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「エコーチェンバー」化を否定するFacebook

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ソーシャルネットワークは「エコーチェンバー(共鳴室)」になる、つまり異質な人々と交流するというよりも、同質な人々と交流し、一定の思考回路を強化する役割を果たしてしまうのではないか?という懸念が強く主張されてきました。実際に震災後の日本を見ていると、様々な社会的イシューにおいて、この状況が顕著に見られるように感じます。では実際のところはどうなのか――Facebookから、同社のソーシャルネットワークを基にした興味深い研究結果が発表されています:

Rethinking Information Diversity in Networks (Facebook)

Some claim that social networks act like echo chambers in which people only consume and share information from likeminded close friends, stifling the spread of diverse information. Our study paints a different picture of the world.

Instead, we found that even though people are more likely to consume and share information that comes from close contacts that they interact with frequently (like discussing a photo from last night’s party), the vast majority of information comes from contacts that they interact with infrequently.  These distant contacts are also more likely to share novel information, demonstrating that social networks can act as a powerful medium for sharing new ideas, highlighting new products and discussing current events.

ソーシャルネットワークは「エコーチェンバー」として機能する、つまり同じような思想を持つ身近な友人としか情報を共有しなくなり、幅広い情報の流通が妨げられるようになるという主張がある。しかし私たちの研究結果は、それとは異なる世界があることを示している。

研究の結果、人々は頻繁に交流する(前日のパーティーの写真で語り合うなど)身近な存在とより情報を共有する傾向があるものの、情報の大部分はそれほど頻繁に交流しない人々からもたらされることが確認された。そうした弱い絆からもたらされるのは新しい情報であることが多く、ソーシャルメディアが新しいアイデアを共有したり、新しい製品に注意を向けたり、現在進行形の出来事について語り合うための強力なツールとなり得ることが示された。

とのこと。具体的な調査内容については本文を確認して頂きたいのですが、以下にポイントとなる部分を引用しておきたいと思います:

Let's consider a hypothetical example (illustrated in Figure 5). Let's say a person has 100 contacts that are weak tie friends, and 10 that are strong tie friends.  Suppose the chance that you'll share something is very high for strong tie friends, say 50%, but the weak tie friends tend to share less interesting stuff, so the likelihood of sharing is only 15%. Therefore the amount of information spread due to strong and weak ties would be 100*0.15 = 15, and 10*0.50 = 5 respectively, so in total, people would end up sharing more from their weak tie friends.

It turns out that the mathematics of information spread on Facebook is quite similar to our hypothetical example: the majority of people’s contacts are weak tie friends, and if we carry out this same computation using the empirical distribution of tie strengths and their corresponding probabilities, we find that weak ties generate the majority of information spread.

次のような状況を仮定してみよう。ある人物が100人の友人と「弱い絆」で、10人の友人と「強い絆」で繋がっているとする。「強い絆」の人々は興味深い情報を50%の確率でシェアし、「弱い絆」の人々はそれほど関心を惹かれない情報を15%の確率でシェアする。従って流通する情報量は、「強い絆」からの分が100×0.15で15、「弱い絆」からの分が100×0.5で50となる。トータルで見ると、人々は「弱い絆」の方からより多くの情報を得ていることになる。

研究の結果、Facebookにおける情報流通の計算式は、上記の仮説と非常に近いことが明らかになった。友人登録している人々の大部分とは「弱い絆」で結ばれており、実証された「強い絆」の分布状況と情報共有の確率に基づいて計算すると、「弱い絆」が情報拡散の大部分を生み出していることが確認されたのである。

ということで、文字通り「弱い絆」は関係性の薄い人々ではあるものの、その数の多さ、自分との異質性、そしてソーシャルネットワークサービスが彼らとの絆を維持しておくことを容易化したことで、彼らを経由して大量の新たな情報がもたらされるという状況が実現していると。少なくともFacebookというプラットフォーム上ではそのような状況であり、従ってエコーチェンバー論は当てはまらない、という結論になっています。

もちろんこの結論が万人に当てはまるという訳ではありません。本当にごく親しい友人としか友人登録していないよという方も多いでしょうし、自分とは異質の情報については、シェアされても気にしない・目にしても無視するという可能性については考慮されていません。しかしそれでも、「弱い絆」が持つ情報流通上の役割について光を当てたという点で、考慮に値する研究結果ではないでしょうか。

さらに言えば、ソーシャルメディア上で「弱い絆」を維持しておくことの意味というのも変化してゆくのかもしれません。もちろんスパム的に友だちを5,000人まで増やせ!という意味ではなく、適度に疎遠な人々、あるいは異質な人々との情報経路をソーシャルメディアで構築することで、思考回路の動脈硬化を防ぐといったところです。もちろんそれを本当の意味で有意義なものにするためには、上で指摘したような「共有されたけど受け入れない」という意識を意識的に排除して、新しい情報に対して心理的にオープンになっておくことが欠かせませんが。

Grouped: How small groups of friends are the key to influence on the social web (Voices That Matter) Grouped: How small groups of friends are the key to influence on the social web (Voices That Matter)
Paul Adams

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