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どうしたらネットで力づけられたり、助けられたりするのでしょう?コミュニケーションを観察します。

前回はリンク可能(不能)性という匿名性の要素をご紹介しました。このリンク可能(不能)性"(Un)-Linkability"は、匿名性の強さを決める重要な要素です。今回は少し詳しく。

オンラインコミュニケーション研究では、1990年代当初は「インターネットは人間のつながりを希薄にするのではないか?」と考えられていました。相手の顔が見えない(視覚的匿名性)上に、相手の本名も時にはわからない(匿名)な状態という前提つきです。しかし、Waltherという研究者は、オンラインで知り合った人たちが、出会ったことがなくとも親密な関係を作り上げる現象を見て、「匿名であってもコミュニケーションの蓄積によって信頼が醸成される」と述べています。これは、言い換えれば、ニックネームであっても、発言の履歴や本人が発信する情報がリンクされ、蓄積されることによって信頼が醸成されたと解釈できるでしょう。

ご経験のある方も多いと思います。決まったニックネームで掲示板やブログに書き込む場合と、「通りすがり」などの名前で書きこむ場合の違い。これは、そのニックネームにリンクされ、蓄積される情報量の違いです。本名が推定されやすいニックネームなら、本名に付随する情報もリンクされるために匿名性は弱くなりますし、本名がわかりづらいニックネームなら、切り離されるために匿名性は強くなるでしょう。

私も、akoというニックネーム(メールアドレスの左側)でコメントを書くときは、これは匿名性が弱いことを自覚していますし、逆に文脈を切り離したいときには、まったく関係のないニックネームを使っています。表にしてみました。
Exam

「折田明子」で書いているときは(このブログもですね)、私の所属組織、その他の情報が関連付けられるために、匿名性は弱く・・いや、匿名性は無いと言えるかもしれません。「ako」と書くときには、私のメールアドレスがakoと知っている人にとっては、私に関する情報が関連付けられますが、区別がつかなかったり、私と結びつかない場合には、少し匿名性が発生します。「(架空の名前)」を使うならば、akoとすら結び付けられないので、私の所属組織などの情報は秘匿されます。それでも、いろいろな場所で常連として書き込みを続けていれば、その名前に関連付けられる情報や投稿は蓄積しますし、人間関係を築くこともできるでしょう。一つの話題の中でのみ使うニックネームもあります。おやつの話を掲示板でしているときに「チョコ大好き30代」と名乗って、発言の一貫性は保つけれど、他の場所では使わないという形で匿名性を高めることも可能です。ここまでのニックネームは、複数の投稿が同一人物と判定できるリンク可能性を満たしていますが、「通りすがり」は同一人物かどうか判定できないので、リンク不能性を満たす、匿名性の強い状態です。

匿名性の強弱は、こうして名前を選択することでも調整できます。匿名性のメリットとデメリットを判断して、使い分けて行く際の参考になれば幸いです。

ako

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コメント
佐藤忠文 2008/02/25 10:02

はじめまして。佐藤と申します。

大学生なのですが、匿名性に関して関心をもって、卒論にてテーマとして扱いました。

ただ、インターネットの匿名に関する研究の歴史や、背景に関して上手く調査できず、審査においてもそれを指摘されてしまいました。

最近投稿されている匿名性に関するテーマの記事を読んで、恥ずかしながら大変勉強になりました。

もう卒論は出してしまったのですが、自分の情報収集の基礎のなさを反省しつつ、勉強しなおして見たいと思います。

ちなみに、卒論ではWikiscannerから着想を得て、Wikipediaに関して匿名性の影響を調査してみました。

ありがとうございました。今後も購読いたします。

ako 2008/02/27 18:24

佐藤さま

コメントをありがとうございます。
インターネットの匿名性については、私も博士論文を書く際に資料がなかなか集められず時間がかかりました。いろいろなコンテクストで使われるので、定義も違うのが難しいですね。

WikipediaとWikiscannerについて着想を得られたとのこと。実は私もこの2つについて論文で少しふれました。WikiscannerではWikipediaで既に公開されている内容を照会し(IPアドレス)、一覧させただけにも関わらず、匿名性は一気に低下したのが興味深いと感じました。

今後もどうぞコメントやご指摘をお待ちしております。


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折田 明子

折田 明子

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別研究講師。博士(政策・メディア)。専門は情報社会学、IDと利用者行動、プライバシ。ネットで発生する思わぬ助け合いに興味を持っています。Twitterはoritako。

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