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位置情報が Twitter をニュースメディアに変える?

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リスト機能に続き、ついに公式RT機能のベータテストも始まりました。しかし「実装される」というアナウンスがありながら、未だに正式公開されていない機能が1つ残っています。それは位置情報の付与。現在もクライアント等を使えば位置情報の埋め込みは可能ですが、あくまでも非公式な使い方であり、公式に位置情報が格納されることになれば利用範囲が大きく広がると期待されています。今年8月に計画が発表されており、僕も『「ツイッター」でビジネスが変わる!』のあとがきで「本書が出版される頃には公開されているかも」などと書いてしまったのですが、結局その後に発表されたリスト機能にまで先を越されてしまいました。

そんなわけで皆さん忘れつつあるかもしれない位置情報表示ですが、Twitter の今後を占う上で欠かせない要素であることが New York Times の記事で改めて指摘されています:

Refining the Twitter Explosion (New York Times)

この中で興味深い事例が紹介されています。先日、米テキサス州にあるフォートフッド陸軍基地で銃乱射事件が発生しましたが、この事件に対して Twitter がどのように反応したかというと:

Until lately, the main way to make sense of an urgent outpouring of tweets on a particular subject was to use text searches: look for the phrase “Fort Hood,” for example, or maybe an agreed-upon label, “#fthood,” within tweets. Yet during events like the shootings on Thursday at Fort Hood that left 13 people dead, this method is useless. Hundreds of “relevant” tweets pop up every minute, most repeating the same news reports over and over again or expressing concern from far away.

これまで、あるトピックに関する膨大なツイートの中から情報を引き出すためには、テキスト検索を使うしか無かった。例えば「フォートフッド」というキーワードを使ったり、「#fthood」というハッシュタグを使ったりという具合である。しかし13人が死亡した、フォートフッドでの銃乱射事件のような出来事の場合、この方法は通用しない。無数のツイートが次々に投稿され、同じニュースを繰り返すか、事件の現場から遠く離れた場所で感想を述べるだけだからである。

ということで、リアルタイムでご覧になっていた方もいらっしゃるかもしれませんが、この件に関するツイートが大量に発生してしまい、「事実を伝えるツイート」「メディアから得た情報を繰り返すツイート」「感想を述べるツイート」がごっちゃになってしまったわけですね。これは程度の差はあれ、Twitter を使って情報収集する場合にどんなトピックでも発生する問題だと思います。

しかしここに「位置情報」という要素が加わった場合、変化が見られたと記事は指摘します:

Even now, before the geolocation feature has been released to developers, visitors toTwitter.com have been able to limit searches by location based on the profiles that Twitter users provide when they sign up.

That simple filter made a huge difference in what a visitor to Twitter’s search engine discovered about the Fort Hood shootings. After limiting searches to those from within 15 miles of Killeen, Tex., a town near the Army post, you easily find messages sent by soldiers describing what it is like to be on lockdown or worrying about their children at school on the post.

位置情報機能は開発者にのみ公開されているが、現時点でも位置情報を検索条件に加えることは可能である。Twitter ユーザーが登録時に入力した、プロフィール欄の位置情報を参照しているのだ。

この単純なフィルターを使うだけでも、フォートフッド銃乱射事件に関するツイートの検索に違いをもたらすことができる。検索結果をテキサス州キリーン(陸軍基地の近くにある町)から15マイル以内に限定すれば、兵士たちが投稿したメッセージを簡単に見つけられるだろう。彼らは封鎖された基地の内部がどんな状態かを語ったり、子供たちを心配したりしている。

当然ながらプロフィール欄の情報は自己申告されたものであり、また個々のツイートではなくアカウント全体に適用されるものですが、それでも検索の精度を改善するのに役立った、と。位置情報機能が公式に実装され、個々のツイートのレベルで位置情報が付与されるようになれば、さらに適切な情報が拾えるようになるでしょう。

もちろんこの機能が実装されたからといって、GPS機能付きの端末が必要になりますし(何らかの方法でマニュアル入力も可能になるのでしょうが)、また誰もが喜んで位置情報を公にするとは限りません。先ほどの New York Times の記事でも指摘されていますが、プライバシーの問題が密接に関わってきます。しかし、例えば「自分のツイートは真実である」という信頼性を増すための一種のマークとして、位置情報を付与するという行動が生まれる可能性があるのではないでしょうか。例えば先日も、横浜で起きた立てこもり事件が Twitter で中継されるという出来事がありましたが、「自分が現場のすぐ近くにいる証拠=ツイートが真実である証拠」として位置情報が使えるはずです(もちろん近くにいる=ウソをついていない、とは限らないのですが)。

過去にもイランでの騒乱や中国の大地震、インド・ムンバイのテロ事件など、Twitter が一次情報を伝える重要なメディアとして位置付けられながら、その一方で「この投稿者は本当に現場にいるのか?」という疑念が常につきまとったり、ニセ情報に Twitter 全体が振り回されるということがありました。そのすべてが解決されるなどと言うつもりはありませんが、位置情報の実装は Twitter を信頼されるニュースメディアに近づける一歩になるのかもしれません。少なくともこの機能が公開され、本格的に使われるようになる(であろう)2010年は、Twitter の重要性はさらに増しているのではないでしょうか。

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