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デモがメディアを持つ時代

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ニューヨーク・ウォール街で行われているデモ"Occupy Wall Street"(文字通り「ウォール街を占拠せよ」の意味)。「(国民全体の)1%による腐敗と強欲を許さない」という曖昧な目標を掲げていますが、彼らに触発された活動が全米の他の都市にも広がり、さらに2001年にノーベル経済学賞を受賞したジョゼフ・スティグリッツ教授が参加するなどの展開を見せています。

このデモ活動がどんな結果を迎えるのか分かりませんが、個人的に興味深く感じているのが、当初からネットによる発信に力を入れている点。支援サイト"OccupyWallSt.org"(※公式サイトではなく、あくまでも賛同者が立ち上げたものという位置付けです)にはこんな宣言が掲げられています:

Occupy Wall Street is leaderless resistance movement with people of many colors, genders and political persuasions. The one thing we all have in common is that We Are The 99% that will no longer tolerate the greed and corruption of the 1%. We are using the revolutionary Arab Spring tactic to achieve our ends and encourage the use of nonviolence to maximize the safety of all participants.

「ウォール街を占拠せよ」は様々な人種、性別、政治的信念の参加者が集まった、リーダーを置かない抗議活動です。共通しているのはただ1つ。「私たちは1%による腐敗と強欲を許さない、99%の人々である」という点です。私たちは「アラブの春」で活用された革命的な戦術を用いて目標を達成しようとしており、参加者全員の安全を最大限守るため、非暴力的に行動するよう呼びかけています。

この宣言を体現するかのように、同サイトにはブログ・ライブ映像チャンネル・チャット・オンラインフォーラムといったお馴染みのコンテンツが用意されており、さらに支持表明したユーザーの居場所を伝える地図(そこから各ユーザーにプライベートメッセージを送信可能)や、寄付金の受付などといった機能も加えられています。もちろん専用のTwitterFacebookページも。

他にも彼らがネットを活用している点について、こんな報道があります:

米国:「ウォール街を占拠せよ」…経済格差反発、デモ拡大 (毎日jp)

拠点となっているマンハッタン南部の公園では、何台も並んだパソコンに向かって若者らが情報の更新を続ける。電源は携帯用のガス発電機で確保。参加者の一人はAP通信に「大手メディアがデモを取材するかどうかは関係ない」と息巻いた。ウェブサイトで流れるデモの生放送は3万人以上が見ているという。

ウォール街デモ:市場経済行き過ぎ抗議 アラブの春に触発 (毎日jp)

一日に2回、「ゼネラル・アッセンブリー(総会)」と呼ばれる会合を参加者全員で開き、予定を決める。病気の参加者を治療する「医療班」や食料を担当する「食料班」のほか、集会やデモの様子をインターネット上に動画で流す「メディア班」もある。

そしてこの「メディア班」ですが、さっそく面白い成果をあげています。保守的な姿勢でお馴染みの米FOXニュースがデモを取材、ところがその映像が一切テレビでは流れず(実のところ、現時点まででFOXニュースでは一切デモ関連の報道がなされていないのだとか)、お蔵入りになりかけたところ……実は「メディア班」も独自に取材の様子をカメラに収めており、その映像からなぜFOXがオンエアしようとしなかったのかが明らかになったという展開に:

Exclusive: Occupy Wall Street Activist Slams Fox News Producer In Un-Aired Interview (Video) (New York Observer)

以下がその映像。インタビューを受けているのがデモのメンバーの一人、Jesse LaGracaという人物なのですが、彼がマスメディア(特にFOXのような保守系メディア)を「プロパガンダ・マシーン」と揶揄しています:

こりゃFOXも握りつぶして当然と言うべきでしょうか(笑)。もちろんテレビ局は収録したインタビューを全て流さなければならない、という義務も責任もないわけですが、「取材しておきながらオンエアはしなかった」という情報をこうして発信できるというのは、デモ隊にとっては「してやったり」というところかもしれません。

そもそもデモという行為自体、自分たちの意見に世間の注目を集める手段なわけですが、これまではマスメディアの情報発進力を間接的に利用しなければなりませんでした。しかしネットを使えば彼らに肩を並べるまではいかなくとも、かなり広範囲にまで情報を拡散できるようになった(そして時にはマスメディア側の矛盾を突けるようになった)時代、こうして自らの「メディア」を装備してからデモに臨むというのがスタンダードになるのでしょう。ここまで重装備というか、組織化されてはいないものの、最近日本で行われているデモ活動にも同じような動きを見ることができます。

逆に言えばこれからは、マスメディアによる報道を意識した場所/マスメディアが報道せざるを得ない場所(各国の議会や立法府に関する建物の前など)でデモを開催せずとも、ネットを通じてデモ支持者の広がりを印象づけることが可能になるのかもしれません(前述の「支持者所在地マップ」などはそうした可視化の一つの例と言えるでしょう)。さらに戦術が進化すれば、メールやネット広告などを組み合わせて、実態以上の影響力を演出することも……そこまで行くと褒められたものではありませんが、良くも悪くも、ソーシャルメディア時代のデモ活動が新たな姿を見せるようになる可能性は高いのではないでしょうか。

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