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どうしたらネットで力づけられたり、助けられたりするのでしょう?コミュニケーションを観察します。

No.7 匿名性と一覧性

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前回2ちゃんねるの匿名性について書きました。
以前、コメント欄にWikipediaの研究をされた方からコメントをいただきましたが、今回は2ちゃんねるとWikipediaを例に、一覧性が匿名性に及ぼす影響について説明します。

■まとめサイト
最も有名なまとめサイトといえば、2ちゃんねるの投稿をまとめ、「電車男」として有名になった「男達が後ろから撃たれるスレ 衛生兵を呼べ」というサイトでしょう。これほど有名でなくとも、2ちゃんねるに寄せられた投稿、情報交換の結果、トラブル対処などを抜粋しまとめた「まとめサイト」が多数存在します。近頃はこうしたまとめサイトの多くはWikiを利用しており、無料Wikiサービスの@Wikiは特にまとめサイトとして使われています。

こうしたまとめサイトでは、固定ハンドルを元に同一人物の発言を抽出し、列挙しているものも少なくありません。リンク可能な発言を並べることによって、読み返したときに話の流れが見えてきたり、他の発言者の中にまぎれることなく一人の発言を追うことができます。特に相談をしている場合には、相談者の状況が一覧できるのはとても便利ですし、背景をじっくり読んで相談に乗れるというメリットもあります。しかし、一方でそれは相談者の置かれている状況だけでなく、細かな背景、地理的な特徴すら関連づけられていることも忘れてはならないでしょう。限られた地域や特徴的な職業から情報が絞り込まれ、SNSや職業上のサイトと関連付けられて本人が特定される可能性があるということです。

■Wikipedia
少し古いニュースですが「総務省や文科省もWikipediaを編集していた」(Itmedia2007.8.29)という記事がありました。Wikiscanner(日本語版)は、IPアドレスを入力することによって、そのIPアドレスを持っている組織、そのIPアドレスによって書きこまれた記事の一覧が見える
サービスです。Wikiscannerが担っているのは、IPアドレス変換の手間と、Wikipedia内でリンク可能な記事を一覧すること。別に非公開なデータを暴くツールではありません。

Wikipediaで気になる記事があれば、執筆者のIPアドレスやIDを見て、IPアドレスならばどの組織かを変換して調べることができます。すべての執筆者はIPアドレスもしくはIDが表示され、識別されるために、リンク可能性も保たれています。Wikiscannerによって、これらがユーザにとって一覧できるようになったことが、Wikipediaの匿名性に対する見方を変えたと言えるでしょう。

■一覧性と匿名性
一覧できるということは、そもそもリンク可能な状態を検索によって収集し、編集によって並べたにすぎません。しかし、こうした時間と手間をかけずに情報が関連付けられた結果を見られるようになったということは、今までは「見かけ上」リンク不能な情報が、リンク可能に「見える」ようになったと解釈することができるでしょう。

近年、ネット上で実名を書くことに対する抵抗感が高まっていることと、検索技術が向上していることは、無関係ではないと考えています。

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