近未来、新聞は140文字で配信される?
昨日はエイプリルフール。ということで様々なネタがネット上にも溢れていましたが、個人的に気に入ったのは英紙ガーディアンのネタでした:
■ Twitter switch for Guardian, after 188 years of ink (Guardian)
タイトルを意訳すれば、「188年間紙とインクで提供されてきたガーディアン紙が、Twitter 上に移行することになった」といったところでしょうか。もちろんジョークなわけですが、副題には
• Newspaper to be available only on messaging service
• Experts say any story can be told in 140 characters・新聞はメッセージサービス上でのみ配信されるようになる
・専門家によれば、あらゆるニュースは140文字で伝えることが可能とのこと
などとあり、ちょっと考えさせられてしまいました。長くなりますが、文中の一部を引用して意訳しておきましょう:
As a Twitter-only publication, the Guardian will be able to harness the unprecedented newsgathering power of the service, demonstrated recently when a passenger on a plane that crashed outside Denver was able to send real-time updates on the story as it developed, as did those witnessing an emergency landing on New York's Hudson River. It has also radically democratised news publishing, enabling anyone with an internet connection to tell the world when they are feeling sad, or thinking about having a cup of tea.
(中略)
A mammoth project is also under way to rewrite the whole of the newspaper's archive, stretching back to 1821, in the form of tweets. Major stories already completed include "1832 Reform Act gives voting rights to one in five adult males yay!!!"; "OMG Hitler invades Poland, allies declare war see tinyurl.com/b5x6e for more"; and "JFK assassin8d @ Dallas, def. heard second gunshot from grassy knoll WTF?"
Twitter 上でのみニュースを配信することにより、ガーディアンは Twitter の比類なき情報発信力(最近もデンバーやニューヨークハドソン川での飛行機事故の際に乗客がメッセージを投稿することで証明された)を最大限に発揮することが可能になる。また Twitter は、ニュースの配信を民主化しつつあり、ネットに接続できる者なら誰でも世界に向けていまの気持ちや行動を発信できる。
(中略)
またガーディアン紙の過去のアーカイブ(1821年から存在)を、Twitter のフォーマットに合うように書き換えるという巨大なプロジェクトも進行中である。歴史上の主な事件は既に書き換えが完了している。例)「1832年の選挙法改正によって、成人男子の約5人に1人が選挙権を得た。やったね!」「何だって!?ヒトラーがポーランドに侵攻して、同盟国側が宣戦布告した。詳しくは tinyurl.com/b5x6eを見よ」「JFKが暗殺された@ダラス。丘の方から2発目の銃声が聞こえたらしいけど、何がどうなってるんだ?」
後半の「過去の主要事件を140文字でまとめる」というのはまったくの冗談ですが(この他にも様々な事件が変換されていて笑えます)、前半部分はエイプリルフールで片付けてしまってよい話ではないでしょう。既に海外では、主要な新聞・ニュースサイトが Twitter に公式アカウントを開設し、ニュースの配信を行っています。その多くはタイトルだけを表示し、記事へのリンクを貼るという形式になっていますが、個別記事にジャンプしなくても概要が掴めるように(140文字で)まとめているサービスも存在しています。Twitter 上で「だけ」活動するニュースサイトというのは行き過ぎとしても、Twitter もしくは類似サービスを重要なパートナーとして位置付けるサイトは増えてくるのではないでしょうか。
特に日本語の場合、140文字だと結構な情報量になりますよね(子供の時、感想文の宿題で400字詰め原稿用紙の半分も埋まらなくて困った、という経験のある方も多いのでは!?)。例えば今朝の主要ニュースを見てみると:
オバマ米大統領とメドベージェフ・ロシア大統領が1日、オバマ政権発足後初となる首脳会談をロンドンで行った。核軍縮に一致して取り組むことを確認し、第1次戦略兵器削減条約(START1)が期限を迎える今年12月までに、後継条約を結ぶことなどを盛った二つの共同声明を発表した。(134文字、元記事は朝日新聞)
米CNNテレビは1日、米軍高官の話として、北朝鮮が同国・ムスダンリにあるミサイル発射場で、弾道ミサイルへの燃料注入を始めたと伝えた。この高官は、北朝鮮が今月4~8日に予告している「人工衛星打ち上げ」を名目としたミサイル発射の準備作業が最終段階に入ったとの見方を示したという。(137文字、元記事は読売新聞)
中国製冷凍ギョーザによる中毒事件で、中国公安当局が、製造元「天洋食品」(河北省)の冷凍庫に保管されていた製品について、包装した段ボール箱の外側から殺虫剤メタミドホスが注射器で注入されたとみて、北京の政府研究所で裏付け実験を進めていることが分かった。同社関係者が1日明らかにした。(139文字、元記事は毎日新聞)
と、これだけでもかなり概要が把握できます。「このニュースにはこういう意味があり、将来的にこんなインパクトをもたらすのでは」といった深掘りや分析をスコープ外にしてしまえば、「140文字新聞」はスピード重視な Twitter 世代のニーズに合致しているのではないでしょうか。
そういえば「深掘りや分析」は、旧来のメディアの強みだったはず。勝負を挑まない部分(どのニュースサイトが報じても同じになるような部分)は Twitter 等を通じてできるだけ多くの人々の目に触れるようにして、強みである深い記事へと誘導・課金するといったビジネスモデルの展開を考えても良いのではと思うのですが……そこまで議論を進めてしまうと「ネタにマジレス」状態になってしまいそうなので(笑)今日はこの辺で。