どうしたらネットで力づけられたり、助けられたりするのでしょう?コミュニケーションを観察します。

No.8 一目でわかる匿名レベル!

»

今回は、これまでに書いてきた匿名性の要素をまとめます。

匿名性は、本人を特定する「本人到達性」と、投稿や行為が同一人物であるかを判定する「リンク可能(不能)性」の2つの要素で構成されます。

いわゆる「実名」「仮名」「完全匿名」をこれらの軸で整理すると図のようになります。

Matrix

本人到達性とは、たとえば実名が明らかになっていること、基本四情報(氏名・住所・性別・生年月日)が明らかになっていること、支払や訴えに対する責任がとれる状態であることだと考えてください。一般には、本人到達性が満たされていれば「実名」「匿名ではない」とされ、本人到達性が満たされていなければ「匿名である」とされています。ネットが匿名性の高い場と考えられているのは、コミュニケーションを図る相手のこうした情報が必ずしも明らかではないからでしょう。

リンク可能性(不能性)については、No.5を参照してください。

さて、この図に2つの要素を追加します。まずは、No.1で書いた、「誰の視点による匿名性か」です。  ・ ユーザ間:お互いに誰かわかるかどうか  ・ システムやサービスレベル:IDを持つ者が特定できるかどうか  ・ アクセスレベル:IPアドレス、プロバイダの契約情報など

次に、No.7で書いた「一覧性」です。これはリンク可能(不能)性を可視化したものと考えればよいでしょう。

さて、たくさんの要素が登場しました。図に整理します。

左から、本人到達性、リンク可能性、一覧性です。
最上段は本人到達性がユーザ間でもある状態。先ほどの四象限では「実名」にあたる部分です。
中段は、ユーザ間では本人到達性はないけれど、システムやサービスではID登録などをしている状態。例えば楽天IDでは支払情報を楽天に登録していますが、ニックネームを使うことでユーザ間では本人到達性が無い状態です。
下段は、ユーザ間でもシステムやサービスでも本人到達性はない(※厳密にはIPアドレスから辿ることもできるでしょうが)状態です。

記号は、A=実名、 B(B')=仮名 C(C')=完全匿名、さらに一覧性有は1、無は2としています。
下段が最も匿名性が高く(強く)、上段は匿名性が低い(弱い)状態です。

Tree_3




No.6でとりあげた2ちゃんねるは、本人到達性は「無」ですが、IDの付与や固定ハンドルの使用の有無、またまとめサイトへの掲載によって匿名性のレベルが変わることが素早くわかります。

例:
IDがあり(リンク可能)、まとめサイトに掲載(一覧性あり)であれば、B-1
IDがあり(リンク可能)、まとめサイトがない(一覧性なし)であれば、B-2
「名無しさん」(リンク不能)、まとめサイトがない(一覧性なし)であれば、C

みなさんが普段使っているサービス、どの程度の匿名性があるのかを判断するひとつの目安に使ってみてください。

参考資料:
・Anonymity, Unlinkability, Undetectability, Unobservability, Pseudonymity, and Identity Management - A Consolidated Proposal for Terminology
http://dud.inf.tu-dresden.de/literatur/Anon_Terminology_v0.31.doc
・中田響: 個人情報性の判断構造. 慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所紀要 No.57, pp.145-161,2007
http://www.mediacom.keio.ac.jp/publication/pdf2007/kojin/nakata_kyou.pdf
・大谷卓史: インターネットにおける匿名性はいかに正当化されるか. 吉備国際大学政策マネジメント学部研究紀要第3号 pp43-58,2007
・折田明子、江木啓訓: リンク不能性および一覧性の観点による匿名性の分類. 情報処理学会第37回電子化知的財産・社会基盤研究会研究報告 pp153-158,2007
・折田明子「リンク不能性の観点による匿名性の分類と活用」電子情報通信学会コミュニティ活性化時限研究専門委員会(CoA: CommunityActivation)研究会、2008年2月
・谷口展郎、千田浩司、塩野入理、金井敦: 分散アイデンティティエスクローにおける匿名性/仮名性/本人性の管理に関する考察. 電子情報通信学会技術報告 技術と社会・倫理研究会(SITE) 2005-53 pp.7-12,2006

Comment(1)

コメント

CNETの佐々木氏のブログ“「実名」と「特定」は別のものだ”から訪れました。futureeyeと申します。たいへん興味深い研究をなされていますね。情報社会学の専門家の見解を仰ぎたく、コメントを投稿させて頂きました。

 私は、個と全体とが共栄する未来社会を模索しています。個と全体とが対立する一例として、プライバシーを守りたい個人と顧客情報を収集してマーケティングに活用したい業者とのジレンマがあります。このジレンマを解決する方法として、以下のようなことを考えています。

 本人到達性をなくしてプライバシーをまもりつつも、リンク可能性を持たせて(同一ハンドルネームを用いて)ネット上で行動し、その同一ハンドルネームに紐付けされた行動履歴情報を業者に収集させ、ハンドルネームを通して行動ターゲティング広告等のサービスを享受する。

 このシステムをより発展させたものとして、ハンドルネーム(バーチャルパーソン)に電子証明書を発行して売買取引等に必要な権利能力と行為能力とを保証し、また、本人とは別の銀行口座やクレジット番号を発行し、さらにバーチャルパーソンの住所を最寄のコンビニにした、バーチャルパーソンシステムを、考えました。
 以前ブログに書きましたので、気が向けば立ち寄ってください。
http://d.hatena.ne.jp/futureeye/20061112

 さて、ご相談ですが、業者による個人情報の収集は、あくまでハンドルネーム(バーチャルパーソン)に紐付けられるのみであり、本人非到達性が保証されているのであれば、プライバシーは守られると判断してよいのでしょうか。プライバシーの感じ方は、個人差があり一概には言えないのかもしれませんが、私の場合には、本人非到達性が保証されている限り、行動ターゲティング広告等のサービスを享受して、自分の嗜好にマッチした情報を入手した方が得だ、と感じています。

 特に、真面目人格用のバーチャルパーソンと不真面目人格用のバーチャルパーソンとの2種類を使い分けることにより、真面目人格用バーチャルパーソン自体のプライバシーも保護可能になります。

 いかがお考えでしょうか、ご見解をお聞かせくだされば、幸いです。

コメントを投稿する