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「リンク・イズ・マネー」は、もはやネット上だけのルールではない。

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会社を病欠している日にネットに書込みをしたことが原因で、一方的に解雇される――こんな話がネットを賑わせています。その会社の経営者が、ブログ上で解雇のことを「(社員を)ひねり潰す」などと表現したこともあり、逆に経営者の方が炎上する騒ぎに(彼にはこの本をお薦めしておきましょう)。しかし年配の方々の中には、以下のように感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか:

その経営者の判断はともかく、なんで若い連中は、プライベートをネットで晒すんだ?病欠してるなら大人しくして、ネットを控えていればいいのに。

この疑問について、僕なりの考えを述べてみたいと思います。

上記のような事件が起きると、よく識者などと呼ばれる人々が

若者はネットの怖さを認識していない。彼らは自分たちの行動がバレないと勘違いしているのだ。

とコメントしているのを目にします。確かに若者には、何らかの知識の欠如があるのかもしれません。しかしネットが登場して間もない時代ならいざ知らず、生まれた頃からIT技術に触れて育ってきた「デジタルネイティブ」と呼ばれる若者たちが、リスクを全く認識しないなどということがあるでしょうか?リスクがあることを知りつつも、一方で生まれるメリットの方に目が向いてしまっている、と考えるのが自然ではないかと思います。

では、プライバシーを切り売りすることで生まれるメリットとは何か。それは「他人とのつながり」ではないでしょうか。「私は今日、こんなことをした。こんなことに興味を持ち、こう考えた。こんな本を買って、こんなソフトをダウンロードして……」などといった書込みを通じて、同じような趣味や関心を持つ人々とつながることができます。そこから新たな情報や精神的な満足感などが手に入り、時には新しい仕事といった実利が生まれることもあるでしょう。そんなメリットを感じていれば、少しぐらいプライバシーを無視してしまうことなど気になりません。

WEB2.0の時代になり、「リンク・イズ・マネー」という言葉が聞かれるようになりました。文字通り、他のサイトからのリンクが多ければ多いほど、あるサイトの価値が増していくということですね。かつては「勝手にリンクするな!」などという"プライバシー"を声高に叫ぶサイトもありましたが、もはや例外的な存在であり、プライバシーなど一文の得にもならなくなったのがネット時代。積極的に外に出て、他人と繋がり、リンクしてもらうこと――それこそが、自身の価値を高める絶対的なルールとなりました。そしてこの「リンク・イズ・マネー」が、もはやネット上だけのルールではないということを、若い人々は理解しているのではないでしょうか。

「外部との"つながり"など不要。会社の中の人々とつながればいいじゃないか」という反論もあるかもしれません。しかし、会社が父親的な存在だったのはずっと過去の時代。今では会社におんぶに抱っこという態度ではいられませんし、むしろ社員個人の価値が高まった方が、会社にとってもメリットが大きいと考えるべきでしょう。

……と、こうやってブログを書いている僕が言ってもあまり説得力はないのですが。兎にも角にも、ネットに足跡を残すというのは大きな意味のあること。それが分からなければ、いまや生活の全てを記録しようという「ライフログ」などといった発想まで生まれつつあるのを理解することはできないのではないでしょうか。

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