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MIT の学生、Facebook からプライバシーを暴く技術を開発

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例えば TwitterStats というサービスを使えば、指定した Twitter ユーザーが何曜日、何時頃につぶやく傾向があるかが分かります。そこからその人物が夜型なのか朝型なのか、あるいは土日が休みの仕事なのか等、ある程度の生活パターンを想像することができるでしょう。

このように、オンライン上で公開されている個人のデータを分析すれば、そこからその人物についてある程度把握することが可能なことは以前から指摘されてきました。また TwitterStats のような形で実現もされてきたわけですが、単に「夜型か朝型か」といった他愛もない話ではなく、より個人のプライバシーに近い情報までが把握できるようになってきたようです:

Project ‘Gaydar’ (The Boston Globe)

「ゲイダー」とは聞き慣れない言葉ですが、「ゲイ(同性愛者)」と「レーダー」を組み合わせた言葉だと言ったら、ここまでの話の流れで想像がつくでしょうか。実はMIT(マサチューセッツ工科大学)の学生が、SNS上にあるデータからどんなことが分かるのか(もちろん明言はされていない事実について)を実験してみたところ、その結果は驚くべきものだったということが紹介されています:

Using data from the social network Facebook, they made a striking discovery: just by looking at a person’s online friends, they could predict whether the person was gay. They did this with a software program that looked at the gender and sexuality of a person’s friends and, using statistical analysis, made a prediction. The two students had no way of checking all of their predictions, but based on their own knowledge outside the Facebook world, their computer program appeared quite accurate for men, they said. People may be effectively “outing” themselves just by the virtual company they keep.

SNSの Facebook のデータを分析してみたところ、彼らは驚くべき発見をした。ある人物の友人関係を分析しただけで、同性愛者かどうかを予想することができたのである。彼らはある人物の友人の性別と性指向を分析するソフトを使い、さらに統計分析を行うことによって、予測を可能にした。得られた結果の全てについて、その正誤を確認することはできなかったが、しかし彼らは Facebook 外の情報に基づき、予測が男性については極めて正確だったと結論づけている。

ということで、実際には結果が検証されているわけではないので(全員に聞くわけにもいかないから当然ですね)、どこまで正しいのかは分かりませんが。ただし、こういう発想を現実のものとすることが可能になりつつある、という点に注目すべきでしょう。ちなみに彼らはこの研究(プロジェクト・ゲイダー)の結果を学術誌に載せるとのことですから、それを元にさらに精度の高い予測モデルがつくられるという可能性もあるはずです。

既に明らかになっているデータを分析することで、明確にはなっていない事実を導き出す。その可能性とリスクについては、このブログでもご紹介したことのある『その数学が戦略を決める』や『数学で犯罪を解決する』などといった本でも指摘されています。ただしそこで語られていたのは、公的機関が保有しているデータなど、ある程度一般的には入手がしづらいものでした。しかし Facebook や Twitter などのソーシャルネットワーク、そしてそれを対象にしたSNA(ソーシャルネットワーク分析、実は前述のプロジェクト・ゲイダーもこの範疇に入ります)技術の発達により、個人のプライバシーを暴くことは想像以上に容易になっているのかもしれません。「面接官にバレないようにオンライン上から過去のバカな行為の痕跡を消す」――その程度の秘密工作では、自分の秘密を守れなくなってくる時代がそこまで来ているのかも。

オンライン上で活動することも、現実の世界で活動することも、実際にはそれほど大きな差はありません。しかしある1つの決定的な違い――オンライン上の活動はすべて履歴が残り、それを数値化して分析することが容易であるという点によって、このようなプライバシー侵害が可能になってしまうわけですね。プライバシーを守りたければ、現実の世界でよりもずっと慎重に行動するか、あるいは可能な限りオフライン状態を保つか――さもなければプライバシーなどあきらめてしまうか、という選択を迫られる状況になりつつあるのではないでしょうか。

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