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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

2010年のキーワードになりそうなものがいくつか登場していますが、その1つに「スマートグリッド」が含められるでしょう。オバマ政権の注目政策として認識されたこともあり、昨年から話題になっていますが、初期のバブル的な夢物語から具体論が本格化しつつあります。それに従い、様々な問題も表面化してきているようです:

それほど賢くない? Smart Grid普及に反旗をあげる住民たち。 (masayangの日記(クロスバイク通勤他)

San Jose Mercury の記事を紹介されていますが、どうやらスマートメーターをめぐるトラブルが発生しているようです。それだけならまぁ、不具合を直せば良いという話ですが(ただし今回は「以前の計測方法の方が間違っていたのでは」という疑いもあるようです)、問題は後半の部分。スマートメーター、ひいてはスマートグリッドという新しいインフラに対する投資が最終的に電気料金の値上げという形で跳ね返ってくるならば、投資対効果が不明確な中では賛成できない――確かに出てきてもおかしくない意見です。

それでは住民たちが値上げを許容するエリアから段階的に導入していけば良い、というのも一つの考え方ですが、一方でこんな意見もあります:

Smarter Energy - Open to Everyone or This Decade's Digital Divide? (Smart Products Ecosystem Connections)

This leads to the question of whether we are facing another “digital divide” as consumers who cannot pay for the latest smart energy technology will lag behind. Record numbers of low income and senior citizens report they are unable to pay for heat this winter and funding for Low Income Home Energy Assistance Program, or “LIHEAP,” is expected to be over $5 billion this year. They’re thinking about staying warm, not about smart devices.

The immense potential of a national smart grid is dependent on changing consumer behavior and that requires that all Americans have access to the tools to monitor energy consumption and lower their usage and bills.   Ubiquitous use of computers, the internet, even mobile phones, once thought to be the domain of the tech savvy and wealthy, have been made affordable by innovation and public policy. 

最新のテクノロジーに金を出す余裕のない人々は、時代から取り残されるという「デジタルディバイド」の新しい事例を目にしつつあるのではないか――これが次に出てくる疑問だ。記録的な数の低所得者や高齢者が、この冬の暖房費を支払えないだろうと報告されているし、また今年の低所得世帯向けエネルギー支援プログラム(Low Income Home Energy Assistance Program, LIHEAP)の予算は50億ドル以上になると予想されている。

全国レベルでのスマートグリッドが持つ潜在能力をどこまで引き出せるかは、消費者の行動を変えられるか否かにかかっており、それには全てのアメリカ国民が自分のエネルギー消費行動をモニターするツールを使用可能で、エネルギー消費量と利用料金を低減できるようになっていなければならない。かつては技術オタクや富裕層のものと思われていた、コンピュータやネット、携帯電話が誰でも使えるようになったのは、イノベーションや公共政策のおかげだ。

「(金銭的な意味で、あるいは知識や能力といった面で)使える人だけ使えば良い」という方針で技術を導入していては、新たなデジタルディバイドを引き起こしかねない。この意見も、まったくの杞憂とは言い切れないでしょう。さらに売電なども本格化すれば、様々な装置を買う余裕と、それを使う知識のある人々は電気で逆に儲けることすらできるのに、そうでない人々は高い電気料金を負担しなければならない――そんなことになれば、大きな社会問題になります。情報インフラ以上に、人々の生活に直接的なインパクトを持つエネルギーのインフラを、どうやって整備していくか。ある意味で技術論以上に困難な問題が、そこには含まれているはずです。

ただこうした問題点が明らかになってくるというのは、冒頭に書いた通り、それだけスマートグリッドという概念が現実のものとなりつつあるという表れでしょう。従って個人的には、スマートグリッドの後退というよりも、前進を感じさせるエピソードだと考えています。本当にスマートグリッドという世界が現実になるのかどうか、まだまだ不確定な部分は強いですが、少なくともチャレンジが本格化することだけは間違いないでしょう。

*****

そういえば今回が今年初めてのエントリでした。遅くなりましたが、みなさま明けましておめでとうございます。

この「シロクマ日報」も、スタートしてまもなく4年になろうとしています。ここまで続けてこれたのも、いつも読んで下さる方々がいたからこそ。ここ数週間、まさしく今回のテーマ「スマートグリッド」関連で忙しい日々を送っていますが、少しずつブログは更新していこうと思いますので、今後ともよろしくお願い致します。

ちょうど3年前の今日に書いたエントリで、サンテグジュペリのこんな言葉を紹介していました:

船を作ろうと思ったら、人々に材料を集め、作業を分割し、指示を与えようとしてはならない。最初にすべきことは、果て無き広大な海への憧れを語ることだ。

スマートグリッドという新しい海に乗り出すにあたって、この言葉を実感しています。幸いなことに、この果て無き世界への憧れを胸に抱くことができました。微力ながら、少しずつ漕ぎ出していこうと思います。

【○年前の今日の記事】

教育メディアとしてのケータイ小説 (2008年1月10日)
つくること - 思い = ゼロ (2007年1月10日)

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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