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米「一般教書演説」公式サイトに見る、国民を参加させるための工夫

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今週の月曜日、日本では管首相による施政方針演説が行われました。当然ながら各報道機関で報じられていますので、どのような内容だったかご存知の方も多いでしょう。しかし「マスゴミは事実をねじ曲げて伝える!」という風潮が強い中でも、オリジナルの映像や原稿に最初から最後まで目を通した、という方はそれほど多くないのではないでしょうか。ええ、かく言う自分もその一人です(偉そうにしてごめんなさい)。

ではオリジナルの施政方針演説をどこで確認できるのか。これも当然の話ですが、首相官邸公式サイトで全体が公開されています:

第177回国会における菅内閣総理大臣施政方針演説 (首相官邸)

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上がそのスクリーンショット。政府インターネットテレビによる動画コンテンツと、全文PDFへのリンク、そして全文テキストが掲載されている、極めてシンプルなページです。これでも十分便利な時代になったものですが。

また僕が確認した限りですが、現在のところ、YouTube上では公式な形での映像配信はなされていないようです(間違いであればご指摘いただければありがたいです)。ただbtk556さんというユーザーが映像をアップされていますので、それを埋め込んでおきましょう:

 

さて、ここから本題なのですが、米国で施政方針演説にあたるのが、大統領による一般教書演説です。こちらも今週、現地時間で1月25日に行われました。ではこの一般教書演説が、米連邦政府の公式サイト上でどのように配信されているのか――なかなか興味深い対応を行っていますので、ぜひアクセスしてみて下さい:

State of the Union 2011 | The White House

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全体ではありませんが、上がそのスクリーンショット。まず象徴的なのが、"The State of the Union"というタイトルの横にある"Watch and Engage"というキャッチコピー。「演説を見て、そしてあなたも参加しよう」といったところでしょうか。

では「参加させる」工夫として、どのようなことが行われているのか。スクリーンショットでも小さく写っていると思いますが、「ツイートする」ボタンと「Facebookでシェアする」ボタンがありますね。ソーシャルメディア時代では当たり前の話かもしれませんが、こうしたボタンがちゃんと設置されているところに、米政府の姿勢を感じます。

そして埋め込まれている映像は、これも当然ながらYouTubeのもの。従って以下のように、公式映像を埋め込むことができます:


一見してすぐに気づかれると思いますが、大統領の演説に合わせ、映像の横にチャートのようなものが表示されます。これで演説がより理解しやすくなるという仕組み。これも些細な工夫ではあるのですが、国民に興味を持ってもらう効果としては大きなものがあるのではないでしょうか。

また演説が終わってしまえば、このページの更新も終わり、というわけではありません。様々な人物による「演説の内容を解説する」「国民からの疑問に答える」セッションが開催されており、それがページ下部でアナウンス/配信されています。またメールアドレスを登録しておけば、こうした更新をお知らせするメールが届くという仕組み。

さらに「一般教書演説」という行為に関する豆知識コーナー(?)まで用意されていて、「1790年から1934年までは、一般教書演説は『年頭のメッセージ』(the Annual Message)と呼ばれていた」などという簡単な情報を知ることができます。個人的にはこういう軽い工夫も好きだったりするのですが。

もちろんこうした姿勢は、有権者との対話を重んじる/重視せざるをえない米国の政治制度から生まれたものと言うこともできると思います。しかし結果として、国民の政治に対する関心や理解度を高め、自らも参加しよう姿勢を促す効果があることは間違いないでしょう。本来であれば国民の側から自発的に関心を持つようにしなければならないというのも事実ですが、税制度改革や社会福祉制度改革といった大きな変更が加えられようとしているいま、日本でもこうした工夫が行われてゆくべきではないでしょうか。

【○年前の今日の記事】

「落語収録済みICレコーダー」登場 (2009年1月27日)

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