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【書評】『知的生産の技術とセンス』

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梅棹忠夫や『知的生産の技術』といえば、失礼を承知ながら「耳にしたことはあるけど詳しくは知らない」という存在のひとつではないでしょうか。梅棹先生は京都大学名誉教授や国立民族学博物館初代館長などといった肩書きを持ち、文化人類学や民族学など幅広いフィールドで旺盛な研究活動を行った人物。情報学の分野にも大きな影響を与え、IT界隈の方々にとっては「情報産業」という名前の名付け親としても知られているでしょう。しかし半世紀近く前に書かれた著作も多く、正直どんな議論を行ってきたのか、よく知らないんだけど……という方が多いと思います(僕自身もその一人です)。

本書『知的生産の技術とセンス 知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ情報活用術』は、そんな梅棹先生の人物像や思考アプローチがコンパクトにまとめられた一冊。ただ梅棹先生が行われた研究活動といっても、前述のようにその領域は非常に幅広いため、本書ではタイトルの通り『知的生産の技術』を中心としてその紹介と現在への応用を考えるという内容になっています。

知的生産の技術とセンス ~知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ情報活用術~ (マイナビ新書) 知的生産の技術とセンス ~知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ情報活用術~ (マイナビ新書)
堀 正岳 まつもと あつし 小長谷 有紀

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サブタイトルに「情報活用術」とありますが、いわゆるライフハック的なテクニック集ではありません。とはいえ読んですぐに役立てられるような情報も収められており、梅棹先生が主張した知的生産の哲学的な部分、すなわち「OS」と、それを実践するための「アプリケーション」の2つの要素が組み合わさった一冊と言えるでしょうか。そして特にアプリケーション面について、クラウドやスマートフォンなどを応用した場合にどのような実践ができるのかという、現在のテクノロジー環境から見たアップデートが試みられています。従って既に『知的生産の技術』の内容に精通しているという方は、こうしたアプリケーション面でのアドバイスを中心に、梅棹忠夫という名前を聞くのも初めてという方は、まずはOSを理解することを優先して目を通すといった読み方ができるでしょう。

ただ、OS面でのアップデートが行われていないわけではありません。特に第6章「情報をどうアウトプットしていくか?」の冒頭で、こんなことが書かれています:

 梅棹先生の『知的生産の技術』では、情報カードや情報整理の部分が非常に具体的なのに対して、情報をアウトプットする部分については筆が重くなっている印象があります。

 それもそのはず、本書の初版が出版された1969年の時点では、出版物の数も今ほど多くはありませんし、一般の読者が自分の知的活動を発表する場は限られていたからです。そこで『知的生産の技術』では「ペンからタイプライターへ」という節で変わりゆく情報アウトプットの方法、そして「手紙」「日記と記録」といった節で個人の知的活動の共有方法や、アウトプットの仕方について触れるに留まりました

そして言うまでもなく、現在においてはこの状況は一変しています。こうしてブログで長文を発表することもできれば、Twitter等で気軽に単文を発信することも、あるいはYouTube等で映像を投稿することも可能です。確かに他人と雑談をしたり、自分だけの日記をつけたりするのも、ネット上で不特定多数の人々に向かってメッセージを放つのも、「情報をアプトプットする」という大きなカテゴリーの中に含めることができ、その意味では根本的な部分の思考法は変わっていないのかもしれません。しかし本書が指摘しているように、「個人の知的アウトプットという意味では過去にない大変化がまさに今進行中」であり、必然的に知的生産のOS面にどのような変化が生じているのか/生じる可能性があるかという領域に踏み込むことになります。

そのせいか、個人的にはこの第6章と、それを受けた結論が書かれている第7章が一番興味深く感じました。著者の堀正岳さん・まつもとあつしさんの思想が最も色濃く出ていて、彼らが現代における情報のインプット/アウトプットをどう捉えているのか、そこに梅棹先生の思想を「土台」としてどのように活用しようとしているかを強く感じることができます。本書によれば、梅棹先生自身がまさに自分の著作を「土台」として、思考のOSやアプリケーションのアップデートを望まれていたそうです。それならば、第6章・第7章こそ、梅棹先生の期待に応えたパートと言えるかもしれません。

確かに「知の巨人」から提供されたOSに意見しようというのは難しく、僕自身も『今こそ読みたいマクルーハン』では、マクルーハンの理論をどう現代に応用するかというアプリケーション面での議論に終始しています。そんな経験もあったためか、第6章・第7章を読んでいて面白く、梅棹先生の主張にどのようなアップデートを試みるのか、その裏返しで「著者らは何が最近の根本的な変化だと捉えているのか」という点について、もっと読んでみたかったと感じています。

先日とあるテレビで、「最近はYouTube上に柔道関連の映像が投稿されることが多く、それを通じて技を学ぶことが可能になった結果、中東~アジアの意外な国々で次世代型の柔道選手が生まれ始めている」という話が紹介されていました。このように現在のインターネットは、テキストによる形式知だけでなく、映像等による暗黙知のアウトプット/インプットも可能になっています。さらにウェアラブルデバイスやセンサー、ビッグデータ関連技術等により、これまで収集できなかった情報が収集され、分析できなかったデータが分析できるようになっています。半世紀前の知的生産の状況と、質的な変化が起きているのは確実であり、新たな知のパラダイムが登場してもおかしくないでしょう。その意味で、梅棹先生の「知的生産の技術」に改めて注目し、それを理解した上で新たな応用を考えるという本書の試みは、今まさに必要なことではないかと感じました。

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