「拡張」方法の多様化する「拡張現実」
拡張現実(AR)というと、まだまだ「3DキャラクターがPCの中を走り回る」的な想像をされる方も多いかもしれませんが、極めて実用的な用途に用いられるものも増えてきています。例えばこちらの例を見れば、ARに対する認識が変わるのではないでしょうか:
■ LookTel: Augmented reality for visually impaired (mobihealthnews)
最近TechCrunchでも紹介されていたので、見た記憶があるという方も多いでしょう。視覚障害者をサポートするために開発されたアプリ”LookTel”についての記事です。いったいどんなものか、紹介ビデオをご覧頂いた方が早いかもしれません:
お分かりいただけたでしょうか。要はユーザーの代わりに「目」となって世界を認識し、音声化して伝えてくれるというもの。OCRも機能の一つに含まれていますが、「文字だけでなく世界全体を認識できるOCR」と捉えられるかもしれません。映像の最後にも出てくるように、街中で周囲の施設を認識・案内するということも可能になっています。
「これもARと言えるの?」と戸惑う方もいらっしゃるかもしれませんが、例えばセカイカメラが「エアタグ」という文字で現実世界に情報を付与しているのに対して、LookTelは音声で同じ事をしていると考えれば分かりやすいでしょう。映像の途中で、特別なバーコードに独自の情報を付与してやることで「お気に入りのクッキー」を認識させるというシーンが出てきますが、実現方法は違えどエアタグを埋め込む行為とよく似ています。現実に付与される情報を文字で受け取るか、音で受け取るかという差だけで、どちらも「拡張」現実であると言えます。
以前個人ブログの方で、「音のAR」という記事を書いたことがありました:
■ 音の拡張現実 (Polar Bear Blog)
独ドレスデンに設置された「第二次世界大戦中の爆撃音を再現する手すり」という例を紹介したものですが、これも「現実に情報を付与する」という点で、ARの一種と言えるでしょう。むしろ「ARとは特殊なメガネをかけることで、情報がCGで与えられるもの」といったステレオタイプな発想をしない方が、今回のLookTelのようなアプリケーションが生まれやすくなるはずです。
冒頭の例のような「視覚によるAR」の分野では、日本は世界をリードする存在になっていますが、こういった直接的な視覚以外の分野でもアプリケーション開発が進むことを願っています。またそうすることで、ARがより多くの人々にとって一般的な存在になっていくのではないでしょうか。
【○年前の今日の記事】
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