、経験の中で理解している。

バグジーの取り組みを見ていると、まさに、取り組みそのものや、スタッフのお客様応対が、企業のブランド形成の土台として重要であることが確認できる。そして、利他の精神による取り組みにより、好循環経営になっているのである。

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